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半分こ。

作者: 夜雨
掲載日:2017/07/20

E☆エブリスタ内でのイベントで優秀作品に選ばれたので記念にこちらにも投稿してみました。

 わたしは、この世に存在するありとあらゆるものを持っています。

 美貌、財宝、頭脳、才能、他にもたくさん。





 ある時、わたしの前で一人の女の子が顔を押さえて蹲っていました。


 どうしたの、とわたしは聞きました。

 女の子は答えます。


「私はとても醜いので、顔を見せられないんです」


 なら、とわたしは女の子に提案しました。

 なら、わたしの美貌を半分こしましょう。


 わたしが女の子に美貌を半分あげると、醜い女の子はたちまち可愛い女の子になりました。

 女の子は頬にえくぼを作ってにこにこ笑い、わたしにありがとうと言いました。



 そして、可愛くなった女の子は素敵な男の子と恋をして、幸せに暮らしました。






 ある時、酷く痩せた男の人が道端でぐったりしていました。


 どうしたの、とわたしは聞きました。

 男の人は答えます。


「僕はとても貧乏なので、ご飯が食べられないんです」


 なら、とわたしは男の人に提案しました。

 なら、わたしの財産を半分こしましょう。


 わたしが男の人に財産を半分あげると、貧乏な男の人はたちまち裕福な男の人になりました。


 男の人は美味しいご飯をいっぱい食べてにこにこ笑い、わたしにありがとうと言いました。



 そして、裕福になった男の人は美味しいご飯を食べて、幸せに暮らしました。






 ある時、本を抱えた女の人が文字を見つめてうーんと唸っていました。


 どうしたの、とわたしは聞きました。

 女の人は答えます。


「ワタシはとても馬鹿なので、本が読めないんです」


 なら、とわたしは女の人に提案しました。

 なら、わたしの頭脳を半分こしましょう。


 わたしが女の人に頭脳を半分あげると、馬鹿な女の人はたちまち賢い女の人になりました。


 女の人は本をすらすら読んでにこにこ笑い、わたしにありがとうと言いました。



 そして、賢くなった女の人は沢山の本を読んで、幸せに暮らしました。





 ある時、真っ白な紙を持った男の子が、絵筆を手にして悩んでいました。


 どうしたの、とわたしは聞きました。

 男の子は答えます。


「ぼくはとても下手なので、絵が描けないんです」


 なら、とわたしは男の子に提案しました。

 なら、わたしの才能を半分こしましょう。


 わたしが男の子に才能を半分あげると、下手な男の子はたちまち上手な男の子になりました。


 男の子は美しい絵を描いてにこにこ笑い、わたしにありがとうと言いました。



 そして、上手になった男の子は綺麗な絵を描いて賞賛されて、幸せに暮らしました。










 ある時、ひとりぼっちの少女が困った顔をしていました。


 少女は、それなりに可愛くて、それなりに裕福で、それなりに賢くて、それなりに才能がありました。


 顔を押さえて蹲っても、道端でぐったりしても、文字を見てうーんと唸っても、絵筆を手にして悩んでも、誰も少女を気にも止めません。


 何故なら、少女は全てが中途半端にできて、中途半端にできないからです。

 いちばん不幸でも、いちばん幸せでもないからです。


 ありとあらゆるものを半分だけ持った少女に、どうしたの、とたまたま通りかかった少年は聞きました。

 少女は答えます。


「わたしはかつて、この世にあるすべてのものを持っていました。でも、もうそれらは全部半分こにしてしまったのです」


 なら、と少年は少女に提案しました。

 なら、君の孤独を俺と半分こしよう。


 少女は驚きました。

 だって、少女はもうすべてのものを半分こしたと思っていたのです。


 少年が少女から孤独を半分もらうと、ひとりぼっちだった少女はたちまち【二人】になりました。


 少女は不思議に思いました。

 半分こをした筈なのに、孤独はあっという間にどこかへ消えてしまったのですから!




 ある時、ひとりぼっちじゃなくなった少女はまた困った顔をしていました。


 どうしたの、と隣の少年は聞きました。

 少女は答えます。


「わたしは半分こをしたのに、残った半分がいつの間にか消えてしまったのです。あなたが全部持って行ってしまったのですか?」


 違う、と少年は少女に教えました。

 違う、孤独は一人が好きだから、二人でいるといなくなってしまうんだよ。



 少女の疑問は解決しましたが、少女はそれでも困った顔をしていました。


 どうしたの、と少年は聞きました。

 少女は答えます。


「孤独が消えたのなら、もう一緒にはいられないのですか」


 なら、と少年は少女に提案しました。

 なら、今度は時間を半分こしよう。




 そして少しの時が過ぎた後で。


 真っ白いドレスを着た少女だった女は、女のベールを上げた少年だった男に向かってにこにこと笑い、ありがとうと言いました。




 そして、夫婦になった二人は喜びや悲しみ、怒りに楽しみも半分こして、死が二人を半分に別つ時まで、幸せに暮らしました。



 めでたし、めでたし。

閲覧ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] この作品は好きです。 何が?と聞かれると難しいところが好きかもしれません。 単純に私の心が汚れているから、素直な作品に惹かれたのかもしれません。
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