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闇夜に奏でるノクターン  作者: 槙村まき
第二曲 幻想祭・準備編
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(3) 少しの接触・上

「おっと。ごめん、電話だ」

 ヒカリはドーナツ大好きな友人と荒木の三人と一緒に登校途中だったが、いきなり鳴り響いた着信音にビクッと肩を震わせると、友人たちに断りをいれて電話に出る。

 画面に表示されている人物を確認せずに電話に出たため、携帯から流れ出てきた声に、ヒカリは驚いた。

「ヒカリか?」

「え? 水練?」

 ヒカリは慌てて声のトーンを落とす。友人たちに目配せすると、ヒカリは少し離れたところに行く。

 電話の向こうの相手は、ヒカリの同級生の七星水連(しちせいすいれん)だった。彼女は、『二年B組』の生徒である。

「あとで来れない?」

「今日? 学校終りだったら大丈夫だけど」

「唄と風羽にもゆっといてな。理由はあとで分かると思うけど、会った時に話すから」

 一方的にそう言ったあと、水練からの電話は切れる。

 ヒカリは携帯画面を眺めながら首を傾げた。

「どうしたんだ?」

 彼女の声音はいつもより静かだった。もともと明るい性格ではないにしても、何か悩み事でもあるのだろうか。

 ヒカリは考えたものの、後で話があるというのであればその時にわかることだろうと、よく考えもせずに友人と合流すると学校に向かって行った。

 そして午後になり、ヒカリは水練の言葉の意味を知ることになる。



    ◇◆◇



 唄は授業中、ずっと風羽の背中を眺めていた。

 別に彼の背中に恋焦がれているとか、そういう理由ではない。昨日、風羽からお願いされていたことを考えていただけだった。

(……『叫びの渦巻き』ね。風羽の家にあるのだったら、自分でどうにかできないのかしら。聞いたところ、セキュリティとか完備されているわけでもなさそうだし、父親がいないうちに入って盗むとか)

 昨日から考えていたことだったが、盗むようにお願いされたからには何か理由があるのかもしれない。単純な話ではないのだろう。

(意思のある宝石ね。……また、そんなもの盗まないといけないのかしら)

 唄は怪盗をやっている。もともと両親がはじめていたことだったが、二年前両親が怪盗を辞めたことにより、その理由を知りたいがために唄は怪盗になった。

 九月の終り事、とある事件がありそこで両親が怪盗を辞めた理由が分かったものの、唄は怪盗を辞めるつもりはなかった。理由は簡単で、ただ唄は幼い頃から怪盗に憧れていたのだ。神出鬼没で、どんな不可能な状態になっても必ず盗み出すような物語の怪盗に。

 だけどリアルは物語のようにうまくはいかない。それを知ってもなお、唄はまだ怪盗を続けている。

 両親が怪盗を辞めた理由は、とある宝石によるものだった。その宝石には意思があり、人を食べたという。別名は『人食いのダイヤモンド』。本当の名前は『虹色のダイヤモンド』。両親も、唄も、その宝石を盗みだすことはできなかった。

 唄たちの能力はまだまだ未熟だ。意思のある宝石は、能力を持たない人はもとより、一定の基準に満たない能力者をも取り込んでしまうという。

(でも、風羽の話したことから考えると、『叫びの渦巻き』は私たちよりは下なのかも)

 それは挑んでみないとわからない。けれど、『虹色のダイヤモンド』の前例があるために、唄はどうし尻込みしてしまっていた。

 答えはまだ返せていない。唄はどうするか決めかねているのだ。

 風羽は一週間だけ待つと言っていた。

 一週間後、自分は答えを出せるのだろうか。

 そんな考え事をしていたからか、昼休みになっていることに唄は遅れて気がついた。

 机にずれていた視線を上げて前を向くがそこに風羽はいない。

 唄はため息をつくと、鞄から弁当を取り出して食べ始めた。

 視線を感じて横を見ると、茶髪の生徒がこちらを睨んでいる。高橋明菜(たかはしあきな)という名前で、風羽のファンクラブのメンバーだ。風羽のクールな外見は、なぜか女子生徒を引き付けるらしい。この学校、いや学年だろうか。風羽は女子から人気があり、『風羽様ファンクラブ』というものが結成されているらしい。本人は気にも留めていないが、メンバーは増える一方だという。

(風羽のどこがいいのかしら。こんな不愛想で、頭の固いだけの男)

 唄は考えてみるが、風羽の良いとこといえば頭がいいところだけのように思った。学年で二位の成績を誇っているが、唄は学年三位。頭がいいだけで惹かれることはない。

 また考えに耽っていたためか、弁当のおかずは減っていなかった。唄は箸を自分の弁当に伸ばす。それを見計らったかのようにクラスの中から声が聞こえてくる。

「ねぇ! そういえば今日じゃない?」

「え? なんだっけ?」

「発表だよ! 誰が選ばれるんだろ」

「このクラスからだと、喜多野君とか?」

「野崎さんは選ばれないよね。頭いいけど、能力低いし」

「確かに。でも、喜多野君だと納得できるかも」

「あと一人は誰になるんだろうねー。ヒカリとか」

「それはありえないんだけど。あはは、まあ、あたしらが選ばれることだけはないよね」

「私も楽しめたらそれでいいや」

 声からすると、このクラスの主力女子グループだろうか。あまりにも騒がしく、耳を塞ぎたくなるがその中に気になる単語があったので唄は耳を傾けていた。

 母御手製の卵焼きを口にいれながら、唄は考える。

(発表……? 発表……。あ、ああ。あれか)


さて、『誰』と『誰』が接触しているのか……。



次回の更新は、3月11日です。お楽しみに―!

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