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第十二話

 レギン・アーチスト男爵が一部の防備を固める権限を持つアーチ大平原。

 アーチスト男爵領を中心にバグラムスト伯爵領と、今回援軍を送ってくれたレイ・ブロムス子爵領が両隣にある。


 ブロムス子爵は若くして家督を継いだ臆病な性格をしており、中立派の中でも特に慎重な動きを示していた人物だ。恐らく今回援軍を出したのもどちらに味方すべきか悩み続けたのだと思える。

 一万と三千という状況でレムエルに協力したのは、あの演説でも聞いていたのだろうが、レムエルと親近感でも持ったのかもしれない。


 チェルエム王国南西に位置するバグラムスト伯爵領の深い森から、ブロムス子爵領の浅い森へ抜ける途中にある広大な平原。ブロムス子爵領からは以前作られた軍用道を使用することで王国から侵入することが出来る。

 数度戦争が起きた場所で草木が枯れていたのだが、辺境ということでここ数十年程争い事がこの地で起きていない為、現在は禿た頭の様に一部を除き草木が生えている場所だ。


 どんな場所でも魔物はいるので構わないが、森と山に囲まれたアーチへ大平原は偶に大型の魔物が姿を見せる危険地帯でもあり、通常の戦場よりは警戒心がいる。

 まあ、今回は魔物の出現情報が無いため現れはしないだろう。


 現在レムエル率いる解放軍からは、軍用道を抜けてきたアースワーズ軍が拠点作りをしているのが見える。

 通常拠点作りは目立つ場所でするものではないが、誰もが勘違いしやすいが今回は戦争ではなく、お互いの話し合いが名目なため争い事は二の次だ。そのため、お互いの場を整える時に吹っ掛けるのは話し合う必要が無い、ということになり、お互いの状況から今後に影響してしまう。


「かぁーッ! こりゃあ、ひでえな。どんだけ戦力差があんだよ」


 夕暮れ時となり既に拠点作りを終え、打ち合わせや食事をして英気を養っている者達を背後に、レムエル達幹部の者達が戦場を向き会議をしていた。


「レギン、何度も言っただろう。まさか、お前ともあろうものが怖気づいたのか?」

「んなわけあるめえよ! 今の怠け王国軍なんざ、片捻りよ!」

「騎士達は厄介だぞ? なんせ俺達よりも強い団長達がいるからな。基本お前や俺は戦場に出られんぞ。今回は接触らしい接触も起きない予定だからな」

「わかってるがよぉ。……はぁ、久々に戦いたかったぜ。偶に侵入してくる帝国の部隊を蹴散らすぐらいだったんだもんなぁ。でも、ぶつかる予想の方が高いんだろ?」

「まあ、あちらがあれだけの人数を動かせばな。それにあちらは不穏分子を潰したいだろう」


 少し交友でもあったのかシュヘーゼンとレギンは友のように話し、真横に広がる人の波と王国軍の旗を見て語る。


 王国の旗は竜をモチーフにした旗と各貴族の家紋で、解放軍の旗は貴族の旗が多く、含めて冒険者国民達はレムエルの紋章を付けている。

 もしもの時のために区別するためだ。


「人数は予定通りみたいですね。本当に大丈夫なのでしょうか?」


 レイ・ブロムス子爵も隣の領地だということで本人が兵を引き連れ、ローブと長杖を持ち武装した状態で席に座っている。

 ただ、軍の多さに不安を抱えているようだ。


 対して同じようなレムエルだが、レムエルは自分の仲間と作戦が成功することを信じ、不安を表に出さないように努める。


「大丈夫だよ。絶対に成功する。成功しなくても皆がいるから信じなきゃ」

「レムエル様……。分かりました。私が自信を持たなければ兵士に示しが付きません。乗り切るまでは頑張りますよ!」

「うん、頑張ろうね」


 レイは二十歳過ぎと少しばかり年が離れているが、小柄で性格も似ているため、やはり親近感がお互いに湧き仲が良くなったようだ。


「皆様、そろそろ」


 作戦の最終打ち合わせを終わらせた後の会話をしていると瞬く間に夜が更け始め、レッラがそろそろ時間だと皆を促す。


 辺りでは光の魔道具を灯し、宴会のような騒ぎを続けているがどこか緊張感が漂い、明日の決戦に皆思うところがあるのだろう。


 レムエルはレッラに促され、皆を引き連れて拠点の後方へと下がっていく。

 それに気づいた者達も見ておこうとこっそり近づくが、光の魔道具だけは持って来ないように厳重な注意を促されている。

 小さな明りでもこの暗がりでは相手からばれる可能性があるからだ。


 今から第一段階のこちらの力を示す、レムエル発案の作戦を始動させるのだ。


 場所はアースワーズ軍の目の前――帝国の砦と向かい合うように位置し、自分達の拠点よりも数十メートルほど下がった所。丁度囲む森が狭まり、禿たかのように茶色の大地となる場所だ。

