さようなら
そのあと、冬木さんは家まで送ってくれた。
その道中、私も彼も終始無言だった。
ただ、時より
冬木さんの視線を横顔に感じていた。
あの時、彼は何を思っていたんだろう・・
私が何も言わなくても
あの日、一度タクシーで送ってくれただけで
道を覚えた彼は、家の前まであっという間に到着した。
運転席から降りた冬木さんは
助手席のドアを開けて、私を降ろすと
「麗。
今日は、遅くまで付き合ってくれてありがとう。
また明日ね。おやすみ。」
そう言って、軽く肩を抱いた。
私は、彼の腕の中で
“おやすみなさい”
そう小さく答えて、逃げるように腕から離れた。
早く冬木さんから離れたかった。
あなたに私の匂いをつけないように。
私にあなたの匂いがつかないように。
私があなたを愛おしく思わないように。
何か言いたげな表情の冬木さんは
運転席に戻り、手を振ってゆっくりと車で去って行った。
車が見えなくなるまで見送った。
なんでか分からない、
涙が止まらなかった。
部屋について、うずくまって泣いた。
人の優しさは、いつか私を裏切るから。
あなたは、私に落胆して
きっと離れていくから。
だから、私から離れるの。
優しさはいらないの。
体を引きずるように、お風呂に入り、
そのまま倒れるように寝た。
携帯の振動では起きないほど
深い眠りについた。




