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騎士団の様子

 死屍累々……。


 まさしくそう呼ぶのが正しい現場が、此処チェルエム王城内の第一第二訓練場及び、野外訓練場で起こっていた。


 特に女性騎士や兵士が多くいる黒凛女騎士団の訓練はほとんどの者が立っていなかった。

 残り二つの騎士団も同様で、近衛騎士団には軍部トップのアースワーズが加わり、銀凰騎士団は負けられないと躍起になっていた。




 騎士団は全員が全員戦えるわけではない。

 大きく分けると皆戦闘員に属するが、回復を行う者や料理を作る者等非戦闘員がいる。


 戦争にでもなればそれぞれの役職に合った動きを見せる。

 アースワーズや団長達は指揮を取り、応じて戦場を駆ける。

 兵士や騎士はその命令に従い掛け声を上げて立ち向かう。

 治療兵は運ばれる者の治療の他、料理や地域の観察から毒物や仕込みの検査なども行い、その場で薬を作る場合もある。

 料理兵もただ料理をするだけでなく、魔物の討伐や休憩所の確保、その他の騎士達が過ごせるよう最善を尽くす。


 もしもの時は全員が団結して戦うことになるだろう。



 訓練はストレッチや筋トレから行われ、走り込みや素振りを全員で行う。

 これは非戦闘員も戦争に行くとなると体力が物を言い、もしものとき時間を稼ぎ命を長らえる為に基礎を習う。


 その後に昼時までみっちりと濃密な訓練が行われる。

 今までは組手、試合、職に合った訓練、部隊行動等が主だった。


 そう、今まではそれが主だった。


 レムエルが国王に就任し、アースワーズが本格的に加わったことにより、軍全体の方針もがらりと変わった。


 軍律は『竜精城砦(ドラゴリット)』の物とほぼ同じであり、違うとすると命令系統が挙げられる。


 アーチ大平原での争いから情報戦と知識、上から下、下から上の命令系統、指揮官不在の場合の想定もしなければならないと学んだ。


 最後の指揮官不在というのは大将が打ち取られてしまった場合は仕方ないと言えるが、それでもばらけて敗走するのはレムエルが許すところではなかった。

 言い方が悪かったが、レムエルは一人でも多く逃げてほしい為、逃げるルートを決め誰もがそこを安心して通り、恐慌状態にならないようにすると言っている。


 それらが難しいことは百も承知だが、騎士達も言われて初めて逃げる時のことも考え始める。

 逃げることが恥かもしれないが、討ち死にし国の戦力が大幅に下がるのもまた困るのだ。

 それに決めておいて損はない。




 新たに加わったのは文字や地図等の基礎教育、命令系統の確立と基本伝達法等、簡単な軍命令とルートの記憶、地形に沿った動き、特殊工作員、精密射撃(弓と魔法以外に投擲等も)、近接格闘と副武器の扱い、冒険者との関わり合い、連携行動だ。