 もっと行くとレギンが治める街と、バグラムスト伯爵領とブロムス子爵領を繋ぐ街道もある。


「暗くて少し解り難いですが、場所は此処で間違いありません。――殿下、すぐになさいますか?」


 シュヘーゼンがぼんやりと光る掌大の照明の魔道具で辺りを照らし、昼間に印をつけた棒を引き抜いて訊ねた。


 レムエルはレッラとソニヤを従え、数歩踏み出し頷く。


「うん、今のうちにやっておこう。じゃあ、皆危ないから下がっててね」

「皆、殿下の言う通り下がれ。通達した通り、これは相手にこちらの力を示し戦意を喪失させる作戦だ。何が起きても騒ぐんじゃないぞ。気付かれたらおしまいだからな」


 シュヘーゼンの言葉についてきた野次馬達は静かに頷き、兵士達が下がる様に示した場所まで下がり、今から起きる出来事を固唾を飲む。


 彼らを此処まで惹きつけるのは、今から行われるのが世界初と言えるような偉業となるからだ。

 そして、まだほとんどの者が見たことのない精霊の力をフルに使うとからでもある。


 レムエルは静かに目を閉じ、辺りにいる精霊に呼びかける。

 精霊を使うと『竜眼』が浮かび上がるが、本気を出さなければ神々しく光ることはないようだ。


「……闇の精霊、その姿を現し、まず辺りを暗闇に」


 胸元で祈る様に構えられていた手を上空へ持ち上げ、夜の暗闇が支配したことで溢れた闇の精霊に呼びかけ、辺りに光りが漏れない闇を支配させる。


 闇の精霊は悪魔のような白い角が生えた、顔全体を光沢の無い黒紫色のメットが覆う、漆黒のぼろローブを纏った姿をしている。


 ちらほらと声が聞こえるが、この闇は声まで隠すことは出来ないようだ。


「皆、静かに。次に……この地に住まう全ての精霊、その姿を現し、僕の願いを叶えておくれ」


 レムエルの身体から黄金色の神々しい光が迸り始め、野次馬から歓声が起きるが兵士達に留められている。

 そして、それに呼応するかのようにレムエルが伸ばしている手の先から光が迸り、この地に住む多くの精霊達が姿を現していく。

 見慣れた四属性の精霊に加え、先ほどの闇の上級精霊――紫色の肌をした悪魔と吸血鬼を足した燕尾服の女性姿――と植物や大地等様々な中級精霊達が姿を現していく。

 流石に大精霊クラスは姿を現さないが、数は百体以上いるように見える。


「……お、おおおおー」


 声のトーンは落としているが、驚きは隠せない様で誰もが感嘆の声を揚げ、精霊教の信者達が膝を付き、両手を頭の上で組んで祈る。


「じゃあ、始めていいよ」

『(ビシッ)』

「ふふふ、お願いするね」


 レムエルの声に精霊全員が敬礼を行いシュール感が漂うが、誰も口を挿まずに見守る。


 精霊はレムエルの指示に従い上級精霊達は上空へ浮かび上がり、両手を光らせ自然に力を加え変形させていく。

 中級精霊以下は上級精霊に従い補助を行い、音が鳴るのを未然に防ぐ役割と細かい作業を行う。


「もっと大きく……聳えて……そして、頑丈に。そこはこうで……あそこはこう」


 大地や木々が生き物のように動き、瞬く間に見上げんばかりの物体が出来上がった。


『…………』


 目の前の光景を夢ではないか、という言葉が全員の頭の中に思い浮かび、誰もが言葉を無くす。

 この光景を思いつき実行したレムエルの奇天烈さに驚きと感嘆、再認識に溜め息を付く者がいる。同時に精霊の姿と力を眼にした面々は様々な態度をします。

 一番目立つのは涙する精霊教の信者と国民だ。次に初めて見る冒険者や魔法使い達。最後に知っている者達が何かを悟ったかのように精霊達を見ている。


「これで満足かな?」


 満足げに笑みを浮かべて頷くレムエル。

 お疲れ様、と近づいてくる精霊達を労い、一体一体丁寧に頭を撫でたりスキンシップを取って姿を消す。


 レムエルが王となるとこのようなことがよくあるだろう。時と場を弁えているレムエルだから大丈夫だろうが、注意しておかなければ今回のようなことが幾度となく繰り広げられるだろう。

