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初めての冒険(後編)

敏捷が上がってるおかげか今迄とは段違いの速さで走れる、兄さんを置いて来てしまったが兄さんなら多分大丈夫だ、そんな気がする。今はそれよりもあのウルフだ、もう少しでさっきの場所に戻れる筈だ。


さっきの場所に戻ったがあのウルフは見当たらない。もしかしたら、と悪い想像ばかりしてしまう。少し周囲を見回すと草叢にウルフの耳が見えた、少し垂れ気味なのでさっきのウルフだろう、安心した。だがそれがいけなかった、その奥で得体の知れないものが蠢いているのに気がつくのが遅くなった。此処から走っても間に合わない、魔法を使うとあのウルフ迄巻き添えにしてしまうだろう。何か、方法はないのか、考えている暇がなかった。足は勝手に動いていた、咄嗟に【風球ウィンドボール】を自分の少し後ろの地面に打ち風圧でブーストした。


「間に合えっ!」


なんとかウルフと得体の知れない何かの間に着地しウルフを庇いながらもう一つ溜めていた【風球ウィンドボール】を何かにお見舞いした。かなりの風圧で距離を取れたが、ウルフは気絶してしまった様だ、それと何かの体液が付着した、衣服が溶ける。すぐ脱いだが少し火傷してしまった。


ー「スキル【毒耐性】を習得しました」

ー「スキル【火傷耐性】を習得しました」

ー「スキル【苦痛軽減】を習得しました」


何かの方を見ると殆どダメージは無さそうだった。ようやく分かった、得体の知れない何かはスライムだった。だが、今日何体も倒しているスライムのソレとは全く違った。まず色が普通は水色の透き通った色だがそのスライムは毒々しい緑の濁った色をしていた。あのなんとも言い難い異臭も放っている、多分今のままじゃ勝てないだろう。幾らステータスが高くても圧倒的に手段スキルが無さ過ぎる、相手がどんな手を使うかも分からない状態で戦うのは賢いとは言えない。だからと言ってウルフを担いで逃げるには少しダメージを負いすぎた。いい策が思いつかない、兄さんが来るのを待ってみるか、今はそれしか無い。


周りに体液が飛ばないように最小限の【風球ウィンドボール】を何回もうち距離を取る。もしこの状況で後ろにモンスターが来てもいいように全方向に集中する。なんとか持ちこたえる事ができそうだ。もう少し…?何かがあのスライムの後ろから近付いている、小柄な人の様だが、ここにいると言ったら群れから出てきたゴブリンだろうか。


じゅっ…しゅうぅぅぅう…


一瞬だった。捕食圏内に入ったゴブリンを丸ごと飲み込み、体の一部にしたのだ。さっきよりもひと回りもふた回りも大きくなっている、【風球ウィンドボール】ではノックバックしなくなってしまった。


「結局やるしか無いって事かよ!」


未だに策は浮かんでいない、あれから家の中で魔法を打つのは禁止されていたので最初に覚えた生活魔法と【風球ウィンドボール】しかまともに使えない。いや、使おうと思えば使えるのだが、さっきの様に思いがけない威力になったりしたらこっちまで被害が来る、それだけは避けたい。危険な賭けだがここは一刻も早く兄さんと合流した方がいいかもしれない。よし、善は急げだ。


俺はウルフを担いだ、怪我をした箇所に負担が掛かる、が走れないことはない。これなら行ける、兄さんの所へ急ごう。


普通、スライムは移動が遅いのだが、そのスライムは今の自分と同じかそれ以上の速さだった。が、それでも距離をかなりの置いていたので追いつかれるほどではない。距離を置いたのが功を奏したのだろう。


「見えた!」


「ルシス!大丈夫だったか?!」


「大丈夫じゃない!変なスライムに追っかけられてる!足止めして!あっでもそいつの体液に当たると溶けるから気をつけて!」


「変なスライム?ッ!なんだよそのでかいスライムは!」


「僕にも分から無いんだ!」


取り敢えず気絶しているウルフを草叢に隠し兄さんとスライム討伐をする。


「兄さん、大丈夫?!」


「ああ、だがこのままでは孰れやられてしまう。ウルフは置いて逃げるしか」


「それだけは嫌だ!どんな小さな命でも、助けられるなら助けたい!」


自分でも判っていた、ウルフを置いて逃げれば自分に一つも危険がないことを。そうやって逃げてスライムのことを報告し、討伐を依頼すれば安全だということを。でも目の前で命がなくなることを見過ごしたくなかった。


「だろうと思ったよ、前からお前は自分の決めた事に対しては頑固だからな。だがこの状況から逃れる手段はないと言ってもいい、なら増やせばいいだけだ!ルシス!【風印ウィンドシールド】を詠唱しろ、時間稼ぎは俺がやる!」


「【風印ウィンドシールド】!」


魔力蓄積マナチャージが始まった。魔力蓄積マナチャージ中は動く事ができない。特殊なスキルがあれば動けるらしいが、まさかそんなスキルを持っているわけがない。もどかしいが一刻も早く溜まるよう集中するしかない。ここは兄さんを信じて待つ…


……溜まった!


