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第十四話

 オルカス・ウィーンヒュル子爵が治める鉱山都市『ロックス』で無事協力を取り付けることが出来たレムエルは、街の観光を二日ほどかけて行い、次の領地へと向かった。


「次は水上都市『アクアス』だよね? 最初が森で、次に山に行って、三番目は水?」

「ええ、水上都市『アクアス』。彼の都市は名前の通り大きな湖の上に建っている。四方から橋がかかり、中心の都市は湖の底に届く棒の様な物で支えられている」


 冒険者時代と騎士団時代でいろいろと回ってつけた知識だろうが、ソニヤの意外に博識な情報にレムエルは驚きシルゥの上から落ちそうになった。

 それだけで湖の上で維持できる建物というのは想像できず、レムエルが驚いたのをよく理解できる。


「ふふふ、レム君が驚くのもよくわかる。実際に見て驚いてもらいたいから詳しくは話さないが、『アクアス』の領主は人魚族だ」

「人魚族って下半身が魚の種族だよね? 陸上では魔法を掛けて人間の様な姿をしてるって聞いたよ」


 人魚族は基本的に女性しかおらず、男性は半人半漁の魚人族というのが正しいだろう。

 獣人は人族をベースに動物の特徴が入るが、中には動物の特徴が強く出る場合があり、全身を動物の毛で覆われた者がいる。それに近いイメージで、魚の特徴が強く出ている種族となる。

 水系の魔法に強く、耐性も高い。魔力も豊富で、水の中では高速移動が可能であり、魚の特徴も持つため息継ぎをほとんど行わずに過ごせる。


「よく覚えていたな。『アクアス』はその人魚族達、いろいろな種を纏めて水棲族というが、水棲族が多く住んでいる。その水棲族が毎日都市が崩壊しないように整備を行い、何が起きてもいいように水の中に住処があると聞く」

「へぇー、頑張ってる都市だね。でも、どうして湖の上なんかに作ったんだろう? 作るのも難しそうなのにね」

「そうだな。その理由は領主『ウィンディア・ハイドル』伯爵に覗ってみると良い。きっとその重要性が分かるだろう」

「ふ~ん、分かった。まだ、水らしいものは見えないけど、どんなところか楽しみだね」


 レムエルが次の領地へ着くまでに少々時間がかかる様なので、『ロックス』で起きたことを簡単に話しておこう。


 ゼノの店では魔法銀糸の手袋がすぐに発売され、この不況のさなか画期的な装備品として瞬く間に知れ渡った。

 他にもブローチやネックレスなどの宝石の外側となる装飾に銀糸を編み込むことで、宝石や魔石の魔力を増幅させることに成功したそうだ。だが、まだ出来ただけで商品には値せず、これから改良に改良を重ねて商品化するだろう。

 人形については新たな増幅アクセサリーとして使われることがあり、子供向けのキーホルダー、男性向けと女性向けのアクセサリー等が考えられている。

 その情報と商品はオルカスの元へ届けられ、ゼノの厚意もあり商品にレムエルのことを宣伝する『竜眼』と精霊を組み合わせたレムエル印の紋章を付けることになった。

 まだ、レムエルのことは伏せてあるが目撃者が多数おり、名前は分からないがどんな人物かというのは広まり始めている。


 その後レムエルはいろいろな場所を警備兵に説明されながら回り、鉱山都市のため地面の整備が行き届かず子供達がこけて怪我をする場面によく出くわしていた。

 その度にレムエルは魔法を使って癒し、泣き止まない子には精霊を見せて軽く遊んであげる。

 精霊は土の中級精霊まで現れ、レムエルがいた二日間だけ子供達と仲良く遊んでいたという。


 最後の日には精霊教教会を訪れ、軽い事情説明の後この地の大司祭である者と軽く話し合いを行った。

 『ルゥクス』に近い精霊教教会には伝書鳩が届き、レムエルのことや作戦内容が伝えられているそうだ。まだ、遠くの精霊教教会には届けられず、教皇宛の伝書鳩も帰ってきていないとのこと。

