第10話
日は真上に昇ってた。いつの間にか
キア=リーヴァス。やっぱり知ってる名前だ。
そいつが目の前にいて、俺と戦っている。喧嘩ではない。戦いだ。
リーヴァスはマントの中から手を出している。手のひらには何かが渦巻いている。風だ…
「…負けを認めるなら、今のうちだ」
「負けねぇさ」
地面の砂埃が激しくなっていく。小さな竜巻が強く、大きくなっているのか。さすが、風の使い手。
「おい! アルア!!」
ちょっと上の方から俺を呼ぶ声がした。見回すと、崖の中間の少し出っ張ったところにアジスがいた。よく登ったな…
「私は戦いには参加しない! 気をつけて戦え!」
「了解」
って何でだよ! そんなことはお構いなしにアジスはそのまま崖にいる。腕を組んで、視線がきつくなった。なんでそんなことを…意味わからん。
リーヴァスに目を戻すと、両手で竜巻を覆いそれが小さくなっていく。それでも風の強さはそのままで小さくなっていく。何する気なんだ…
「…竜風陣」
両手で小さくした竜巻を、そのまま勢いよく地面に埋めた? マジ、何する気だ…
そのまま何が起きるか待っていると、地面を突き抜けていくつもの竜巻が出てきた。俺の周りを隙間なく囲い、高さもアジスのいるところまであって逃がす気はないようだ。やってくれるね…
「…飛べ」
俺を囲う風はだんだんと近づき、一つとなって俺を巻き込んだ。って、ちょやばいって!
「飛んでるぅぅぅううう」
そのまま巻き込まれて飛んだ俺。崖を通り越して結構飛んだ。このまま落ちたら死ぬかも…
仕方ない、俺も風を纏おう。ということで風を纏ってゆっくり崖の上に降り立った。
「…その力、お前もか」
崖の上からリーヴァスを見下ろす。やっぱり気づいたか。うん、普通に気づくよね。気づかないほうがおかしいもん。
「…お前はいつの卒業生だ」
「は?」
卒業生? 浮かぶのはアレしかないけど、それであってるのかが分からない…
「…お前も、校長に連れられてこの世界。いや、過去に来たんだろ」
「さっぱりわかんないんだけど」
「…まぁいい。これから死に逝くものにこれ以上言っても意味ないからな」
ものすごい気になる…
「なら、俺が勝ったら全て聞かせてもらうぜ」
鼻で笑われた気がしたけど、それ以上に気になるのがこの世界。過去だって?
夢なんかじゃないよな…?
スッキリするには勝てばいいのか。わかりやすい。
「なぁアジス。この戦い、長引いてもいいか」
「好きにしろ」
「その返事が一番困るんだけど…」
相手は風使い。俺が今この状況で操れるのは風と地。地を使えば手っ取り早く終わらせられるけど、それじゃ面白くないし…
…いいや。地で…
これでも一様は戦場だ。だから、手を抜いてやれない。
考えもまとまり、戦うことに本腰をいれる。容赦なく…
イメージすると容赦なくやっちまうから、話聞けなくなるし。
仕方ない。石を当てまくって、虫の息にまでしよう。それなら話は聞ける。
作戦実行。手当たりしだい転がっている石やら何やらでアイツを囲う。動く気配はない…
「即行で終わらせてもらう」
一息入れて、全てを一点に、アイツにぶつける。何で動かない…
「…あまい」
ぶつけるはずの石が、リーヴァスの周りを回っている。しまった…
「風か」
「…これくらい、風の力で止められるさ」
止められたことよりも、歯応えのあるということに楽しくてしかたのない。今まではすぐに終わるんだもん…
「…反撃だ」
石が飛んできた。いくつもの石が、風に乗って猛スピードで…
いきなりのことに防御の遅れた俺は全てをくらって、崖から落ちた。痛い…
地面にもろに落ちて、立ち上がれない。でも、あお向けにはなれた。空が青い。
「これが“痛い”か」
初めて味わう痛いという感情。それが夢ではないという証明。楽しいという表れだった。
来週、休みます。