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優木碧 其ノ壱

上城茜。

15歳。11月19日生まれの蠍座。

クラスで、後ろから3番目に背の高い男子。

学年トップの成績で、家は町一番の病院を経営している。

無口な性格のため、友達は多い方ではないけれど、人付き合いが苦手なだけであって、人嫌いではない。

甘いものが苦手で、その反面辛いものが大好きで、何にでも唐辛子を入れてしまう。

運動は、苦手な方だか運動神経は悪くなく、去年の体育祭では50メートル走で一位になった。


本が好きで、自分に厳しくて、プライドが高くて、いつも不機嫌な顔をしていて、音痴で、左利きで、勉強の時だけ眼鏡をしていて、本当は絵を描くことが好きで、字が意外と汚くて、彼女はいなくて、昨日告白されて……。


私の好きな人。

それが、上城茜。


「おはよう、茜くん」


いつものように、通学中にイヤホンをしながら登校する茜くん。後ろから駆け寄る私に気がつくと、これまたいつものように、耳からイヤホンを外す。さりげないが、これが茜くんのやさしさなのである。


「おう。相変わらず、朝から元気だな」

「茜くんは、相変わらず朝から不機嫌そうだね」

「ああ。朝からうるさいのに捕まったからな」


そう言って、いじわるそうに顔を私と反対の方へ一瞬向ける。


「あー。ひどい。また、そんなこと言って……」

「嘘だよ。昨日は、夜遅くまで勉強をしていたから、眠いだけ」


小さく、あくびをする茜くん。登校時のこのあくびも日課のようになってきた。それというのも、中学三年生になってから茜くんは週三回の塾に、週末は家庭教師。それ以外の時間も、夜遅くまでの自主勉強と、勉強漬けの毎日。

将来、親の跡を継いで医者になるため、こんなハードスケジュールなんだそうで、私としては茜くんの体が心配だった。


「ところで……昨日…………こ、こ、こく……は……。」

「おい、どうした?最後の方が、何て言ったか聞こえないぞ」


少し、困った顔で私を見つめる茜くん。私は私で、おそらくは赤面している顔に気づかれていないかと、心臓がドキドキしていた。

二、三回深呼吸をして、私は話を切り出した。


「……昨日、告白さたでしょう?」

「……何で、知ってんだよ!?」

「偶然、見かけちゃって……。確か、相手は隣のクラスの子でしょう?」


偶然は、嘘であった。正直に言って、この手の恋愛柄みのことに関しては、女子は男子が思うよりも目ざとく、昨日告白してきたその子のことも、前々から茜くんを好きなのは知っていた。

昨日は、隣のクラスの女子が朝からそわそわしてしたので、話を聞くと、放課後、茜くんに告白する子がいると教えてくれた。


そのことから、偶然は嘘なのだが、私は告白している場面を見ただけで、その後、茜くんが返事をするところまで見ることができずに、帰ってしまった。正確には、恐くなって帰ってしまった。


だって、もしも茜くんが付き合おうなんて返事をしたらと思うと……。だから、私も色々と一晩考えてしまい、寝不足なのでした。


「まあー、断ったよ」


私は、ホッとした。


「へ、へー断ったんだ。結構、かわいい子だったのに」

「正直、よく知らない子だし、それに……」


それに……。次の言葉が、茜くんの口から発っせられるまでの間、私は色々なことを想像していた。私のことが好きだからーーと、ポジティブなものから、男が好きだからーーまで、突拍子のないものまで、約十数のことを考えていた。おそらくは、パニックになっていたのだろう。早く、続きを話してーーと、ここまでで約一秒もない時間だった。


「……今は、勉強に集中したいからな」

「そ、そうだね……」


微妙なもの言いだったけれども、とりあえずは付き合うのを断ったようなので、よしとしよう。


その後、学校に着くまでの間、たわいもない世間話をしながら、私たちは教室向かった。


お昼までは、何とか睡魔と戦いながらがんばってはみたものの、さすがに限界が見えてきたので、昼休みは保健室で寝ようと思い教室を出たところで、呼び止められた。


私の睡眠を邪魔する者は誰?と思い振り返ると、私の眠気は一気に覚めた。


昨日、茜くんに告白していた、隣のクラスの子だった。

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