 だが、着々と進んでいるため多くの精霊教の信者が協力してくれることだろう。

 そして、帰りには一曲賛美歌を演奏し、その曲はレムエルが弾いた物だったが、届けられたという歌詞付きの物でもあった。


 結果、レムエルは『ロックス』では有名人となった。


 これがレムエルが『ロックス』にいた間の出来事だ。




 そうこう話している内に水上都市『アクアス』に着いたようだ。


「うわあ~、とっても綺麗なところだぁ! 本当に湖の上に浮かんでるよ!」


 『アクアス』は『アクアハイド湖』と呼ばれる大きな湖の上にあり、薄青色の壁が綺麗な都市である。

 建物全体が青いのは通常の壁では湖から出る水蒸気にやられ、湿気によってカビや老朽化が早まってしまう。そのため水を吸収して湿度を保ち、吸収した水を下に流れる排水溝へと戻す特殊な植物を加えた粉を入れ、強度と都市全体の老朽化を防いでいるのだ。

 そのため雨が降ってもすぐに乾き、水仕事が一般的となっているが畑仕事などは湖の外側に作られている。


 これで分かっただろうが、都市自体は湖の上にあり、住民が住み湖内の魚やごみ取り等を行う水仕事をし、それだけでは野菜や肉類がすべて輸入となるため湖の外の平地や山を活用して育てているのだ。

 水は豊富にあるが湖の水を減らすわけにはいかないので、排水溝に流れた水を浄化魔法で綺麗にした後水撒きとして利用している。

 湖は山から流れてくるため豊富な栄養を蓄えており、少し加熱して除菌することでミネラル豊富な水をいつでも飲むことが出来る。そしてその水を吸って育った野菜と飲んで育った動物は生き生きとし、瑞々しい食感となるという。

 都市は確かに湖の上だけだが、『アクアス』として考えると湖のある地帯全体を呼ぶのだ。


「ハイドル伯爵は都市の中央にある鯨の頭の様な建物の中にいる」


 ソニヤが言う通り都市の中央には鯨が水面から飛び出したような形をした少々変わった建物があった。

 大きさからいうとかなり大きな建物となるが、あれは領主館だけでなく警備の詰所や訓練場等がぎっしりと詰まった『アクアス』として有名な建物だ。


「あれが鯨っていうのかぁ……。あんなに大きいの?」


 未だに村近くの泉が精々であり、このように大きな湖を見たことがなかったレムエルは、当然魚をほとんど見たことがない。

 話で聞いてはいただろうが実際に鯨をモチーフにしたと聞き、それほど大きいのかと少しだけ自分が襲われたらと恐怖し、同時に少しだけ見てみたいと好奇心を持っていた。


「いや、あそこまでは大きくないな。普通の鯨だと十五メートル弱、大きくても三十はいかないだろう。だが、魔物となると話は変わる。魔物は魔力を取り込んだものだから当然大きくなってしまう。確認された物でも百メートルはあったそうだ」

「ひゃ、百メートル……! ど、どうやって倒すの? 襲われたら丸飲みされちゃうよ……」


 聳えるほどの大きさとなった鯨に戦慄するレムエルだが、海に行かなければ合うこともなく、海近辺にその姿を現すこともほとんどありえない。


「ふふふ、レム君は可愛いな。鯨の魔物『ホエール王』や『海震王リヴァイアサン』等がいるが、どれも気性は穏やかで魔物というよりドラゴン等のように守護的存在に近い。王国では『竜眼』があり、竜種を崇めることがあるが、海の国ではそういった魔物や動物を崇めることがある」

「それは聞いたことがあるよ。海の国では漁師達が特に崇めるんだよね。海は天候が崩れやすいから海の怒りと言われていて、嵐や竜巻が起きないように祈ることや無事と大漁を祈願するんだったはず」