 周りの者の心労となるだろうが、レムエルに従うというのはこういうことなのだ。

 それが今の段階で全員に分かってよかったのではないか。


「レムエル様。お疲れでしょうからテントへ」

「レラ、ありがとう」


 メイドの鏡のようなレッラは村である程度精霊の力を知っていたため、驚きこそすれ割り切ることが可能で普通にレムエルの体調を気に掛ける。


 これで第一段階の準備が整った。

 残すは目の前に聳える物体を眼にしたアースワーズ軍が夜明けと共にどのような反応を示すかで、今後の展開が決まるだろう。






 そして、両軍に緊張と興奮が高まる中、暗い夜の帳に一筋の光が山の影から差し始めた。


 解放軍はほぼ全ての人が起き始め、未来を切り開けるのか不安が渦巻くが、冷静な幹部達を見て落ち着きと安心感を得る。何よりもレムエルがいるというのが一番の心の支えだった。

 上が堂々としていれば下の者は安心する。そのためにレムエルが不安がってはいけないのだ。




 一方、光が照らすことで徐々に姿を現す物体を眼にしたアースワーズ軍では……。


「……ん、もう朝かぁ……え? (ゴシゴシゴシ)へ? お、おい……おい!」

「ん、もう朝か? もう少し時間あるじゃねえか。疲れてんだ、寝させてくれ」

「そんなこと言ってる場合じゃねえ! 前! 前に見える奴良く見ろ! あんなもの昨日あったかっ!?」

「ったく、何だって……え? な、なんだあれ……? え? 俺は夢でも見てるのか? イテテテテ、いてえって! ……夢じゃない」

「た、たたた、大変だぞ! こ、これはすぐに知らさなければ!」

「あ、ああ! 何だってあんなものが一日で出来てんだよ……意味分かんねえ。張りぼてじゃねえよな?」

「何馬鹿なこと言ってるんだ! どう見ては王国の中でも一二を争うほど立派な城塞じゃねえか! と、とと兎に角! 上に知らせるぞ!」


 このような会話がこの長旅で疲れ眠りこけていた兵士達の間で行われ、見張りをしっかりしていた者も自分が寝ていたのではないかと、同僚を起こし確認を取る。そのため、幹部達が知るまでに時間がかかってしまった。


 山の陰から太陽が顔を出して照らし出したのは立派な砦、ではなく、中央に石積みらしき煉瓦上の小城(兵士の詰め所)の姿が見え、その周りを見張り台や強固な城壁が森と森を繋ぐ立派な城塞だった。


 光が照らし出しその姿が露わになると、アースワーズ軍の兵士達は起き出し驚愕と共に奔走(ほんそう)する。

 叩き起こされた上司は一瞬怒りを隠さずに表すが、報告を聞き我が耳を疑うと共にテントの外に引っ張り出され、今から戦う解放軍の背後に聳え立った城塞を見て開いた口が塞がらなくなる。

 そして、その上司はさらに上司へと伝播し、アースワーズ軍は混乱の渦に苛まれることになる。


 これこそがレムエル達が画策した第一段階で、攻撃をせずに相手の士気を下げ、今後も対帝国用として使える防御壁を築くことだった。

 ただ、シュヘーゼン達にとって想定外だったのは、報告に受けていた物よりも立派になり、何もしていないのにもかかわらず自分達も疲れてしまっていたことだ。

 幹部しかこの話を知らせていなかったのが幸いし、国民や冒険者達は精霊凄い、レムエル万歳となり、士気は上々となった。


 どうやら当初は立派な砦当たりだったのだろうと思える。




 アースワーズの下に築かれた城塞の報告が伝わるまで三十分という長い時間がかかった。


 これは軍系列だけでなく、様々な上下関係であり得ることなのだが、下っ端の得た情報は直接一番上に伝えることが出来ず、一つ上に報告していくしかない。そのため下っ端兵士が眼にしたのは隊の隊長へしか伝えられず、時間を多く有してしまったのだ。