 基礎教育等は誰もが最低基準を満たし、その場での判断を素早く付けられるようにするため。

 例えば暗号文を解読できる、地形を読める、作戦をすぐに察知できる、距離感の計算、単語による作戦内容、予備の動きや手ぶりによるルート確保等だ。

 これらはスポーツを取り入れて覚えさせている。勿論レムエルの発案で、体力づくりに大いに役立ち、偶に国民と行っている。


 地形に沿った動きは、例えば濡れた大地では特殊加工したブーツを使い、視界の確保につばのあるヘルメットの着用、匍匐(ほふく)前進、重心移動による即応反射等だ。

 どのような状態や地形でも日頃と同じように動き、相手が嫌な行動をとり有利に事を運ぶ手段を学ぶ。同時に自分が陥っても即座に反応できるよう動けるようにするため。


 他にも様々なことを取り入れ、軍全体が一つと考えて行動できるように訓練を行っている。






「はぁ……はぁ……」

「はひゅー……はひゅー……」

「じ、じぬ~……」

「おうぇっ……うぷっ」

「こ、ここで、吐くな、よぉ……」


 正しく死屍累々。


 ここは近衛騎士団が訓練を行う第一訓練場。

 騎士も兵士も含めて魔物討伐や城内警護等に当たっている者以外全員が大地に寝転がり、荒く細い息遣いで胸を上下させていた。


「これくらいで音を上げるな! 二か月もすれば、この状態で重りや鎧を着るんだぞ!」

『うぇー!』


 現在は布の服を着ている状態で、武器のみを所持している。

 だから胸が上下しているのが分かる。


 似たような訓練を『竜精城砦(ドラゴリット)』で行っていたハーストや騎士は耐えているが、それでも全身汗だくで、膝に手を付き呼吸を行っている。

 彼らでもそれなので、今まで訓練をサボっていた者達は早々に離脱し、治療師・兵達の訓練にあたっている。


 これもレムエルが行わらせたことで、治療の基準を示し、どの程度から魔法を使うべきか判断し、即座に的確な処置が出来るようにする。

 同時にポーションの研究をする研究所を立ち上げ、治療ギルドと連携して様々な薬の開発を行う。また、魔法による回復も単に回復させるのではなく、相手の傷口や怪我に応じて回復させる方針を取る。


 打ち身と切り傷と火傷では同じヒールでも効果が変わり、打ち身等浅い怪我はヒールでいいが、切り口の良い切り傷は筋肉をくっ付ける様にヒールを唱え、火傷はそれ用の魔法を開発。

 このようにして治療師達も日々上達していく。


「何を驚いている? 今まで怠けていたんだ、それぐらい当然だろ? なあ、皆」


 ハーストは爽やかな笑み(彼らには悪魔の笑み)で訊ねた。


「ええ、まあ、そうですね」

「今までのツケが回ってきたのだろう」

「ちょ、ちょっときついっす。でも、仕方ないっす」


 彼らも彼らで今まで図に乗っていた者達が倒れていく姿を見て気が晴れていた。


 当然逃げようとする者もいるが、魔法使い達がレムエルと共に考案した結果により捕まり、軍律により数か月間の減俸及び過酷な訓練の強制参加が取られた。

 魔法使い達はその結界で捕まえ結果を出すとレムエルから言葉と褒美が貰え、躍起になって特殊な結界など魔法の研究をする。だから、魔法使い達は兵士や騎士に逃げてもらいたいのだ。


