初めての冒険(前編)
初めての冒険に行きます
あの後特に何もないまま3歳になって大体言葉が発せるようになった、そろそろできることが増えたので冒険に行きたいものだ。(因みに魔法が使えることはバレてしまった。一番弱い風魔法ならなんの影響もなく出せるかと思ったら意外に威力が強く、壁をぶち抜いてしまった、それも最悪なことに親のベッドルームの壁をだ。やばいと思った時にはもう遅かった、体は乳児だが精神的には大人だ、親の行為見たい訳がない。最悪だった。だけどバラす手間が省けたのはいいことだ。)3歳になったのだから、いい加減冒険させてくれないだろうか。母さんに相談してみよう。
「お母様、そろそろ冒険がしたいです!」
ストレートに言ってみた。
「だめ」
なら隠れていくしかないか。
「と言ってもその顔じゃ隠れていくつもりね。」
母さんはエスパーか何かなのか…
「うん、もうそんな年なのね。じゃあお兄さんと一緒に行って来なさい。クライスと一緒にならママも安心だわ。クライス!ちょっと来て!」
さすが母さん!兄さんと一緒なら十二分だ!(実は兄さんも今のステータスで言えば俺の何倍も強い『壊れ』ステータスだった。というより耐久力と精神力が異常に高かった。)
「お母様、お呼びでしょうか。」
「ええ、ルシスと一緒に少し冒険をしてきて欲しいの、それと、できれば薬草もついでに採ってきて。」
「またルシスがわがままを言ったのですか…魔法は使えるようですが、まだ自分の身を守ることもできるか分からないのに行かせるのですか?」
「だからこそクライスにお守りして欲しいの、お兄ちゃんでしょ。」
「…分かりました。」
できた兄さんだ、本当に5歳だろうか?なんでも英才教育を受けているらしいが…どんな事をしたらこんなになるのだろう。
「ルシス、準備はしてるのか?剣はまだ持てないだろうし、短剣でも」
「準備はもうできてます、早速行きましょう、兄さん。」
5歳で剣を持てるのも充分おかしいと思うが、そんな事よりやっと冒険ができる。
「それじゃ、出発しようか。薬草は近くの森にあったよな。」
「はい。」
森にはちょっとした魔物が出る。スライムやゴブリン、ウルフ等代表的な弱い魔物だ。それに魔素も薄いので突然変異体は出た事がない、まさに今の自分にもってこいの狩場だろう。大体家から歩いて20分程だ。
「そういえば、兄さんは何か魔法を使えるのですか?」
「ああ、もちろんだ。ただ、魔力が高くないからいつも魔物は剣で倒している。」
そう、兄さんは圧倒的に魔力が不足している。精神力でMPはかなり高いのだがそのせいでただの飾りになっている。それでも魔力以外は高いので一般人より強い。剣に属性付与でも出来ればもっと戦いの幅が広がる事だろう。最も、そういった魔法があるかはまだ定かではないが。
「よし、着いたな。」
いつの間にか森の目の前まで来ていた。まだ昼前だが森の中は暗い。少し肌寒い感じがした。
「さて、行くか。」
薬草は森の奥にある。兄さんがいつも森から帰ってきた時にお話をしてくれるのだ。体験談というのはなかなかに迫力があり、いつも真剣に聞いている。
「あっ。」
スライムがいた、慌てて口を塞ぐ。そして無詠唱で【風球】を放った。それがスライムに当たるとスライムは弾けて消滅してしまった。
ーLvUP 1→2 LBP 0→5
最初のレベルアップだ、成長率がアップしているのでスライム一匹でも上がった。このLBPというのがステータスに振り分けられるボーナスポイントだろうか。
「一撃か、魔力が高いだけはあるな。」
そういえば兄さんはスライムに苦戦した事があったんだっけ、物理攻撃に耐性があるのだろう。
それよりもLBPをどうやって振るのか聞いていなかったが、念じてみればいいだろうか。
ーLBPを振りわけますか?
良かった、もちろんYesだ。
ーLBP振り分けー
LBP 5
筋力 7
耐久力 5
魔力 55
精神力 55
敏捷 9
運 0
【Auto振り分けシステム】
俺は運を上げれば補正で全て上がるのでオート振り分けシステムで運を全振りするようにした。そして自分を鑑定した。(いつの間にか筋力などのステータスも見られるようになっていた、多分スキルレベルが上がったのだろう。)
名前 ルシス•クレイ
Lv 2
HP 25250/25250
MP 22200/22200
筋力 1014(7)
耐久力 505(5)
魔力 2220(55)
精神力 2220(55)
敏捷 509(9)
運 5000(5)
思った通りだが完全にチートだ。一気に2桁台を全て越して最低でも3桁台だ。
「どうした?」
「いえ、何でもありません。進みましょう。」
「そうか。」
そういって進むと今度はスライムが群れになっているのを見つけた、また不意打ちをしようと【風球】を無詠唱で準備する。ステータスがさっき迄と同じならば全く問題はなかっただろうが、風球はドンドン大きくなって射出する時には前の数倍も大きくなってしまった。
そのままスライムの群れに着弾すると群れごと弾け飛んでしまった。
LvUP 2→3 LBP 0(自動消費)
「今の本当に風球か?随分大きくなかったか?」
「き、気のせいですよ。」
「どう考えてもさっきと違うだろ。」
「そうですか?」
まずい、さっきと同じ力加減でやってしまった。魔力がさっきよりも高いのだから大きくなるのは当然だ、威力も馬鹿でかい。
「それよりもなんか落ちたようですよ?」
なんとか話を逸らす
「これ、魔石じゃないか!この前何十体も倒してやっと手に入れたのに5個も落ちてるぞ!」
やばい、逃げ場が無い。
「運が良かったんですよきっと。」
「ううん、そうかもな。」
この言い訳は何度も効かないな、早いうち薬草を採って帰ろう。
「兄さん、薬草の群生地には後どれくらいで着きますか?」
「ああ、もう少しの筈だ。」
よし、何事もなく帰れそうだ。
「あった、あそこだ。」
「幾つ摘んで行きますか?」
「こんなにあるなら30程摘んでも良いよ。」
「モンスターが来ないうちに早く摘んでしまいましょう。」
薬草は根も使うので根ごと引き抜く、これが結構時間を要する、なので見張り役が必要だ。慣れれば【採取】というスキルが習得でき採取にかかる時間が減り、良い状態で採れるらしい。3本目を採った所で
ースキル【採取】を習得しました
と【採取】を習得し、1/2にまで時間が短縮された、心なしか根っこまで綺麗に採れている。25本目を取り終えようとした時
ガサガサッ
「何かくるぞ!」
恐る恐る音のした方へ近付く…音の正体はウルフだった、此処のウルフは魔物だが凶暴ではない。だから見つけた時は安心したのだがなんだか様子がおかしい、明らかに何かに怯えている様子だ。その様子を見て気を引き締め直し、周囲を探索することにした。すると、なんとも言い難い異臭がした。臭いを辿ると…
「これは…」
そこにはウルフが溶かされた死骸があった。
「おえっ…」
強烈な異臭と衝撃的な本物の死骸を目の当たりにして眩暈と吐き気を催した、この森に何が起こっているというのだろう。嫌な予感がする、もしかしたらさっきのウルフもやられているかもしれない、急いでウルフの元へ戻る事にした。