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投稿4日目にしてブックマーク登録数が三ケタに……(((; ゜д゜)))ブルブル

登録してくださった皆さん、読んで下さっているみなさん! ありがとうございます!














 マリアンネで癒しを得たリューディアであるが、今度は王宮の庭でミルヴァに捕まった。ちょうど、彼女の姉のエリサと共にお茶をしていたらしい。リューディアも参加して行かないか、と誘われ、本日2度目のティータイムである。


「リューリ。今日は宮殿に何か用があったの?」


 そう尋ねたのは上品なしぐさでティーカップを持ち上げる、カルナ王国第1王女エリサ・レーナ・カルナである。年はリューディアの一つ上の18歳。エリサ、ミルヴァ、リューディアと、この3人は年もさほど変わらないので仲が良い。


「ん、いやね。マリィの様子を見に来ただけ」


 正確にはマリアンネに癒しを求めてきたのだが、様子が気になったのも嘘ではない。割合的には、癒しを求めたというほうが大きいが。


「ふうん。マリィ、元気だった?」


 マリアンネはミルヴァの婚約者リクハルドの妹でもあるので、ミルヴァも彼女と仲良くしている。マリアンネも、ミルヴァにはなついていると言えるだろう。


「ああ。ユハニとうまくやってるみたいだ」

「……意外とあの2人、波長が合うのよね」

「ユハニって、意外と面倒見がいいものね」


 ミルヴァが感心したように、エリサがくすくす笑いながら言った。確かに、ユハニは頼られると応えてしまうタイプかもしれない。まあ、嫁には行きたくないけど。


 それから、3人で他愛ない話を始める。やはり昨日の舞踏会はどうだったか、という話になって、リューディアは苦笑した。


「や、アウリス殿下に誘われて、びっくりしたよ」

「それで、どうだった?」


 ミルヴァが少し身を乗り出して尋ねる。リューディアは、「どうっていわれてもねえ」と苦笑気味。


「なんというか、機械と踊ってるみたいな正確さだった」

「お兄様……」

「さすがに、期待を裏切らないわね……」


 ミルヴァとエリサの言葉から察するに、この二人もアウリスとリューディアが踊っているところを見ていたのだろう。


「でもまあ、ダンスに誘われたってことは嫌われてはいないんだなって思って、ちょっと安心した」

「いや、お兄様がリューリを嫌うわけないでしょう」

「そう? なんか、睨まれてるような気がするんだけど、いつも」


 リューディアが正直に述べると、ミルヴァは「お兄様……」とまた呆れたようにつぶやく。


「まあ、お兄様、目つき悪いから」

「氷の女王もかくやって感じだしね。男だけど」


 妹たちよ、好き勝手言っているな。まあ、アウリスもこれくらいで怒るような器量の狭い男ではないんだろう。この二人が妹なら、度量の広さを持ち合わせないとやっていけないと思うのだ。


