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短編の本棚

真白い炎

作者: 九藤 朋

 それは真白い鷺の羽。

 はたまた朝の淡雪か。

 絹の打掛の花嫁は

 今からお城に参ります。

 貧しい家を出て

 寄越された籠に乗り込み参ります。

 花嫁の、嘗てあった許嫁は殺されました。

 許嫁を邪魔に思うお城の殿の差し金でございます。

 けれど皆、素知らぬ顔で。

 災難だったと花嫁を慰めるのです。

 災難だったと花嫁を慰めるのです。

 

 天から


 小雪が降って参ります。

 花嫁は、懐剣をぎゅうっと握り

 籠に乗り込みます。

 打掛や小雪と同じ白い顔。

 もう戻ることはあるまいと

 家を振り向き見ることもございません。


 真白い花嫁の、心には炎。


 この懐剣を、どうか上手く操れますように。


 首尾よくことを運べたならば

 あの人の待つ浄土へと

 旅立ちゆくのだと

 花嫁は思います。


 それは真白い鷺の羽。

 はたまた朝の淡雪か。

 絹の打掛の花嫁は

 今からお城に参ります。

 真白いものを紅に

 染めるためにと参ります。







挿絵(By みてみん)








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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、こんばんは。 みてみんでお見かけして、密かに絵を拝見していました…… 短い文章の中に、ストーリー性と情緒を詰め込まれているのが素敵だなと思いました。 このあと、花嫁さんが事…
[良い点] 懐剣は朱に金襴。 明けのいろ。 夜は終わった。 この世という梢に 寒々と揺れる女たちの誓いよ。 祈りよ。 曇り空が落ちる。 汚れてしまうまでに溶かしてと、 白無垢のままで言った。
[良い点] 密かな決意を込めた白無垢。望むは朱の花。一途な決意に降った雪の白さを想うと、胸がしめつけられます。果たして懐剣はどこで閃いたのか…? [一言] こういうの好きですねえ( *´艸`)切れのあ…
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