 勿論不満が出てくるが、騎士達にもそれ相応の恩恵がある。

 例えば今までの装備が一新したり、力が付いたり、食事環境や上下関係の緩和、平民でもしっかりと見られ昇進が決まり、褒賞もしっかりと出る。

 今までの環境とは全く異なっているのだ。


 そのための金は研究所やギルドから出ている。

 正しくは貯め込んでいた不正貴族達から押収した金や骨董品等を売り、城内にあった物もほとんどを売り尽くした。

 歴史価値のある壺や絵等は仕方ないとして、価値しかない壺や曰く付きや単なる魔道具等はいらないのだ。

 それにレムエルは精霊がいる為ある程度削減することが出来る。


 レムエルの発案も金に変わり、ギルドは総本部から金を貰ってその発案を買う。

 その金が当てられ、今はまだ足りないが数か月後には少しだけ余裕が出る計算となっていた。

 一年後に何もなければ国の発展に本格的に動けるようになる。

 その後、新たなチェルエム王国誕生の一年を祝う祭りを開く予定となっている。

 その祭りには友好国の者達を呼び展示・発表会や帝国との対策を練る会議なども行い、正式に帝国と戦う方針を取る。


「この訓練は我々の為でもある」


 ハーストは身を翻し、倒れている者達に告げる。


「訓練が好きな者はあまりいないだろう。勉強もそうだな」


 皆が頷く。

 ここまで過酷な訓練となると、いくら訓練好きでも好きだとは言えなかった。


「だが、この訓練は必ず俺達の力となる。そして、多くの者達を救えるだろう。今は辛いかもしれん、苦しいかもしれん、逃げたいかもしれん。だが、訓練は自分を裏切らない」


 月並みな言葉だが、ハーストは熱心に続ける。


「大体、この訓練は黒凛も行っている。お前達は女性騎士に負けても良いのか? 種族柄もあるだろうが、あちらは相当強いぞ。女だからと侮っていると秋にある騎士の大会で赤っ恥を掻くことになるだろう」

「騎士の大会、ですか?」


 うんうんと頷くハースト騎士達に、そのことを知らされていない倒れている騎士達が顔を上げて疑問を口にした。


「そうだ。レムエル陛下は騎士内で一番強い者を決める大会を開きたいそうだ。勿論、新人戦、武器別戦、魔法戦、弓の精度戦等様々だ」


 これも恩恵の一つで、上位十名には昇進や褒賞や勲章等が与えられ、貴族や王族に見初められ専属騎士になることも叶う、かもしれない。

 また、この大会には専属の騎士も参加でき、その者がどの程度戦えるのか見るというのもある。

 ついでだから大会にして騎士達のやる気を出させようという魂胆だ。


「本当にあるんですか? 聞いたことないですよ?」


 手前にいた騎士の言葉に皆が頷く。

 ハーストは顎を撫で、塩分と当分の入ったレモン味の水を飲む。


「ぷはぁ。これは秘密というわけではないが、今のところ正式に決まっていないからだ。予算の問題だな」


 その言葉にがっくりとするが、


「だが、レムエル陛下が所持しておられる素材等を与えられるそうだ。レムエル陛下曰く、自分が持っていても使わないから、誰か使う人に上げる、とのことだ」


 疑問符が浮かぶ騎士達。

 ただ、国王から何かしらの素材が貰えるのなら、それはそれで名誉や栄誉になると考えた。


「素材ですか? まさか、その辺りのスライムとかの素材では……」

「馬鹿もん! レムエル陛下はお前達より遥かに強くあられる。素材は孤独の森の物が多く、恐らくそれを加工したりして褒賞とされるのだろう」


 レムエルの強さを直に見ていない者達はそう口にする。

 不敬罪と取られそうだが、現在矯正中の為少しばかり大目に見られている。

 ただ、この後訓練内容が厳しくなることは言うまでもない罰則だ。


「何にせよ、その大会は俺達の栄誉となる。俺達騎士は国に住む民を守る為にいる、仕えるべき方の剣と盾になる為に存在する。仮に褒美が無くともその力で安心するのなら、俺はそれで構わないと思っている」

