第15話
城の外に出れば初めて来たときに通った、石が敷かれた道。等間隔で横にいくつかの道がある。そして、レンガ造りの家がその間に建っている。
道をまっすぐ行けば広がって、広場へと変わる。中央には噴水があり、その回りにはベンチがいくつかあって座っている人が何人かいた。
広場を通り過ぎれば道はまた狭くなり、まっすぐ先には大きな門があって高い塀がこの町を取り囲んでいる。よく見れば二階があって、そこから見渡す人がいた。その近くの扉から人が出てきて交代する。見張りをしているのだろう。
門を通ったその先に森があり、初めて会った衝撃を思い出す。まっすぐ前には日が丸々でていて、右を見れば大きな川が横断して橋が架かっている。左を見ればそのまま平野が広がっている。そして、城を挟んだ向こう側は荒野。すごいところにあるな…
これ以上先には行く理由もないから戻ることにした。このまま城下町の見物をするべく、道を変える。適当に横の道へと入ってしばらく歩く。大きな建物がいくつかあった。劇場や遊技場といった娯楽施設などみつけた。意外といい場所だな…
行き止まりの合図の壁があった。空から見れば多分、この土地は半円形の領域なのだろう。そんな中で、何人か子供が遊んでるのをみつけた。
「…俺にも、あんな頃があったんだよな…」
近くのベンチに座りしばらく眺めて物思いにふける。二度寝しそこねた睡魔も襲ってきて眠る。
独りぼっちとなり、それでも力を求めていた子供。その子供にとって力こそ頼る存在だった。自分の感情を押し殺し、ただ力を求めた。
目を覚ました。顔を上げると子供たちの姿はなく、変わりに…アジスがいた。勘弁してくれ…
「今度は何の用」
もう理由を聞くのも諦めた。だから用件を聞くことにする…
「シド様がお呼びだ」
それだけを告げるアジス。俺はしぶしぶ立ち上がって来た道を逆歩する。日はだいぶ昇っていた。その途中の広場は人が大勢集まり、店があってにぎわっていた。笑顔がこぼれ、声が飛び交い、活気あふれていた。
「凄…」
一言漏れた。こんなにぎわいは見たことがなかった。正直な感想。
「これでも、ここの地域では一番発達している町だ。ここまで大規模は滅多にない」
聞かれてた!?
「記憶をなくした少女という異端者を、この町の住民は温かく迎えてくれるほどの笑顔だ」
足を止めたアジスの口から、深い話が始まった。確かに、この温かさに触れれば誰だって安心できるだろう。そんな笑顔が集まっている。
「記憶をなくした少女はここで育ち、いつしか『この町を守りたい』という思いが生まれた」
守りたい…か。俺にはいまいちわからない気持ちだ。みんな離れていって、自分の身だけを守ってきた。それしか覚えがない…
「成長した少女は、その思いを胸にこの町を守っている」
でも今なら分かる気がする。誰かに助けられて、そして生まれた守りたいという気持ち。俺にとっては、ノンノが守りたいと思う人だ。アジスのようにこの町をという大それたことは言えないけれど、守りたい気持ちでなら同じはずだ。
「そして、守るだけの力を毎日求めている」
強さ…か。俺には、もう求めすぎたものだ…
「…ここまで話してしまうとはな…」
なんて言葉を返そうか迷いに迷った…
そして、止めていた足をまた動かし、歩き始めたアジス。
「シド様がお待ちしている。急ぐぞ」
俺はいろいろな気持ちに気づき整理し、再び歩き出した。