第17話
「まいどありー」
昨日と同じように一人分の料理を抱え部屋へと戻る。まだ、昼か…そういえば…
で、
「ただいまー」
と、扉をあける。そして返ってくるのが、
「……おかえりなさいませ」
と、ノンノの声。ベットに座っていて、その場で立ち上がる。服装は昨日と同じ。よくもまぁ、お似合いで…
「……ご飯にしますか? お風呂にしますか…? それとも…」
それとも…? 右手を胸元に持っていくノンノ。
「……わ た し、ですか?」
ズルコケガッシャーーン。盛大にこける俺。料理を置いといてよかったー。危ない危ない…
いや、危ないのはこっちじゃなくてノンノの方だよな…。なんて言った?
「えっと、とりあえず料理持ってきたから。腹減ってないか?」
料理を指差す。ノンノはそれをみる。そして、近づく。そして食べる。
うん、別に変なところはないようだ…。今のはなんだったんだろ…
そしてまぁ、ゆったりと時間を過ごしていく。これからどうするわけもなく、したいこともない。ノンノは食べ終わった後、なぜか掃除にとりかかっている。
暇だ…
皿を置きに食堂へと向かうことにして、部屋を後にする。
さっきも来たとおり、何も変わってない食堂。
「おかえり」
マカロニが声をかけてきて、皿を渡す。そして、椅子に腰掛けテーブルに倒れ込む。
「どうした?」
カウンターからマカロニが話しかけてきた。
「いや、暇で暇で…」
顔だけをマカロニの方に回す。ダルイ…
「そういえば、さっき聞いたことなんだけど…」
「ん?」
「“ユートピア”って知ってる?」
まったくもって聞いたことありません…
「何それ?」
「圧倒的な力で国を攻撃して、たった数分で壊滅する集団のことで、結構な噂になっているみたいなんだ」
圧倒的な力ねぇ…
「なんだそれ?」
「それが、その力については何も分からないらしくて」
なんだそれ…
「未知の力ってやつか…」
「まぁ、そんなところだね。この国も表では戦争に参加しているけど、裏でそういう集団を攻める計画もあるっていうし」
興味を持ち始めて、頭を上げる。裏か…。下手したら俺に何か回ってくるかもな…
「それに、この国にもそういう力をもった人が近づいてるみたいだけど、アジスって人が連れてきたアルなんとかって人を試しに向かわせたみたいけど…」
アジス? アルなんとか…? それって…俺のこと?
「その人、やられちゃうと思うけどね」
無事に生還しましたよ? 目の前にいる俺のことだよ?
まだ自己紹介もしてないから、俺の名前を知らないマカロニ。名前を明かして反応でも見てみようかな…。いや、後でわかると思うから今はいいか。別に…
「んじゃ、俺はそのアルなんとかって人が戻ってくるまで寝させてもらいますか」
ワザとらしい理由をつけて寝ることにする。部屋には居づらいし…
夢…。力を求めていく度、俺独りみんなから離れていく気がした。こんなのは嫌だと思った。みんなと一緒にいたい、なりたい。だから、力を求めるのが怖くなった…
厨房の音や兵士たちの馬鹿騒ぎで目が覚めた。うるさいな…
「あ、やっと目が覚めた。もう夕食時だよ」
「あ〜…、もうそんな時間か…」
寝すぎた気もするし、さっさと部屋に戻ることにした。音がどんどん遠ざかっていく…
部屋にはいるとノンノは寝ていた。小さく寝息を立てながら…
昼に何か言われた気もするけど、寝ぼけてるのか思い出せない…。いや、思い出さないほうがいい気がする…
「風呂にでも入るか…」
起こすのも申し訳ないし、アジスの邪魔も入らないってわかったし、風呂に入ることにする。
鼻歌まじりに服を脱いでいざ入湯。気持ちいい〜。邪魔もないからゆったり〜。
「ユートピア…か」
マカロニの言っていたことを思い出す。噂だと、俺が倒したリーヴァスがその一人。そして、そのリーヴァスはこの世界を“過去”と言い、未来から来た者と言った。それに、リーヴァスは行方不明者の一人…
このことから推測すると…
「ユートピアの連中ってのは、未来から来たやつらってこと、か…?」
確信はもてない。確認もできない。どうすることもできない。
「なら、未知の力ってのは説明できる…」
何かが繋がりそうだ…
「…入るぞ」
いきなり入り口から声。あわてて振り返る。この声はもしや…
ガラッっと扉が開く。なんで入ってくる!!
アジスが入ってきた…