 処罰覚悟で直談判できるだろうが、混乱の渦に苛まれた頭では上に伝えるという日々の規則しか出ず、今回は緊急時ということで処罰が無くなる可能性もあったのに、だ。


 そして、アースワーズ達が遅れたのはテントを設置していた場所も関係し、前のテントが邪魔で見張りの騎士から築かれた城塞が見えていなかった。


 知らされた幹部達はメイドや侍従に起こされ一様に驚愕するが、アースワーズの号令の下緊急会議が開かれることとなった。




 身嗜みを整える時間もないと、薄着の上に貴族服を羽織る状態で集まった貴族と、簡易武装をした騎士達が集い、城塞について沈黙しているアースワーズの言葉を待つ。

 いくら嫌味を言う貴族達でも王族の号令なしには口を開けず、特に今は先日のこともあり恐怖が残り迂闊なことを言えなかった。


「殿下、そろそろ」


 近衛騎士団団長ハーストが眠い気持ちを振り払い促す。

 台の上に肘を付いていたアースワーズは薄らと目を開け、ハースト達をぐるっと一瞥してから口を開いた。


「まず、状況の報告をもう一度してくれ。それと銀鳳騎士団は混乱している兵士達を今すぐ鎮めろ。このままでは相手の思うつぼだ」

「はっ! 直ちに!」


 銀鳳騎士団団長マイレスは目の下の隈が目立つが、シャキッと返事をしてから退室する。

 こういった伝達作業と兵士達の身近なのが銀鳳騎士団で、鎮めるのも関係性が薄い近衛騎士団より上手くできる。


「報告します。第一発見報告は見張りの兵士によるものです。日の出と共に解放軍の背後に聳える城塞を眼にし気付いたそうです」


 報告する参謀役の文官軍人に、目敏い貴族が嫌味を口にする。


「どうして夜間に気付かなかったのかね? 邪魔することも、同じ手法を使って競うことも出来なかったではないか」

「これだから無能な兵士共は……」

「な――」

「続けろ」


 文官軍人が言い返す前にアースワーズが言葉で制する。


「城塞の大きさはバグラムスト伯爵領の森と、ブロムス子爵領の森を繋ぐように城壁が築かれ、先も言ったように中央に石積みの小城のある城塞となっています。解放軍がその前に陣取っていることから中には誰もいないのではないかと思われますが、現在遠視魔法による調査中です」

「ふむ……。規模から考えると俺達を想定しているような感じではない。だが、相当なダメージになったのは同じだ」

「想定が私達ではない? 殿下は誰が想定の敵だと考えておられるのですか?」


 第二王子派貴族軍の盛大な寝癖を付けた貴族がアースワーズに訊ねる。

 いつもなら笑いの種になったり、蔑みや弱みとなるが、現在はそんなことを言っている暇はない。それに皆一様にどこか欠点がある。

 アースワーズにも服に皺があったり、寝癖が少しあるほどなのだ。


「そんなもの決まっていよう。この土地、方角、条件、城塞から導き出されるのは帝国だ」

『て、帝国!?』


 場が騒然となるが、どこかストンと納得するものがある。

 中には気づいていた者がいるが、普通は気付かなければ話にならない。


「今はそんなことはどうでもいい。兎に角、一日にして築かれた城塞のせいで、こちらの士気が大幅に低下させられたのが痛い。現在の様子はどうだ?」

「攻撃らしい攻撃ではなかったため、恐慌状態にはなっておりません。ですが、あり得ない光景を目にしたからか慌ただしくなり、あれも壊さないといけないのではないか、と不安が広がりつつあります」


 報告書を読み上げる文官軍人は貴族達を一瞥する。


「そんなもの魔法で壊せばよいのだ」

「一日で城塞を作るというのは無理な話だ。きっと張りぼてに決まっておる」

「逆に蹴散らし奪えばよいではないか」

「おお! その手があったか! では、それは私達に任せていただきましょう。これでも第一王子より手柄を立てて来い、と指示を受けておりますゆえ」

「待て待て! そんなことを言うなら、指揮官であられるアースワーズ殿下が先だ。この場は殿下が一番の権力者なのだぞ?」

「何を言うか! 我々がいなければ解放軍なんぞに負けるへぼ軍が!」

「貴様こそ口を慎め! 貴様等こそ城塞を眼にして生まれたての小鹿の如く恐怖に震えていたではないか! いや、それ以前に殿下に怯えている軟弱者共が!」


 紛争が始まる貴族達に溜め息をつきたくなるアースワーズ。

 気持ちはわからなくもないが、時と場合を考えてほしいと両軍に怒りがふつふつと込み上げる。


「鎮まれ! 状況を理解していないのは貴様等だ。今はいち早く状況を理解し、解放軍にしてやられた士気を回復させる算段を付けるのが先だ」


 貴族達はアースワーズの怒気と魔力に当てられ口を噤む。

 そして、報告を続けさせるために目で訴える。


「解放軍の様子はこちらとは逆に士気が高まり、笑い声や昂ぶりなどが見えます。どうやらあれが作戦だというのは正しいと思います」

「手法は気になるが、今はせん無き事。それに同じ手法が使えてもこの場に築くわけにはいかない」

「どうしてですか!」


 戦争の経験が無いのか一人の貴族がそう叫ぶが、騎士達は何を言っているんだ? という目で彼らを見る。

 そう、同じような貴族が多くいるのだ。


「はぁ。あちらは帝国に向かっているから城塞というのが築ける。そして、恐らくこの場の領主アーチスト男爵もいるだろう。いくら王族でも領主に断りなく何かを築くことは出来ん。お前達は当主じゃないからまだわからんだろうがな」