「そう言えば、リューリ。今度、一緒にピクニックに行かない?」

「ピクニック?」


 エリサに話しをふられ、リューディアは首をかしげた。そうよ、とエリサはうなずく。


「近くの、湖の所までピクニックに行こうと思うの。リューリもどうかしら」


 近くの湖と言えば王都の外れにあるシロラ湖のことだろう。周囲は森に囲まれており、湖のまわりだけ花畑となっている。ピクニックにはもってこいの場所である。


「……いいけど、また唐突だね」

「いいじゃない。たまには。天気もいいし」

「確かに、私は外に出るのは好きだけど。乗馬ができるともっといいんだけどね」

「ダメよ。参加するならドレスでの参加だから」


 エリサはピッと人差し指をリューディアの方に向けてそう命令した。リューディアは笑って「わかったよ」と応える。一口お茶を飲んだミルヴァが口を開いた。


「きっと、リューリのそう言う態度がモテる原因よね」

「そうね。わたくしたちの要望を苦笑しつつも最終的に呑んでくれるところとかね」


 エリサも同意してミルヴァとうなずき合う。リューディア自身も異性より同性にモテる自覚はあるので、否定しようもなかった。


「まあ、今更かわいらしくなれ、と言われても困るけど」

「まあいいんじゃない? それでこそリューリだしさぁ」


 ミルヴァは両手でカップを持ち、けらけらと笑う。王女にあるまじきふるまいであるが、ここにはリューディアとエリサしかいないので、見逃してやろう。


「どうせピクニックに行くのなら、マリィも連れて行こうかしら。たまには外に出たほうがいいもの、あの子」


 ミルヴァが王立魔法研究所のある方向を見て眼を細めながら言った。リューディアもその意見には同意だ。


「それはいいかもね。私たちが一緒なら、ピクニックくらいは行くだろう。たぶん」


 人見知りのマリアンネを連れ出すのは大変かもしれないが、一緒に行こう、と言ったらほいほいついてくる気もする。魔王ユハニも、止めはしないだろう。むしろ本人がついてくる可能性もある。それはそれで恐ろしいからやめてほしいが。


「とりあえず、話を通しておくわ。わたくしが行くにしても、あなたが一緒なら許可が下りやすいし」


 エリサがにっこり笑ってそう言った。リューディアは悟る。


「もしかして、私、そのために呼ばれた?」


 『カルナ王国の最終兵器その二』の異名をとるリューディアは、護衛としても信頼されている。もちろん、彼女自身が公爵令嬢であるので普通の護衛はつくが、リューディアが1人いるかいないかでかなり戦力が違う。



 本当に、どうして彼女は男に生まれなかったのだろうか。



「まあ、否定しないわ」


 エリサはやはり笑ってうなずく。どうやら、リューディアが一緒だと、エリサの外出許可が取りやすくなるらしかった。


「……まあ、好きにしなよ」


 苦笑を浮かべて、リューディアはあきらめてそう言った。
















 リューディアがエリサから話を聞いた時点では、そのピクニックは小規模の数名で行くものだった。しかし、ふたを開けてみれば人数は増え、団体旅行のような様相を醸し出すこととなった。なぜなら、王太子アウリスがピクニックに同行するため、『ぜひ同行したい』という令嬢が多く現れたのだ。

 そのため、そのピクニックは公式行事となってしまった。初めは王女たちのお遊びだったのに、どういうこと。

 人数が増えたためか、同行するマリアンネが出発時点ですでに半泣きだった。無理やり連れて行くのは可愛そうな気もしたが、こうでもしないと彼女は外に出ないので連れて行く。上官であるユハニにも快く送り出してもらったので、戻るに戻れないというのもあるだろう。


「大丈夫大丈夫」


 リューディアは苦笑してマリアンネの背中をたたいた。マリアンネは半泣きながらもリューディア、セラフィーナと共に馬車に乗り込んだ。


「お久しぶりですわね、マリィ!」


 セラフィーナが元気にあいさつをすると、マリアンネは輝かんばかりの笑みを浮かべる彼女を見て少し目を細めた。リューディアは少しマリアンネの気持ちがわかる。超絶美少女セラフィーナの笑顔は少しまぶしい。


「……うん。お久しぶり。今日も見てると浄化されそうな笑顔ね」


 彼女は魔術師特有のよくわからないたとえをした。リューディアもセラフィーナも、マリアンネのこういう発言にはつっこまないようにしている。


 マリアンネは13歳。セラフィーナは15歳。いとこ同士で年も近いので、2人は割と仲がいい。まあ、基本的にセラフィーナがしゃべっているだけだ。


「セラ、久しぶりだからと言ってあまりマリィを困らせないようにね」

「わかっていますわ」


 ぷくっと頬を膨らませる仕草もかわいらしい。セラフィーナの向かい側、進行方向に背を向けて座ったリューディアは苦笑を浮かべた。


 このピクニックは一度王宮に集合してからの出発となる。というわけで、現在、王宮前には5台の馬車が止まっており、20名ほどのピクニック参加者(男性貴族含む)と、10名弱の護衛騎士が待機している。ちなみに、王太子アウリスはミルヴァやエリサと馬車に同乗しているが、同じくピクニックに参加するリクハルドとイェレミアスは馬に乗っている。


