プロローグ
他の小説が完結していないにもかかわらず新しい小説をすみません。
一応この小説は一部ごとの切りのいいところまでを連続で上げていくつもりです。なので、キリの良いところになると更新が途切れると思いますが、書き溜めていると思ってください。
手始めに第一部前半までを投稿します。
惑星名『ヴェンド』にある大陸の内中央大陸と呼ばれる最も大きな大陸『バラキア』。
人以外に獣人族、亜人族、魔人族、水棲族、森林族……想像上の生き物が数多く住み、共に協力し時に争い、長い月日の中暮らしている。
初めて生き物の生存が確認されたのは今から凡そ一億年前と言われている。
それでもまだ知性がある生き物はおらず、本能のままに生きる魔物やドラゴンなど幻獣が殆どを占めていた。
聖法暦0年1月。
時が経ち、世界では種族の力だけでなく、数が増え始めたことにより技術が普及し始めた。
洞窟に穴を開け暮らしていた外に人々は家を作り、巻くだけだった服は四つの穴を開けることで着れるようにし、手作業は道具を作ることで高速化を図り、人々の暮らしはみるみるうちに発展し良くなっていった。
不思議な力――魔法についても急速に成長し始め、戦争が武力だけでなく、技術合戦も始まりだした。
聖法暦1251年7月。
この年は世界の分岐点呼ばれ、初めて神が現世に降臨したと言われている。ただしそれが良いことだったとは限らない……。
急速に高まった技術は敵だけでなく、味方に、第三者に、大陸に、世界に牙を向け始めた。さすがに多大陸の人間が攻めてくることはなかったが、見かねた神々が傲慢な者達に天罰を加えようとこの世界に姿を現した。
世界の終りまであと一歩というところで神々の介入が許され、生きとし生きる者全てに罰が与えられた。
それが世界の仕組みと技術の衰退だった……。
氷隷暦0年1月。
この年は神の降臨から隠れ住んだ者達がひっそりと暮らし始めてから数万年の月日が経った頃になる。
神の恐ろしさが薄れ始め、捩れ始めた伝説は神を神聖視する物へと変わり出し、この年初めて神を崇める教会が作られた。
だが、地上は天罰により荒廃と化し、大陸のほとんどが極寒の地となってしまっていた。
そんな中、人々は神々に助けてもらおうと祈り出した。
神々を都合の良いように解釈し、どのような人物なのか知らずに……。
氷隷暦281年8月。
三百年弱の間祈り続けたことにより、遂に神々は人々を許し、大陸を極寒から解放した。
それでも荒廃しているのは変わらず、神々は最後に人々と二度と同じ過ちを起こさぬようにと約束をした。
光勇暦0年1月。
この時代から再び人々は急速に成長を遂げていくことになるが、それを妨げる敵が出現した。
それが魔物と呼ばれる害でしかない生き物の誕生だ。
魔物はどうやら人々が隠れ住んでいた間に、あの何人も生きることの出来ない閉ざされた極寒の地で進化を遂げた唯一の生物だった。
魔物は通常の動物よりも数倍強く、外に出たばかりの人々は次第に数を減らしていく。
すぐに事態を知った者達は互いに力を合わせ、魔物を蹴散らし安全な国造りを始めた。最初の内は村という規模だったものが数十年かけて規模を拡大することで町へと化し、更には規模の大きな街、そして国へとなった。
光勇暦1951年5月。
暮らしが安定したことにより、人々は再び争いをするようになった。
だが、今回は神々が介入する前に世界が護ろうと防衛システムを起動し、世界の仕組みが生んだとある魔法が発動した。
それを『英雄システム』と呼ぶ。
これは未だに解明されていないが世界が危機だと感じた時に世界が生み出す魔法のことを言い、その危機に適した人材を生み落すと考えられている。
ただ、いつ発動したのか、誰なのか、その分岐点なのかは誰もわからない。
夜中の空に浮かぶ蒼月から空間を越えて訪れる、魔族達の侵攻から人々を護るために異世界から勇者を召喚し、武器を産み出した。
世界を統一せん、と動き出した暴君を阻止しようと天変地異とそれを越える人々の希望を産み出した。
暴君が支配し、種族を奴隷へと落とし、絶滅へと追い込もうとした者を倒すために知に富んだ者を召喚し、運命に試練を与え、乗り越えることで人々の支持を得て、暴君から種族の危機を救い新たな王となった。
だが、全ての者達がその目的を達成できたわけではなく、世界の仕組みも理想の者を呼び出すことを叶わず、支配を許す、絶滅させる、逆に乗っ取る者等が出ることもあった。
また、唯我独尊、傍若無人、自己中心、やりたいことをする者もおり、世界を混沌とさせる者もいたという。
その度に世界はリセットしようと力を発揮する。
だが、世界の仕組みは理想を喚べるわけでも、希望を産み出せるわけでも、力も無限ではないことを忘れてはいけない……。
天星暦0年1月。
更に年月がかかり、魔物は人々にとって親しみがあるものとなり、魔物から得た素材を活用し生活するようになった。
だが、現在では古代時代と呼ばれる聖法暦時代の技術には遠く、足元にも及ばない。
大陸にある未知を探す者、思いのままに行動する者、魔物専門の退治屋、冒険者と呼ばれる者達が出始めたのもこの時代だ。
過去幾度となく発動した英雄システム。
最近その力は弱まり始め、それは世界の表面に出始めていた。
豊かだった大陸は荒野と砂漠が増え始め、魔物はさらに進化し猛威を振い、世界のおかげで神の天罰を忘れた人々は祈ることを止め、権力と欲に溺れた者は全てを手に入れようと足掻き始め、弱き者は心を挫かれ成長する・向上することを止め、世界は衰退期に突入し、世界の終わりを数え始めた。
発起する者もいたが、世界が諦め始めたのでは勝てず、人々は再び争い始める。
天星暦885年1月。
ふわふわと空をカモフラージュする白い雪が降り、肌が凍える冬真っ盛りの深々とする夜の帳の中、世界は過去にない最大の分岐点を迎えようとしていた。
世界が最後の力を振り絞り、諦めてはいたが神々の力を覚えている世界は自らを救おうと英雄システムを起動した。
だが、既に千を超える英雄システムの起動に力を使い果たしていた世界の仕組みは、最早この状況を打開する物を産み出す力を残していなかった。
そこで世界は異世界から召喚するのではなく、世界の狭間を彷徨っている魂をランダムで掻き集め、一つに纏め上げることで一人分の英雄の魂を作り上げることにした。こうすることで異界に介入する力を抑え、力も与えず、記憶を弄ることなく英雄を産むことに成功した。
だが、その結果英雄の力を得ることは出来たものの魂が――心が脆くなり、英雄にとって必要不可欠な勇気が欠けた状態で誕生してしまった。
世界は消えゆく意識の中焦りに焦ったが、もう自分にはどうすることも出来ず、まだぎりぎり残っていた力を使って魂が最大限適応する器と肉体、成長する力を与えた。
これにより今代の、世界最後の、世界の命運を背負った英雄が誕生した。
これは近い未来世界の救世主、覇者、統一する者、生み出された大英雄、恐怖の王、死を司る者……等と様々な呼び名を残す者となる。
その姿は麗しいが弱々しく、とてもじゃないが世界を救った者とは見えなかったという。
だが、武に富み、魔に富み、知に富み、全てにおいて名が高かったという。
そして、その傍らにはいつも心を支える者達が並び立ち、命に代えて守り抜いたという。
その英雄の名を『レムエル・クィエル・チェルエム』という。