 最後の語尾が不安になったのはどこで聞いたのか不安になったからだろう。

 それも恐らく魂の中に海に関する者の魂が入っていたからに違いない。

 この世界に住むほとんどの者が嵐や雷、雪、竜巻、地震等を自然現象だと思っていない。

 研究家は調べ分かっているだろうが、深いところまでは分からず、器具もないため実験すら出来ない。

 そのため神の祟り、海の怒り、天の罰等と地方で恐れられているのだ。

 王国では基本的に穏やかな気候のため地震もほとんど起きないが、起きると竜の怒りと呼ばれる物も存在するという。


 レムエルは『アクアス』の綺麗な街並みと見る者を圧倒させる建物から目を離し、領主ウィンディアに会いにシルゥの腹を蹴りソニヤと共に入って行った。




 遠くから見ていた物より鮮やかな色合いをした建物達。

 下の方が少し湿っているようだが上の方は乾いており、建物も水を溜めないような滑らかな屋根となっている。

 馬でも動けるように普通の道が端に続いて領主館まで続いているが、基本的に水棲族が住む街であるため水移動が出来るようになっていた。


「変わった所だね。あのオレンジ色の布が付いているのが船っていう奴?」


 端の上から見える湖の上ではオレンジ色の帆をした船、というよりヨットに近い形をしている。

 色はオレンジが多いが様々な色と模様がある三角形の帆に、多くて二つを横付にした長細い白の船体、大きな物でも皆が知る船とは違った形が多く、通常の船もあるにはあるが下に魔物が付いている。

 ヨットと違う点は風魔法を使って速度を上げられるように帆はゆったりとした作りとなり、ぶつからないようにしたり、高速移動できるように感知魔法を使用した独自の魔道具が船体の先へ取り付けてある。

 通常の船の下には大きな魚の魔物がくっ付いており、いや、正しく言うのなら横半分に切ったような船が魔物に乗っかっている感じだ。飼いならした魔物だろうが、魚と言われて疑問符が付く様な牙と大きな肉厚な鰭が付いている。

 何もせずにゆったりと泳いでいるところを見ると観光客を乗せた船なのかもしれない。


「この地ではあの形が一般的となるそうだ。海と違い湖は風が吹いてもそこまで波が高くならないし、広そうに見えて狭い空間だから通常の船では船体がぶつかり傷付いてしまうらしい」

「ええ、その通りです。また、大きな船には見て分かるように契約をした魔物を運び屋として使い、荷物の運搬から観光の移動を行います。この湖は底が深く、水棲族である私達が協力して魚達の管理と水の清掃を行っているのです」


 ソニヤがレムエルの疑問に答えると、背後から透き通った女性の補足する声が聞こえた。

 二人が振り返るとそこには海を彷彿させる薄青色の肌、に所々魚の輝く鮮やかな鱗がある魚人族の男性と、海色の揺れる長髪から覗く耳は色鮮やかな鰭となり、ゆったりとしたドレスの様な物を着て豊満な体を隠している人魚族の女性がいた。

 魚人族は口一文字に結びこの地特有の鎧を身に着け、手には三又の槍を所持している。所々違いはあるが三人いる。

 人魚族の女性は法螺貝のような形をした長杖を持ち、先端には海深色の拳大の宝石か魔石が取り付けてある。


「突然話しかけ申し訳ありません。私の名は『ウィンディア・ハイドル』。ここ水上都市『アクアス』を治める領主です。レムエル様、ソニヤ、事情についてはシュへーゼンから覗っています。ようこそおいでくださいました」


