第12話
「ハァ…やっと着いた」
俺たちは門の前にいる。ここまでオンブしながら歩いてきた。軽いとはいえ、この長距離は流石に疲れたよ。もう日は隠れてるし…
「では私は、報告に行ってくる。その者はお主の部屋にでも連れて休ませておけ」
「わかった。先に部屋に行ってる」
「…結局、ずっと運んでいたな」
アジスが手をかしてくれようとしたけど、俺はそれを断り続けた。理由はいまいち分からないけど、後悔すると思ったから…
「じゃ」
そう行って開いた門をくぐり、長い通路を歩く。最後の難関、階段を上がり終えて部屋に到着した。中に入って、すぐさまにベットに乗せた。
「………」
髪も肌も真っ白で、それを包む包帯はヤバイくらいにズレていた。背中の感触も温かさも残っていて、顔が赤くなる。少女に布をかけて、もう一つのベットで休むことにした。やりとげた…
独りでいるとあの男、リーヴァスの言ったことを考える。“過去”を…
この世界が俺のいた世界の過去だって? でも、それを信じれば今までのことが納得できる。本当にここが過去ということは確認できるはずもない。いや、しようと思えばできるが今はそんな気になれないだけだ。いまは楽しんでいたい…
そんなことを考えているうちに眠ってしまったようだ…
夢…。そこにいる俺は独りだった。周りには誰も居ない…。みんな離れていった…
目が覚めた。起き上がるとそこにはアジスがいた。またニヤけている…
「そんなに俺が可愛いか」
「否定はしない」
「否定してくれ」
「シド様が話をしたいとのことだ」
「強引に話を変えるな」
「……」
黙ってアジスは出て行き部屋に残された。少女の様子を見てみるとベットにちゃんと横になって額に濡れたタオルがおかれていた。それを見た俺はすぐにアジスを追った。
部屋を出たところにアジスが待っていた。
「失礼のないようにな」
「ありがとうな」
何のことについてアジスは理解したようだ。その証拠に微笑んでくれた。ありがとうな…
そして、王室についた。いつ来ても立派…
「うむ、ごくろうであった」
俺とアジスは前と同じように床に座った。そして話を聞く。
「あの敵をこうもあっさりと倒して帰ってくるとは驚いたものだ。そしてまた一人、連れてきたと聞く。アルア殿はしばらくの間、その子の見ていてくれ」
俺が面倒を見ろってことか?
「あ、はい。わかりました」
「それと、今回の件についての報酬だ」
近くにいた兵士が袋を手渡ししてくれた。受け取るときにジャラジャラと音がなった。金…
「しばらくは体を休めてゆっくりしていなさい」
「はい」
そして、王室を後にする。左手に袋を持ちながら…
「何してようかなゆっくりしてるかな…」
「ゆっくりと過ごしていればいい。シド様から何かあったときは私から連絡する」
通路を歩く。その度になる金の音が気持ちいい…
「そういえばアジス、食堂どこ?」
「一階にある。降りればわかるだろう」
「わかった」
そして、あっという間に部屋に着いた。
「んじゃ、しばらく」
「あぁ、ゆっくりしてるがいい」
そう別れを告げて、俺は部屋に入る。そしたら、ベットにいた少女がいなくなっていた…
俺は驚きつつもすぐに部屋中を駆け回って探す。ベットのしたとかそういう場所を探す。そして、風呂場の前を通ると水の音がした。入ってるのか…
本当に入ってるのかを確認するわけにもいかないので、部屋をでる。一階に下りると食堂は探すまでもなくそこにあった。開け放たれている入り口からはいい匂いがただよっていた。
ひかれるままに入っていく。そこはいい匂いが一層と充満していた。それと、たくさんの兵士が賑やかに楽しんでいる。すわる場所ないし…
カウンターらしき場所に行って寄りかかる。すると、ここで働いていると思われる…たぶん男が寄ってきた。
「いらっしゃい」
優しく声をかけてきたのは俺と同じくらいの少年だった。美形ですね…
短い黒髪でまとめられ、料理人としての象徴の真っ白を頭に体に着ていた。そいつの前で、俺は袋から金を全部テーブルに出した。
「これで頼めるだけ持ってき…」
言葉が途中ででなくなった。そう、出したお金をよく見てみると…
昔の金じゃん…
信じるしかないじゃん…
いきなり真実を打ち明けられた気分だ…
最悪じゃん…