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“最悪だ・・

なんて言おう。どう誤魔化そう。”


冬木さんは、あの殴り書きの紙を持ってる。

あそこには、誰にも口にしたことのない思いが

たくさんたくさん詰まってる。

それを冬木さんは、全部読んだんだ。

あんなの・・すぐに捨てるべきだった。


どうにかして、この場を切り抜けなきゃ・・そう思った。

とにかく

私のことを知って欲しくなかった。


捨てた過去。

あの日あの時、あの家を出た瞬間から

私は生まれ変わった。


だから、知られる訳にはいかなかった。

過去の私は死んだんだ。




冬木さんの胸の中から、離れて

窓の外を見ながら、息を整えて言った。


「ああ、あれ・・見られちゃったんですね。

わー恥ずかしいなあ、、、

私その日、映画を観てて

それで、その、、

感情移入しまくっちゃって、感想的な感じで書き殴ったんですよねえ。」


自分でも驚くほど、下手くそな嘘だった。

でも、咄嗟に言い訳を考えたにしては

頑張った方だと自分を褒めた。


「そっか・・んー・・

 そんな感情移入するほどの映画、気になるなあ。

 あ、僕もね?映画好きだから、その映画知ってるかな?

ちなみに、なんて映画?」


まさかの切り返しに、タジタジになりながら


「えっとー、、なんだったかなー?

ど忘れしちゃいました。」


そう苦笑いする私の手を取って、冬木さんは


「そんな感情移入したのに忘れちゃった?

 僕だったら忘れないよ?

 

 はあ・・。そうかあ・・

 少し触れたら壊れちゃいそうな君を目の前に

 何もできないのがむず痒い・・。

 でも、麗がその苦しみを話してくれるまで待つよ。

 だからさ、麗?放っておかないからね?」


私の嘘だらけの言い訳を、簡単に見破った彼は

そう言ってまた強く私を抱きしめた。


心が苦しかった。

もう放って置いて欲しかった。

彼の優しさが、蓋をしていたはずの

私の暗闇の中に入ってこようとしていた。


正直、その優しさに寄っ掛かりたい自分もいた。

一人で生きていく辛さと寂しさに、押しつぶされそうだった。


でも・・・


“あなたを父のようにさせたくない”


そう。

彼は既婚者。子持ち。


愛すべき奥さんがいて、可愛い子供がいて

守るべき人たちがいる。

一生を誓い合った二人の間を狂わせちゃいけない。

誰一人傷つけちゃいけない。


それは私が一番知ってるから。



だから・・

だから。。

もう、この人には関わらないようにしよう。



この時、そう心に決めた。

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