「兄さん離れて!」


思い切り【風印ウィンドシールド】を打った。未だスキルとしては未完成なので効果は薄いだろう。だが十分だった【風印ウィンドシールド】は相手の身を風の中に封じダメージを与えるというもの(魔法)だった。風の中に完全に閉じ込めているため、体液が飛び散る事もない、まさにスライムに対して効果は抜群だった。封印が解け、中から出てきたのは大きな魔石だけだった。


ーLvUP 3→9 LBP 0(自動消費)


「終わった…んだな。」


「終わった…んだね。」


倒した。子供2人であの凶悪なスライムを倒したのだ。


「…今日はもう帰ろうか、早く帰ってこの事を報告しよう。」


「…そうですね、僕も疲れました。」


そう言って魔石を拾った、魔石を拾うと下に指輪があるのが分かった。鑑定すると


名称:『マナインクリース・リング』

効果:魔力×3


かなりいい性能だった、呪いも無いようだ。魔石の方は今まで拾った魔石よりもでかい。普通はピンポン球より少し小さめの大きさなのだが、これは野球の球くらいの大きさよりひと回り程大きいくらいだ。あのスライムが強いのも納得がいく、だけどどう考えてもあれは突然変異体だ。この魔素の薄い森に何故あんなのが出たのだろう…

兎に角今は早く帰ってこの事を報告しなければ。


「それにしても本当に【風印ウィンドシールド】が使えるとはな。」


「使えると思ったから試させたのではなかったのですか?」


「実はな、前に入った通り俺はスライム狩りが苦手だから、なんとか克服しようとスライムに効果的な魔法を探したんだ。そして見つかったのが【風印ウィンドシールド】だったんだが、俺では魔力不足で使えなかった(不発)んだ。高級魔法らしいからかなり魔力が必要でお前でも使えないと思ってたがまさか本当に発動するとは思わないだろう。」


高級魔法?!中級魔法とばしちゃったよ!通りで魔力蓄積マナチャージ長いと思った。それに未完成であの威力だ、恐るべし高級魔法…てか兄さんいつの間にそんなの調べてたんだ?ううん…兄さんの謎が深まった気がするよ。


「あっ、そういえばこんなのを拾ったんだ。兄さんの方が欲しいものなんじゃ無いかな。」


そう言ってさっき拾った指輪を見せる


「なんでも魔力が3倍になるらしいよ。」


「それならお前が装備すればいいんじゃないか?」


「ステータスが高ければいいってものじゃないって今日わかったからね。もし良かったら兄さんが貰ってよ。」


「そうか、じゃ、ありがたく貰っておこうかな。」


「さて、あとは。」


俺が〈それ〉に気を向けると丁度起きたようだ。


「このウルフ、どうしようか。」


そう、このウルフは群れがあのスライムに襲われて命辛々逃げ出してきた生き残りだ。未だ震えているみたいなのでそっと近付き「もう大丈夫だよ」と語り掛ける、その意図が通じたのか震えが収まった。


調教テイムしますか?

成功率:100%


いきなりそうアナウンスされた、良いのだろうか。でも、ここで置いていくのは考えられ無い。取り敢えずYesにしよう。


ー「グレーウルフを配下に従えました」

ー「スキル【調教テイム】を習得しました」


途端にウルフが嬉しそうに尻尾を振った。


「兄さん、このウルフ飼う事にした。」


「飼うってお前【調教テイム】したのか?」


「うん、成功率100%だったから。それに、ここに置いて行くわけにもいかないです。」


「そう、か。それもそうだな、それじゃあ帰るか。」


いつの間にか空は赤くなっていた、暗くならない内に森から出なくては。疲れて動こうとしない足に鞭を打って早足で森から出た。そのまま何事もなく家へ帰る事ができた。今だけは何も無いのが一番だ。帰った時には月が見えるくらいには暗くなっていた。白い月光が強く辺りを照らしていた。勿論親からはこっ酷く怒られたが、それが嬉しかった。

最初のボスっぽいの倒しました。

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