 皮肉を言うアースワーズを睨む貴族達だが、それが分かっていればそんな質問をしないため言い返せない。


 いくら王族でも分け与えた領地はその領主が責任を負い、開発等を行うこととなる。そのため領地で鉱脈等を発見しても国が管理することなく、領主の手によって発掘できる。

 そこに王族の手が入ると全てが奪われるのではないか、と考えるようになり、開発等を行わない消極的な領主が誕生してしまうだろう。

 そうならない為に領主はその領地の王であるのだ。


「こちらが築けないのはその条件もあるが、こんな大平原の真ん中に築いてどうするのだ? ここは対帝国との戦争を想定して切り開かれた戦場だ。現に俺達は王国から通じる軍用道を通って来ただろうが。他にも資材は? 人材は? 費用は? 様々な物が足りないだろう。それに俺達はまだ解放軍のことをほとんどわかっていない」


 アースワーズの訴える様な最後のセリフに、今度は貴族達が何を言ってるんだ? という表情を向ける。


「噂のことを思っているのなら間違いだ。噂は所詮噂にすぎん。奴らが何を掲げ、何を目標にし、なぜ国民が集まり、なぜ冒険者すら協力し、精霊教が手を取るのか……」


 冒険者にはランドウォームがあるのだが、貴族達はそれが報酬になると思っていない。そもそも貴族達は冒険者を蔑んでいる傾向が強く、何でも金で言うことを聞く馬鹿な奴等だと見解している。

 貴族は貴重な物を集めてもそれを手放すときはより高く売り、報酬にするという脳みそを持っていないのだ。


 そのためランドウォームの話を知っていても、冒険者上がりの騎士も話題を出さない。


「お前達は端から噂を嘘だと決めつけていたようだが、俺はほとんどが本当のことだと思っている」

「なぜですか? 確かに城砦を築いたり、解放軍として立つのならわかります。ですが、どう考えても誇張された噂で、人間に出来るわけがありません」

「お前達の悪いところは信じようと思う所しか信じないところだ。何が悪いとは言わないが、都合が悪いことも本当だと思うことを身に付けろ。――仕方ない。俺はすぐに身支度をし、解放軍のリーダー達と話し合いをする。今のお前達には何を言っても無駄だと判断した。真実かどうかはお前達が自分の目で見て決めろ」

「殿下!」

「全ては一つかもしれないが、真実は一つとは限らない。幻影に惑わされず、自分の目で見たものを信じ判断せよ。俺は言ったはずだ。これから国は大きく動くと。身の振り方を考えるんだとな」


 アースワーズはそう吐き捨て、ハースト達を共にテントから退室した。

 残された貴族達は茫然とした気持ちになるが、気付けても言われたことを噛み締め憎く思うだけだった。






 場所は変わり、両軍が睨み合うアーチ大平原中央では、太陽が完全に山から顔を出し、平原に夏の匂いを運ぶ風が吹き、平原に生えている草花をゆらゆらと揺らす。


 一万対凡そ四千弱まで増えた両軍から、護衛を含めた五十名ほどが真っ直ぐと歩く。

 今から両軍の長による話し合いが行われ、今後どのようなことになるかが決まるのだ。


 アースワーズ軍からは当然アースワーズとシュティー、ショティーの王族が先頭の馬に乗り、挟むように団長二人と背後に従者が付き従う。他はこれに参加し有利に運ぼうとする貴族と、何が起きても良いようにと護衛騎士がいる。


 対してレムエル率いる解放軍は、


「あの真ん中の茶色い金髪の武士って感じの人がアースワーズっていう人?」

「はい。あの方――金というより茶に近く、細く鋭い目と覇気の強い男――がレムエル様の二番目の兄君、アースワーズ・オムレル・チェルエム殿下です。両隣に居られる二人は、右がシュティー殿下――濃い金髪に少し抜けたような顔――、左がショティー殿下――薄い金髪にシャキッとした顔――です」

「その隣は近衛騎士団と銀鳳騎士団の団長のようですね。その他は大して特徴はありません」

「ソニヤの言う通り、今の段階では覚える必要性はないでしょう。ですが、一応どのような人物なのか見極めておいてください」


 旗頭のレムエルがシルゥに跨り中央を行き、従者のソニヤとレッラ、シュヘーゼンが両隣にいる。背後にはゾディック率いる冒険者と鍛冶ギルドのギルドマスターや魔法ギルドの副ギルドマスター、精霊教のセレン達等勢揃いしていた。


 中央までやってきた両軍は十数メートル離れた位置で一度止まり、話し合いを行う者のみが中央に馬を進める。

 まだ、レムエルは『竜眼』も精霊の力も行使していない通常の状態だ。それでも周りの者はレムエルの容姿と雰囲気に惹かれ、眼を離せない状態となる。


「こちらから挨拶をさせてもらおう。俺の名はチェルエム王国第二王子アースワーズだ。好きに呼んでくれて構わない。今朝の騒動はまんまと一杯食わされた。現在兵士達は浮足立っている。だが、俺には効果はなかったな」