 リューディアは馬車の窓からちらりとイェレミアスを見た。



 ……うん。大丈夫。あきらめられた。



 リューディアはそう確認して少しだけ唇の端を吊り上げた。馬車が出発する。馬車はゆっくりと進むが、そうかからずに目的地に着くだろう。

 癖もあり、リューディアは馬車の窓から周囲を警戒するように鋭い視線を外に向けた。セラフィーナが「怖いですわよ、お姉様」とくすくす笑って指摘してきた。


「ん、いや。どうしても気になってしまってね」


 何しろ、王族が3人も一緒なのだ。ちなみに、リューディアは公爵令嬢である自分も、犯罪者にとって価値があるのだ、という自覚はない。何しろ、『カルナ王国の最終兵器その二』なのだから。

 セラフィーナは楽しげにあれこれ話しかけてくるが、リューディアもマリアンネも相槌を打つだけだ。リューディアは必要とあればしゃべるが、マリアンネは本当に寡黙なのである。時折ぼーっと窓の外を見ている辺り、ユハニに護衛を命じられていると見た。魔術師という面だけ見れば、マリアンネは優秀だから。

 つまり、リューディアという剣士とマリアンネという魔術師が同乗しているこの馬車は無駄に安全なのである。


「そう言えばお姉様、家を出る前に剣を持っていませんでした?」

「ああ。持ってるよ」


 ほら、とスカートを少したくし上げて見せる。スカートの下には短めの剣が鞘ごと隠してあった。剣をしこむと、座るときに少し不自然な感じになるのだが仕方がない。


「隠してあるのですね。お姉様が剣を持っているのなら、何があっても安心ですね」


 セラフィーナが手をたたいて喜ぶ。リューディアも大概シスコンであるが、セラフィーナも大概シスコンである。


「マリィもいるしね。でも、セラのことはイェレが守ってくれるだろう?」


 あの夜会の後、セラフィーナは嬉しそうにイェレミアスとお付き合いすることになった、と報告してきた。何でも、お姉様であるリューディアに一番に報告したかったらしい。その心意気はうれしいが、相手がイェレミアスだったので内心ちょっと複雑だった。

 まあ、今ではすっぱり割り切っているが。二人はお似合いであるし、イェレミアスの姉になるのも悪くない。むしろ、今までとそんなに状況的には変わらない気がするけど。


「……そうだと、うれしいです」


 頬に手を当ててセラフィーナがうっとりと言った。リューディアはそんな妹を見て眼を細めて微笑んだ。


「……セラは、イェレミアス様と恋人同士になったの?」


 窓の外を見ていたマリアンネが、こちらに視線を向けておっとりと尋ねた。セラフィーナが「ええ」と満面の笑みでうなずくと、マリアンネは「そうなの」と言って再び窓の外を見た。そんなマリアンネに、セラフィーナは身を乗り出して尋ねた。


「ねえ。マリィは好きな人とかいないの? ユハニ様は?」

「ユハニ様はただの上官」


 おっとりしているマリアンネがすっぱりと言い切った。これはユハニに希望はないかもしれない。マリアンネは彼を本当に上官としか思っていない様子。


 さんざん彼にマリアンネと恋人同士に見えると言われたリューディアだが、彼女から見るとマリアンネとユハニの方がよほど恋人同士に見えるのだ。どう見ても、ユハニはマリアンネを特別扱いしている。彼女がほかの研究者たちに比べて幼いからかもしれないが。


 そんなくだらないことを話している間に、馬車は目的地へと到着した。


















ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


潔いまでに出てこない王太子! 頑張れ!


裏設定ですが、今回出てきた第1王女エリサは、『背中合わせの女王』に出てきたスヴェトラーナ帝国に嫁ぎます。皇帝の正妻です。エリサが産んだ子が『背中合わせの女王』の時点でのスヴェトラーナ皇帝と主人公・ウルシュラの母になります。つまり、エリサはウルシュラの母方の祖母です。

どうでもいい裏設定でした。

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