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ハロウィンに悪戯を

ちょっと遅れましたが、ハロウィンの特別短編です。

ちょうど時系列が本編と被っていたりしますあ、そこらへんはあまり気にしないでください。本編とは、あまり関係ないです。たぶん。

では、お楽しみを。

 唄が水連の住む廃墟マンションに呼ばれたのは、突然だった。

 ちょうど土曜日で、家で暇を持て余していた唄はすぐに水練の家に向かった。

 水練の住むマンションの扉をノックすると、中から「入ってええよ」と声が返ってきたので、唄は静かに扉を開けて入って行く。

 すると、

「トリックオアトリート!」

 楽しそうな声と共に、目の前にステッキのようなものを差し出された。

 それから視線を上げて、声の主を見た唄は目を見開く。

「どうしたの、その帽子」

「これか? 魔女のとんがり帽子や」

 水練は黒いとんがり帽子を被っていた。

 着ている服はいつもと同じワンピースかと思ったが、よく見ると違っていた。黒のワンピースはいつもより丈が短く膝小僧が見えており、胸元がいつもより露出して、マントを思わせるこれまた黒のカーディガンを羽織っている。いつも羽織っている白衣は、回転椅子の上に投げ捨てられていた。

 そして、彼女の差し出してきたステッキをもう一度よく見る。

 それはまるで、幼児向けアニメとかで見る、魔法少女が持つような先にキラキラと星があてがわれているステッキだった。

 一度、水練の全体をまじまじと眺め、唄は心の中で思った。

(これは魔女というより、魔女っ子……違うわね、魔法少女ね)

 水魔法でも使えば、それっぽく見えるだろう。

「そういえば、今日はハロウィンね。だからそんな恰好をしているのね」

「そうやぁ。唄、お菓子くれないなら、悪戯してもええか?」

「……そうね。最近余裕がなくってハロウィンということをすっかり忘れていたから、常識範囲でお願いするわ」

「ならっ!」

 にやりと口角を上げて、水練がどこかから黒い魔女服を取り出した。彼女が着ているのと同じタイプだ。

「これを着てくれんか?」

「……それは、お安い御用、よ」



「なあなあ、風羽。今のお前の姿と相まって、無言だと怖いから何かしゃべろよぉ~」

「……」

 水連の住むマンションの前に、ヒカリと風羽がいた。しかもハロウィンの仮装をしている。

 ヒカリは犬のような耳と牙を付けて、半袖シャツにショートパンツとラフに着こなしているが、この季節にこの格好は少し寒い。

 その隣で無言で佇んでいるのは、長身に丈の長いコートを羽織った、こちらもまた牙を生やした少年。黒髪と感情のこもっていない瞳と合いまり、どこか不気味さを思わせる。兄に無理やり着せられたと言っていたから、少し不機嫌なのかもしれない。でも、なかなか吸血鬼の恰好も様になっているとヒカリは思った。

「入ってきてええよ」

 水練の声が中から聞こえてきたので、「おう」と元気良く返事してから扉を開き入って行く。

「トリックオアトリート」

「と、トリックオアトリート」

 かけられた声に、二人の姿を見つけたヒカリは暫く固まる。

 後ろから無言で入ってきた風羽が、ボソッと一言。

「魔女だね」

 その声に我に返り、ヒカリは思わず赤くなった顔を逸らす。

「あ、ああ。良く似合ってるじゃねーか」

 その小声は、近くにいる風羽にしか聞こえなかった。

 なんとか我を取り戻し、ヒカリは唄と水練を交互に見る。

「で、お菓子だっけ? 持ってないぞ」

 本当は念のために飴玉を持っているのだが、ヒカリはそう嘘ついた。

 隣にいた風羽が無言でポケットから、小分けされたチョコレートを取り出す。

「どうぞ」

「ありがとう」

 と唄が受け取った。その隣にいる水練は、少しつまらなそうに口を尖らせたが、すぐに意地の悪い笑みに戻ると、その視線をヒカリに向けた。

「というわけで、お菓子をくれないやつには悪戯をせんといかんなぁ。わんこ」

「わ、わんこってっ! 俺のこれは狼だ! 狼男だ!」

「狼にしては迫力が足りんで。もっと男らしくせんとなぁ。わんちゃん」

「だぁああ! 俺は、狼男だッ! がお!」

「がお? 狼の鳴き声かしら」

 唄が呆れたようにため息をつく。

 思わずシュンとしそうになったヒカリだったが、そんなのお構いなしに水練の魔の手が彼に迫る。

「悪戯は、そうやな」

 ぼそっと、ヒカリの耳元で水練が囁いた。

「唄に、トリックオアトリートっていうんや。唄はお菓子持ってないから、悪戯できるよ」

 言葉の意図が分かった瞬間、ヒカリの頬が真っ赤に染まったが、いやいやそんなことするわけには、あ、でもやってみたい! という葛藤の末、ヒカリは唄の名前を呼び、彼女に向かって。

「う、唄っ。トリックオアトリート!」

「はい。これさっき風羽から貰ったチョコレートだけど」

 ヒカリの作り物の耳が、うなだれた彼の本心を現すかのように、ぺたりと折り畳まれた。


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