 アースワーズはそう区切り、あの現象を引き起こした本人に口角を上げながら、観察するかのような目を向ける。

 レムエルは一瞬怯みそうになるが、生唾を飲み込みシルゥに一歩踏み出させていつも通りに対応する。

 最初の頃に比べれば大分成長しただろう。


「僕がレムエルだよ。お言葉に甘えてアースって呼ばせてもらうよ」


 そう言った瞬間にアースワーズは眉をピクリと動かし笑みが深まるが、周りの者から怒りのオーラが噴き上がる。

 レムエルはシュヘーゼンから対等だということを強調されていた。


「うむ。アースか……いいだろう。では、俺はレムエルと呼ばせてもらう」

「うん。構わないよ。で、今朝のことは作戦通り行ったみたいだね。アースに効果が無かったのは残念だけど、結果は満足かな。――率直に聞くけど、あれを見て驚いたりしたよね?」


 レムエルは笑みを作りながらバックに見える、レムエルの居城の様な城砦に皆の視線を向ける。

 朝日が完全にあたり全貌が明らかとなった城塞。近づいたことで更にその凄さを実感させられ、レムエルが軍を率いていることでより一層大きく聳えているように見える。


 これこそが軍を率いる者に必要な、一人で相手を圧倒できる雰囲気だろう。

 勿論アースワーズにも備わっているが、レムエルとアースワーズの素質は別物だ。


「そうだな。正直言うとかなり大きい。そして、落とすのには一万では無理だろう。一体どれだけの人数が収納できる? 後、俺達にどうやってばれずに築いたのだ?」


 アースワーズは本当に楽しそうに訊ねる。

 シュティーとショティーはレムエルを睨むように見ているが、敵を剥き出しにしているわけではない。大好きな兄が他人と楽しくしているのが気に食わない嫉妬だろう。


「ふふふ、秘密……って言いたいところだけど、気付いていると思うから教えてあげるよ。――力ある精霊、その姿を一度現して」


 レムエルが手綱を握る右手を胸元に抱き寄せ口遊むと、一陣の風が目の前で不自然に集まり、緑色の肌と狩人のような格好をした風の精霊が現れた。

 精霊との親和性と『竜眼』の制御が出来るようになり、精霊を一体呼び出すぐらいに『竜眼』を使わなくてもよくなった。二体となると『竜眼』は浮き出てしまう。


「やはり精霊か……。姿からして風の精霊とやらか? 知っている姿と違うが、かなり強いのが分かる。どれほどの力があるのだ?」


 アースワーズ以外は全員神秘的な精霊に目を奪われる。

 そして、同時に精霊に対して危機感を強め、他に何が出来るのだろうかと姿を見て想像する。だが、精霊はレムエルがお願いする度に姿や力の強さが変わるため、レムエルの想像力に勝てなくては上を行くことは出来ず、行けても精霊の力で一瞬で覆されるだろう。

 そこを想像できない内はほぼ負けである。


「そうだねぇ、アース達に気付かれることなくあれを作ることが出来るよ。まあ、精霊一体では作れないから、相当な数を動員することになるけどね」

「ふむ、その通りだな。レムエルは何体でも使役できるということか」

「使役じゃないよ。僕と精霊は対等な存在で、友達で、お互いにお願して頼る関係なんだ。決して僕が使役しているわけじゃない。あくまでも友達だから助け合って、願いを聞くんだ」


 レムエルは少し怒ったように唇を尖らせて言う。

 アースワーズはすまなかったと笑いながら謝り、本題へと入る。


「さて、今回俺達がここへ来た理由は分かるな?」

「うん。噂――僕のことを見に来たんだよね。僕も兄上達に一度会いたいと思っていたんだ」


 レムエルは背後にいるシュティーとショティーに目を向け笑いかけるが、二人は初めて向けられる屈託のない笑みに戸惑い、そっぽを向いてしまった。

 頬が赤いのは気恥ずかしさや、レムエルの容姿に見惚れたのもあるのだろう。


 どうやらレムエルは男にもある程度効果があるようだ。

 因みに精霊の認識阻害はしていない。


「会ってみてどう思った? 意外にごつくて幻滅したか?」


 アースワーズはお道化たように言うが、切り揃えられた渋い顎ひげや低い声ががたいに合い、より一層厳つい感じが伝わる。

 だが、本質を見極めることに長けているレムエルに効果は薄く、見た目などで不安を覚えたりするものの、実際に話せばレムエルは気付く。


 良い例が、陽気でヤンキーの様な風貌のフレアムだろう。

 彼はどう見ても見た目は怖いのだが、初めて会った時の状況や会話からすぐに打ち解け、最後では温泉を作ると、フレアムが手を焼いていたくらいだ。


「いや、かっこいいと思うよ。逆に僕は弟……アース兄上の家族に見える?」

「ふはは、そうか。かっこいいか。お前の問いには是、と答えよう。ただ、俺はそう思うだけで、後ろの奴等がレムエルのことを第八王子だと認めるかは別だ。それはこれから認めさせるんだな――では、改めて聞くが、レムエルはどうして立ち上がった? 聞いた話ではどこと知れない村で平和に暮らしていたのだろう? それがいけないとは言わないが、王族と知らなかったのならそのまま暮らせばよかっただろう」