 優雅に一礼するウィンディアと名乗った人魚族の女性は、顔を上げるとレムエルを見て年配の女性が見せる余裕な笑みを浮かべた。

 レムエルはその笑みに見とれ少し赤く恥ずかしくなり、シルゥを移動させてソニヤの後ろに隠れてしまった。


「あらあら、レムエル様は恥ずかしがり屋さんですね」


 そう朗らかに笑いソニヤの方を向く。

 ソニヤは一礼すると馬から降り、自分の体を掴んでいるレムエルを支えながら馬上から降ろす。


「お久しぶりです、ウィンディア様」

「ええ、久しぶりですね。あなたと最後に会ったのはあなたが冒険者だった頃でしたから、二十年近く経っていますね。元気そうで何よりです」

「はい。怪我や病気になることなく過ごせております」


 軽く挨拶した後、未だに恥ずかしそうにしながらウィンディアの豊満な体を直視しているレムエルを前に押し出す。

 逃げようとするがソニヤに両肩を強く捕えられ、恐らく自分にはしない反応に嫉妬しているのだろう。

 どうしようもなくなり、このままでは肩が痛くなりそうだったため観念してボソッと挨拶する。


「ぼ、僕はレムエル……です。よ、よろしくお願いしますぅ……」

「はい、よろしくお願いします、レムエル様」


 チラチラ顔を見ながら挨拶をするレムエルの手を取り軽く握ったウィンディアに、再び顔を赤くするレムエルを見てなんとなく場が和んでいく。


 この街は自分達自給自足が出来ているようで、領主であるウィンディアがどうにかやりくりして税の徴収を纏めているそうだ。

 それでも物価は高くなり、人々の活気と観光客は激減したそうだ。

 それでも今までの街よりは声が響き渡り、活気だと思えるレムエルだった。


「この場で話すわけにはいかないでしょうから、一度領主館へ行きましょう。道すがら案内もしますのでわからないことがありましたらご質問ください」

「う、うん、質問する……」

「では、馬にお乗りください」


 兵士を除いた三人が馬の上へ乗り、下を歩く警備兵に合わせて街の中を案内されながらゆっくりと領主館を目指していく。


「変わった槍だね。どうして三又なの?」


 レムエルが出発すると同時に兵士の持つ槍に興味を持った。

 兵士は槍の先端に目を向け、ウィンディアに説明してもいいか覗う。


「この槍は三叉槍(さんさそう)三叉戟(さんさげき)、トライデントと様々な呼び名がありますが、この武器は我々水棲族が遥か昔から持っている武器なのです。そして、槍の穂先が三つになっているのはそれぞれが独立しながらも一つであることを示しています。その三つとは肉体・精神・自然を現します。肉体とは人間、精神は魔力、自然は精霊を示し、その三つは全て世界が創り出した物であり、世界という一つからわけられたものなのです」

「作られた経緯は元々我々でも魚を捕るのが困難だったためと聞いています。それがさらに進化し魔物や我々を捕えようとする者から護る武器へと変わり、現在では我々水棲族を象徴するものとなりました」

「中には我々が崇める神がトライデントを持っていたとも言われており、それを真似して作られたとも言われています。現在は穂先が一つよりも三つの方が範囲が広くなり、漁師達もこの槍を使います。また、陸上での武器としても使えます」


 ウィンディアから許可を貰った兵士三人が満足そうに頷きながら丁寧に説明する。

 レムエルはそれに感慨深そうに頷き、ソニヤは知らなかったのか小さく面白い話だと頷く。


「その槍は水棲族の誇りも詰まってるんだね」

「「「レムエル様ぁ! 分かって頂けるのですか!」」」

「え!? な、何!?」


 うんうんと頷きながら知ってもらいたかった言葉を口にしたレムエルに三人の兵士は泣きながら近寄り、レムエルはよくわからずソニヤに助けを求めた。


「レム君は三人が語ったことを水棲族の誇りだと感じた。それは正しいことで、彼ら水棲族が他種族に知ってもらいたい、感じてもらいたいことでもあったということだ。なかなか気づけることではなく、普通はそうなんだ、で終わってしまうだろうから、レム君が気付いてくれたことが嬉しかったんだ」

