第6話
俺は眺める。暗き地に潜みし数百の人々を…
夜風のささやきが聞こえる…そんな夜の世界…
「はっ。いい眺めだ」
小高い丘から見下ろす俺。アジスは『潰す』と言った。殺せばよいのだろうか…
人殺しは初めてだ。でも、ここは戦場だ。甘いことは言ってられない。戦場についての俺のイメージだけど…
俺は右腕を伸ばし、目を閉じてイメージした。
火…そぅ、地獄への送り火。それは広い範囲を“焼き”払い、“焦がし”尽くし、“灰”と化す…
目を開ける…
たいまつの火を一点に集める。それだけで騒いだ。これからだというのに…
「火力」
俺は大声で叫んだ。こちらを向く目が多数。一瞬でそれらをも巻き込んだ火が数百を襲う。叫び声が聞こえる。爽快だ…
小さな太陽がそこにある感じだった。昼のように周りは明るい、そして暑い。おかげで濡れてた服も乾いた。
腕を下げ、その火を笑いながら見届ける。アジスはどんな顔をしてるだろうか。後ろを見る。
その顔は普通だった…ガッカリ…
まるでこれが普通のような表情だった…
しばらくして火が消えた。跡には暗闇に混じった死体がチラホラ灰もチラホラ…
それを見渡してると、アジスが隣に来た。
「お前、強いのな」
「まぁな」
嬉しかった。鼻が長く感じた…えっへん!
「こんなに強い、どこの軍でもない。なら。私の軍に入らないか」
反射的にアジスの顔を見る。その表情は少し笑んでいた。正気か…?
「っえ!? マジな話か?」
これは流石に俺も驚く。そんなつもりでやったわけでないのに…
「あぁ、いい戦力になる」
戦力…いい響き…心躍る〜
「んじゃ、よろしく」
迷う意味も無く俺は答えた。こんな戦いが何度もあるのだから…
「付いて来い」
そう言ってアジスは再び森の中に入って行った。また歩くのか…