 その言葉に恰好の餌だと貴族達が笑みを作るが、レムエルは気付かない。

 ただ、悪意や企てに通じているソニヤやレッラ、シュヘーゼンが目敏く記憶し、今後の影響となりそうな人物をチェックする。


「そうだね、それは皆から言われたよ。僕が立たなくても、今の王国なら村に住んでた者だけで落とせるって」

「何だと!? 貴様何様のつもりだ! 偽王族のくせして――」

「黙れ」

「でん――っ!? すみませんでした」


 レムエルの挑発するかのような言葉に一人の若い貴族が吠えたが、アースワーズの一睨みで口を噤む。

 レムエルは貴族の顔を覚え、他の貴族にも注意をしながら続ける。


「それをしなかったのは、やっぱり苦しんでる人を見過ごせなかったからだよ。それは僕が王族だからじゃない。僕が僕であるためにだよ。だって、最初は自分が王族って言われても自分が一番信じられなかったんだもん。それでも今ここにいるのは、村を出て国民の暮らしを眼のあたりにし、苦しんでいる国民の声を聞いて、今のままでは王国が終わるって思ったからだよ」

「よく俺達の前でズバッというな」

「うぇ!? だって聞いてくるから……」


 レムエルに頭を抱えそうになるソニヤ達だが、今回はそれでいいと思っている。


「まあ、王族じゃなかったら此処に立ってるかはわからない。あの村と人に囲まれて育ったからここにいると思う。でも、自分だけが幸せになろうと考えている人は許せない。僕はね、平等にしろとは言わないよ。でもね、人を人と見ず、相応の態度と対応をせず、それでなお上に立つ者が許せない。それが自分の身を滅ぼそうとしているのに気付かない者達が滑稽だね」


 レムエルは嘲笑うかのように背後の貴族達に目を向ける。

 当然貴族達は自分達のことを言われていると気づき、レムエルに食ってかかる。


「黙って聞いていれば、貴様誰に向かって口を開いているか分かっているのかッ!」

「俺達のどこが悪いッ! あんなどこにでも生える雑草共をどう扱おうが俺達の自由だッ! どうして尊い貴族である俺達に劣る下等な奴等を気にかけねばならん!」

「国が終わるだと!? それこそ貴様の様な異分子がいるからだろうがッ! 尊き私達のやる通りにしていれば落ちることはないッ! それでも落ちる時は言うことを聞かない奴等が悪いのだッ!」

「貴様こそ偽王子のくせにずけずけと! 即刻捕まえて嬲り殺してくれるわッ!」


 第一王子派の貴族だけでなく、第二王子派の貴族までもが頭に血を昇らせ、真っ赤に顔を染め上げて吠える。

 レムエルは本気の怒気に今度こそ怯みそうになるが、レッラとソニヤが隣まで進み出て強く手を握る。


「「レムエル様」」


 勇気を分けてもらったレムエルは強く握り返し、二人に安心させるように微笑む。

 そして、食って掛かろうとする貴族達を改めて見渡し、アースワーズに目を向ける。少し怯えているシュティーとショティーが視界に入り何やら安心感が生まれ、眉を顰めて不快感を出しているアースワーズが視界に入る。


 どうやら今度は止める気はないようだ。

 ならばと、レムエルは一度目を閉じ、自分の中にある力の一端を解き放つ。


「……うん。君達の言いたいことはそれだけ?」


 『竜眼』を眼に浮かび上がらせたレムエルは、威圧するかのように王者の風格を使い貴族達を見渡す。

 罵声と罵倒をしていた貴族達は一斉に口を噤み、何か言おうとするが言葉が出てこない。本能的に逆らえないオーラが出ているのだ。


 レムエルはもう一度頷き、アースワーズに目を向けて口を開く。


「アースの連れてきた人は貴族でいいのかな?」

「うむ。正しくは付いてきた貴族達だ。俺が命令したわけではない」

「で、殿下!?」


 貴族達はまさかの裏切り行為に絶句するが、アースワーズが言ったことは本当だ。

 第一王子派の貴族は勝手に捻じ込まれ、第二王子派の貴族は勝手についてきただけ。そのどこがアースワーズが連れてきたことになるのだろうか。

 ビュシュフスの命令書にも連れて行けと書かれていただけだ。

 だから、アースワーズは『連れて』来た。

 言葉の意味が全く違うのだ。


「それとさっきから思ってるんだけど、君達は誰の許可を得て話してるの? 今は僕とアースが話してるんだよ? 認めてない僕はいいかもしれないけど、上司であり王族のアースとの会話をぶった切ったり、発言を認めていないのに口を開いたり、聞かれた通りに答えている僕に喧嘩を売るし、君達は一体何を考えてるの? ――アース、礼儀がなってないと思うんだけど」