「「「ええ、ええ、そうです! さすがソニヤ様!」」」


 ソニヤも目に涙を浮かべる少々ごつい身体の魚人族三人に苦笑を浮かべる。

 ウィンディアも笑ってはいるがどことなく嬉しそうで、ウィンディアが持つ杖もまた水棲族、特に女性に伝わる物なのだ。

 この世界では法螺貝を魔道具にした録音機が存在する。

 ピアノの魔道具の中に内蔵されていたのもこの法螺貝の記録魔道具であり、長くは記録できないが思い出の音を記録するために作られた魔道具なのだ。

 元々まだ人間となる魔法を完成させる前に陸に住む種族と恋仲となった水棲族がお互いの親の反対にあい、悲恋に終わるのが悲しくせめて声だけでも残そうと考えた時に作られたと言われている。

 その話は女性に人気で、当初は爆発的に売れたそうだが、その魔道具を使った犯罪も増え始め現在は国の許可なしの製造は禁止となっている。

 水棲族の女性は信じ、その法螺貝を使った杖を良く持ち歩くのだ。


 仲が一気によくなったレムエルは兵士三人からいろいろな冗談を交えた話を聞き盛り上がり、ソニヤは呆れながらその後姿を見守り、ウィンディアは辛くなり始め元気の無くなった兵士の笑顔が見れて嬉しそうだった。


 『アクアス』は水仕事が多いと言ったように独自の仕事が存在する。

 例えば、流石に尿等はしないが、排泄する水も再利用するため洗浄する係、魚を捕る漁師とそれを受け取り捌く者達、基本的な料理も魚が多く、日に焼けた者が多い。

 珍しい職業は水上レースの出場者達だろう。

 毎日行われる湖の外側に作られた競技用のコーナーが複数あり、この領地ではそのレースが若者に熱狂的な支持を集めている。また、上手な者がモテるのもこの領地ならではであり、以前までは良くレースを見に来ている者が多かったという。

 レースは種族問わずの船に乗るのが原則で、魔法で加速させ、障害物があり、波があり、敵がおり、何でもありの色々なレースだ。

 レースは主に純粋に距離のタイムを競うレースで、四分の一周、半周、一周がある。これは怪我をする確率が低いためほぼ毎日行われる。

 週に一度行われるのは障害物があるアスレチックなレースで、これはタイムを測るが最後まで出来た者が称賛される。これは半周までだ。

 他にも攻撃性の無い魔法を使い的を撃ち抜く競技、団体戦によるレース、ペイント魔法を使った戦闘レース等々いろいろな物がある。一番盛り上がったものは召喚獣を使用した年に一回しかない水の祭りだろう。


「このようにここ『アクアス』ではいろいろな行事があります」

「全部水に関わるんだね。でも、最近はしてないんでしょ?」


 競技練習をしている人がほとんどいないのに気が付いたレムエルがそう訊ねた。

 漁をしている者はいるが、生活苦になり始めお金にならない競技練習に割く時間が無くなってきたのだ。


「はい。悲しいことですが、最近取引も下がり競技をする時間がなくなったのです。観光客も訪れなくなりましたから、観光船も出ません。祭りもここ最近お外から訪れる来場者が減りました」


 ウィンディアは目を伏せ悲しい目をしながら言った。

 兵士達もその気持ちは同じで歯を食い縛っていた。

 それを見たレムエルとソニヤはやれない気持ちになる。


「ですが、どうにかやりくりは出来ているのですよ。他の領地と比べるとまだ自給自足できるためどうにかなっていますが、私の領地の様に自給自足出来ないところではもっと酷いでしょう」

「うん、そうだったよ。だから、僕は頑張るんだ。苦しんでいる人を救うためにね」


 レムエルは人々が落ち込み、それに伴って元気を失い太陽の光を反射しなくなった水を見ながら呟く。

 五人は聞き留めるが声を掛けず、近づいてきた領主館へと行こうとする。


「オラオラオラオラァッー! 退け退け退けェッー!」


 と、馬の首を領主館へ向けると同時に背後から物騒な声が轟き、住民の悲鳴と怒声が響き渡る。

 何事かと背後を向くと水飛沫を上げて船を操縦する集団が、街に敷かれる水路を縦横無尽に動き回っていたのだった。


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