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闇夜に奏でるノクターン  作者: 槙村まき
第二曲 幻想祭・準備編
13/47

(6) 発表・下



 文化祭の準備のために残っていた生徒が少しずつ帰って行く時間。

 唄と風羽は、ヒカリと共に下駄箱近くの掲示板の前に立っていた。人はもうまばらで、三人は寄り添うことなく適度の距離を取りながら、掲示されている〝バトル・トーナメント、出場者!〟という書き出しから始まる掲示物を眺める。



 ――『バトル・トーナメント 出場者!』

 ――『一年A組』……暮勇(くれよん)前田(まえだ)いおり

 ――『一年B組』……西条(さいじょう)めぐる・白鳥紗里(しらとりさり)

 ――『一年C組』……桐野弥生(きりのやよい)(くれない)ユイト

 ――『一年D組』……芹沢(せりざわ)カナエ・日加里蜂(にっかりはち)

 ――『一年E組』……桐野萌黄(きりのもえぎ)渡辺賢太郎(わたなべけんたろう)

 ――『二年A組』……喜多野風羽・灰色優真

 ――『二年B組』……涼宮志麻(すずみやしお)七ッ星睡蓮(ななつぼしすいれん)

 ――『二年C組』……天津帆足・山原水鶏

 ――『二年D組』……水瀬雫(みなせしずく)山西(やまにし)ジョーカー

 ――『三年A組』……吉祥寺(きちじょうじ)シンヤ・淀野六(よどのむい)

 ――『三年B組』……美園(みその)あつみ・高橋彩菜(たかはしあやな)

 ――『三年C組』……江藤(えとう)タカシ・只野剛毅(ただのごうき)

 ――『三年D組』……佐久間花楓(さくまかえで)根倉夕(ねくらゆう)

 ――『中等部代表』……白銀(しろがね)ハク・七ッ星蓮見(ななつぼしはすみ)



「あら、風羽の名前があるわね」

 掲示板を見ている生徒は唄たち以外いなかったので、唄は小さな声をだす。

「そうだね」

 そっけない風羽の返答に、唄はちらりと風羽の横顔を覗き見る。彼は少し険しい顔をしていた。

「どうしたの?」

「いや、転校生の名前があるな、と思って」

「そういえばそうね。昨日転校してきたばかりなのに。先生どうしたのかしら」

「……さあね。でも、クラスの代表に選ぶくらいだから、もしかしたら能力がすごいかもね。強いんじゃないかな」

「そう?」

「なあ、ちょっといいか」

 唄と風羽の間に、ヒカリが戸惑った顔をして割ってきた。これにより、三人の間にあった距離はなくなり、傍からみたら普通に仲の良い生徒に見えるだろう。

 眉を潜めて、唄は少し距離を開ける。

 下駄箱の辺りに自分たち以外ないものの、用心に越したことはない。

「で、なんだい?」

「いや、さ。何か見覚えのある名前、ないか?」

「そうだね。山原水鶏とか、白銀ハクとかだろ。白銀ハクは、中等部代表に選ばれるぐらいだから、それなりに実力があるみたいだね」

 山原水鶏と白銀ハクという人物は、九月の終り頃『虹色のダイヤモンド』の事件で、知り合った二人だった。あれから二人とは顔を合わせていないが、バトル・トーナメントに出るということは、そこでまた戦うことになるかもしれない。

 二人の人物について、唄も風羽も気づいていたがあえて言わなかった。それなのに、ヒカリはいきなりどうしたのだろうか。それもいつ人が通るかわからない下駄箱の近くで。二人の名前を出して、もし人に聞かれて訝しまれたら、どうするのだろうか。

 唄は呆れて思わずため息をつく。

「ヒカリ」

「いや、それじゃないんだけど……その、さ」

 どこか歯切れの悪いヒカリの言葉に、唄は首を傾げる。

「誰のこと?」

「あの、さ。二年B組の代表の、名前なんだけど、身に覚え、ないか?」

 何かを言うのを躊躇っているみたいで、はっきりしない態度に唄はイライラしたものの、ヒカリの言葉で今一度、バトル・トーナメント出場者『二年B組』の生徒の名前を見る。

 そして、その名前を一度口の中で転がしてから、唄は気がついた。

「七ッ星睡蓮……七星(しちせい)、水練?」

「どういうことだい?」

「水練の本名は、七ッ星睡蓮なんだけど、あいつ不登校でさ、学校来てないだろ」

「そうね。貴方は、理由知っているみたいだけど」

「そ、そりゃあ、さ。俺があいつを仲間に引き入れたわけだから、あいつの事情をある程度知っているけど。さすがに不登校の理由間で言えないんだ。だけど、さ。一つだけ言えることは」

「言えること?」

「この学校の理事長の名字、お前ら知っているだろ」

「……ああ」

 風羽が口を大きく開けた。

「確か、七ッ星……そうか。だから、か」

 唄もその名前を聞いて、ヒカリの言いたい言葉がなんとなくわかった。

「そういうことね。水連……睡蓮のほうがいいかしら。あの子、こんな大事なことを隠していたのね。不登校の理由もなんとなく理解できたわ」

「そうだね。今まで気づかなかったのが不思議なぐらい、すんなりと分かってしまったよ」

 唄と風羽の言葉に、ヒカリが難しい顔で言うのだった。

「この後さ、水練に呼ばれてるんだよ。恐らくこのことについて話すと思うからさ、一緒に来いよ」

 唄が無言で頷いたとき、足音がして近くに女子の一団がやってきた。

 唄は二人の傍から離れると先に下駄箱に行き、靴を替えるとそのまま家の方向に向かって行く。

 暫くして、道を曲がって家とは反対方向に歩きだした唄は、久しぶりに訪れる廃墟に住んでいる人物のことについて考えていた。

(水練……。なんであの二人はあんなにも隠し事ばかりなのかしら)

 仕事の支障にならなければ、どうでもいいと思っていた。

 それなのにどうして、こんなにも自分は苛立っているのだろうか。

 風羽の父親が刑事だと知ったときも、そして今も。

 唄は頭を振って考えを締めだすと、次の獲物について考えることにした。

(……『叫びの渦巻き』か。どうしようかしらね)






二話続けての更新です。続きもお楽しみに

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