『団長……!』


 背後で聞いていたベテランの騎士達が涙目でハーストの思いに同意する。

 若手の騎士達はまだ青い考えな為、極端ではあるがハースト達の思いは分からない。

 それでもこうまで自信満々に言われると、騎士という在り方はこうなのだろうと思ってしまう。


「さあ、昼食までもうひと踏ん張りだ! さっき罰として内容は二倍と処す」

『えええええ~ッ!』

「なんだ? 文句があるのなら四倍にしてやろうか?」

『いえ、二倍で構いません!』






 場所は変わって、王都から少し離れた所にある野外訓練場では、近衛騎士団と同じく黒凛女騎士団の総勢三百名ほどがいた。


 元は五百名だったが、二百名は処罰及びやめた者達で、残っている三百名は実力に差はあれど騎士としてやっていく者達だ。

 中には仕方なくという者達がいるだろうが、ソニヤはしっかりと自分で選べと言ったため文句は言えない。


 そして、一か月後には入隊試験の合格者が入ってくることになっている。

 半年の活躍によって国民からの覚えが良くなり、多くの女性達が入隊しようと考えた。

 まあ、中にはレムエルを一目見ようと入隊する者もいるだろうが。


「ふぅ。私達も秋の大会に出場するからな、今のうちに鍛えておかねば」


 夏の陽射しがきつい野外、ソニヤ達は日陰で休憩していた。

 昼時となり、現在調理係が昼食を作っている最中だ。


 黒凛の隊員全員が騎士というわけではなく、兵士は雑用と訓練を行い騎士へと昇進する。

 これはどこの騎士団でも同じことだ。


 雑用には様々な物が存在する。

 訓練場の整備、後片付けや備品の整理、上への伝達や教養等だ。


 その中にどの任務に就いても良いように最低限料理が出来るようになるものがある。

 態々小さい任務に調理班を連れて行くことは出来ず、そのぐらいなら自分達で調理しろということだ。

 もしかすると緊急事態に陥り自分で料理をしなければならなくなったり、周囲から食べられるものを選別しなければならなかったりする。

 そう言った知識等も訓練の間に覚えていくのだ。


「その前に入隊試験ですよ。はい、ソニヤ様」


 息を整えるために軽く歩いていたソニヤに、ドリンクを差し出し声を掛けたイシス。


「すまないな。どの程度の人数が集まるか分からないが、まずは百人程度だな」

「妥当ですね。多すぎても育てきれません。今いる三百人が一人前にならなければ」


 二人の考える一人前は高すぎる基準だが、最低限の技術を身に着けることが出来れば文句はない。

 入隊した者がその技術をまね、先輩は指導し、上下関係が正しく構築される。

 技術が伴っていないと単に先輩風を吹かせるようになり、騎士団内の風紀が乱れると考えているのだ。


「その間に隊長各を育てて、隊分けもしなければならない。イシスは――」

「私は副団長ですからソニヤ様から離れませんよ?」

「あ、ああ、勿論だ」


 イシスの凄みのある笑みに気おされながらもコクリと頷き、ソニヤは咳払いをして続ける。


「三百を四十程度の小隊に分けるか」

「となりますと、六小隊と六十の精鋭部隊ですか?」


 黒凛は主に遊撃部隊のような存在で、レムエルの指示が直に飛ぶような騎士団だ。

 二つの騎士団と違い日頃の任務も王都周辺の魔物討伐や城下の巡回を行っている。

 それに女性騎士というのはやはり華もある為、これからは近隣の村への巡回や他所への下見等についてくる場合が出てくるだろう。


「まあ、その程度だな。私の隊はさらに三分割し、それぞれが動けるようにしようと思う。多分だがレムエル様は度々顔を出されるだろうしな」


 ソニヤは少し頬を綻ばせ、そうなったらいいという願望を口にする。


「まだそのようなことを言っておられるのですか? 仕方ないではありませんか」


 イシスは呆れた顔で何度そう言ったセリフを聞けばいいのかと、この一か月間で耳にタコが出来そうだった。


「ソニヤ様しかこの騎士団を率いることが出来ないのです。レムエル様も残念そうでした」

「し、しかしなぁ、レムエル様の傍に居られないのは……」

「そう子供の様に駄々を捏ねても無理なものは無理です。それに王族栄光騎士(ロイヤルグロリアガード)になったとしてもいつも一緒に居られるわけではありません。今の所レムエル様は外に出られませんから」