 冷や水を掛けられたかのように貴族達は絶句し、怒りが燃え上がるがアースワーズの言葉に慌ててしまう。


「すまない、俺の監督不行き届きだ。こうなることが分かっておりながら、正さなかった者達も悪いが、今はこいつらの上に立つ者として謝る。ただ、軽々しく頭を下げられる立場ではないため、言葉で許してほしい」

「で、でん――」

「黙れと言っている。今レムエルに言われたばかりでまだ口を開くかッ! だから貴様等は侮られ、侮辱され、元凶だと言われ、滑稽だと嗤われ、反乱が起きるのだッ! それがどうして理解できんッ!」


 アースワーズの豹変にレムエルは逆に絶句する。

 更にアースワーズは貴族達を見て続ける。


「俺が謝る必要が無いとか思っているだろう。謝る原因を作ったのは貴様等だッ! それと俺の前でレムエルを侮辱し、偽王子だと言ったことは覚えておくからな。俺が王族だと認めた後の発言だ。後になってその時は知らなかった、王族に見えなかった、周りの雰囲気に飲まれた等(のたま)ってみろ。お前達が言う通り嬲り殺すからな」


 貴族達は顔色を蒼くし始め、もう一度レムエルに目を向ける。だが、レムエルは貴族達を一切視界に入らないようにしており、自分達がどうしたらいいのか混乱し始める。


「どう考えてもレムエルの容姿は王族のもの。俺以上に王族に相応しい」

「で、ですが、変装――」

「あり得ん。それこそ王族変装罪となるからな。後にばれるような重大な罪を犯すわけがない。それに精霊が使える時点で罵倒する相手を考えろ。精霊が友を侮辱されて今にもお前達を殺そうとしているのに気づけないのか?」


 アースワーズの言葉に貴族達全員が風の精霊に目を向け、微かに悲鳴を漏らしてしまう。


 風の精霊はレムエルの手で制されているが、顔は憤怒の形相に変わり、全身から制御された風が渦巻いていた。矢は番えられていないが、精霊の格好はその武器が攻撃手段とは限らない為、いつ殺されていてもおかしくない状況だった。

 ソニヤ達がレムエルを侮辱されて何もしないのも精霊がいるからであり、シュヘーゼンに止められていたことでもあった。


「やっと気づいたようだな。相手を良く見て対応しなければならないという教訓だな。あと、もう一度言うが己の目で見たものを信じろ。そして、俺はお前達に身を亡ぼすと言ったはずだ。レムエルが少しでもキレていたらお前達は死んでいたのだぞ? お前達と違って温厚且つ、場を弁えることの出来る人物であったことに感謝するんだな」


 褒められたのか微妙な言葉にレムエルは苦笑してしまう。

 右手で精霊の頭を撫でて御機嫌を取った後、精霊の姿を消し貴族達を見る。


「これは和解は無理そうだね」

「そうだな。こちらの馬鹿どもが済まなかった」

「ううん、僕の方も言い過ぎたよ。もう少しオブラートに包んで言うべきだったかな?」


 その言葉を侮辱と取る貴族達だが、今度は団長達騎士に抑え付けられ言葉に出来ない。

 まだ理解できない貴族達に解放軍の面々は呆れの視線を向けている。同時にこんな奴等に苦しめられていたのか、こんな奴等の言いなりになっていたのかと激しい怒りが込み上げていた。


「俺の目的は達成されたからこのまま帰ってもいいのだが、こいつらが納得いかないだろう」


 貴族達を冷たい目で見下す。

 貴族達はもう後がないと理解する頭はあるのか、アースワーズの言葉をここで争うのだと受け取る。

 元々彼らは解放軍を殲滅するために来ているため、どうにかして功を得ようとする。そして、今はこれから身に降りかかる火の粉を功を得ることで帳消しにし、レムエルを殺すことで全てを消し去り、功を得ようと考える悪知恵は働く。


 レムエルは争いたくないと苦い顔になるが、主を侮辱されたソニヤやレッラは怒りの炎とやる気の闘志を剥き出しにし、冒険者達も馬鹿な貴族に一矢報いたいと武器を手に取る。

 声は後ろの方にも精霊が届け、国民までもが武器を片手に声を揚げていた。


 もう後には引けない状態となり、レムエルとアースワーズは最後に一言言葉を交わし、馬を翻して両軍へと戻る。


「レムエル。お前の力を見せてもらうぞ」

「うん、僕のやり方でアースに勝ってみせる」


 こうしてレムエルと解放軍の初めての戦争が始まり、王国解放の初戦の幕開けとなった。


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