真白い炎
それは真白い鷺の羽。
はたまた朝の淡雪か。
絹の打掛の花嫁は
今からお城に参ります。
貧しい家を出て
寄越された籠に乗り込み参ります。
花嫁の、嘗てあった許嫁は殺されました。
許嫁を邪魔に思うお城の殿の差し金でございます。
けれど皆、素知らぬ顔で。
災難だったと花嫁を慰めるのです。
災難だったと花嫁を慰めるのです。
天から
小雪が降って参ります。
花嫁は、懐剣をぎゅうっと握り
籠に乗り込みます。
打掛や小雪と同じ白い顔。
もう戻ることはあるまいと
家を振り向き見ることもございません。
真白い花嫁の、心には炎。
この懐剣を、どうか上手く操れますように。
首尾よくことを運べたならば
あの人の待つ浄土へと
旅立ちゆくのだと
花嫁は思います。
それは真白い鷺の羽。
はたまた朝の淡雪か。
絹の打掛の花嫁は
今からお城に参ります。
真白いものを紅に
染めるためにと参ります。