 それでも傍に居たいのだ、ソニヤは心の雄叫びを我慢し、身体を震わせて肩をがっくりと落とした。



 ソニヤがレムエルのことを好いていると黒凛の中では周知の事実だった。

 恋愛の気持ちか否かは賛否が分かれるところだが、ソニヤがレムエルのことを一臣下以上、姉以上の思いがあることに気付いていた。


 ソニヤの事情も聴いており、彼女達は出来ればその思いが成就してほしいと密かに応援している。


 ほとんどの団員がソニヤやイシス信奉者で、ソニヤが結婚するのなら自分達が認めなければならないという、ファンクラブの中でよくある様な規律がある。

 ソニヤはシュヘーゼンの姪であり、黒凛に復帰し団長位に付いたことで近々今回の争いの功労勲章の授与式が行われる。その時にソニヤも爵位を頂く手はずとなっているのだ。


 だから、ソニヤがレムエルと結婚するというのはそれほど悪い話ではないのだ。

 まあ、周りの貴族が何を言うか知らないが、力あり、権力あり、信頼あり、出自も明確なら文句はないだろう。


 それにこれからは女性の地位も向上し、大頭してくるかもしれない。

 ソニヤに爵位が与えられるのもその影響の一つで、女性だから団長位を与えるだけというのは今回の功労から考えると低すぎた。


 元々団長クラスの実力がありながら、副団長位を持っていたソニヤ。


 レムエルを育て上げた最大の功労者に数えられるものでもあり、アブラム先代国王もソニヤが爵位を持つことを許可した。

 後はレムエルが所属する派閥が大きくなり、押し切ることが出来たと言ったところだろう。



「それは……それは、分かってるんだがなぁ。やっぱり今まで一緒に居られたのに……はぁ」


 訓練時の勇ましい姿と今の焦燥しきったような後ろ姿に、イシスは涙を浮かべ静かに拭き取る。

 背後でも同じようにしている団員が多いが、今のソニヤにかける言葉が見つからなかった。


「仕方ない。功を得ればまた話せるだろう。そのためにも、新たな団員と大会を目標に頑張るぞ!」

『はい!』






 また場所は変わって、銀鳳騎士団が訓練をしている第二訓練場。

 第一訓練場と第二訓練場の違いはその広さだけでなく、訓練する内容にもある。


 第一訓練場は広く作られ、様々な設備と魔法で作られた地形がある。

 第二訓練場はほとんどが平らだが馬の訓練をすることが出来る。


 特に差はないようだが、馬のための訓練施設という面が強いのが第二だと思えばいい。


「そこッ! 勝手に休まない! 限界を超えてこそ上に行けるのです! 歩いてでもいいですから達成しなさい!」


 マイレスはスポ根のような信念を言葉にするが、それは長い間考えられてきた理論から来るものだった。

 頑張らなければ強くならず、天才でも努力を怠れば小手先だけの者となる。

 レムエルでさえ、村では毎日のように訓練し、今でも簡単な素振りや運動、魔法の訓練等をしていた。


 だからこそ余計にマイレスは努力をしなければ強くなれないという。


「努力はここぞというときに出てくるのです。あなた達はそれを強く実感したはず。後悔は先に立たないのですよ」


 重さのある鎧を着て走っている者、馬の上で武器を振り回す者達に信念を植え付ける。

 負けたのは日頃怠け、緊急事態に身体が上手く動かないからだ、と。


「騎士の数が減りましたが、これから大丈夫でしょうか?」


 騎士団内は早急に建て直されたが、未だに確執や亀裂があることは皆分かっている。

 平民騎士や兵士はまだいいが、凝り固まった貴族達はどうしようもない。

 こればっかりは思想になる為、時間をかけて変わってもらうしかないのだ。


「まあ、すぐに元通りになることでしょう。一応騎士になりたいと応募してくる人もいますし、前までと違い冒険者との繋がりがあります」

「蔑ろにはされませんか?」


 不安そうに訊ねて来る新たな副団長にマイレスは溜め息を吐き、強いのですが覇気がないのですよ、と心の中で厳しい評価を下す。

 ただ、将来性を買い、この若い男を副団長に添えたのだ。


「冒険者はあくまでも冒険者。騎士は主と国と国民を守る為の存在。違う者と比べてもせん無きことなのですよ? さあ、構えなさい。弱気でいるからそのようなことを思うのです。騎士なら最後まで守りたい物を貫きなさい!」


 腰に付けていた細身の長剣を抜き放ち、もう片方の手で挑発するように指を動かした。


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