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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
蒼緋
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久しぶりの竜魔法訓練

 先ほどと同じく、まず強化魔法を発動させる。


 竜魔法の同時展開、例えば強化魔法を使いつつも攻撃魔法を発動することなどは、契約竜の魔力量と個人の技量に依存するそうだ。

 まず2つの魔法を同時に展開できるだけの魔力を竜が送り、竜契約者が受け取らなければならないし、そもそも単純に2つの魔法をコントロールすることは訓練を積んでもなかなかできることではない、らしい。


 俺の場合は特殊で、いつのまにか契約していた竜、シルバはとんでもないレア且つ強力らしいというのと、マテリア王国屈指の実力者であるティオに直々に手ほどきしてもらったこと、死の危険を伴う戦闘を乗り越えてきたことによってなんとか同時展開ができるようになったのだと考えられる。あ、それと【竜の爪痕】が2つあるのも関係してるかも。


 出会ってきた竜契約者たちは実力者ばかりで全員できてたけどね。パレードのときの一般兵はできていなかったような気もするが、あのときは余裕がなく記憶が定かではない。


「さあ、はじめるわよ。どれだけ竜魔法の腕が上がったか見てあげる」

「きっと驚くぞ。ティオは剣術よりも魔法のが得意だったよな? でも関係ないな。さっきと同じく互角にまで持ち込んでみせる」

「随分な自信ね。相棒としても頼もしい限りだわ。実は口だけでした、なんてオチで、私をガッカリさせないでね」

「やってみればわかるさ」

「「顕現せよーー」」


 さあ、ティオは何の魔法を使う?


 性格上、防御魔法はまずない。


 幻惑系の魔法も使ってるところを見たことがないし、やはり攻撃魔法だろうか。

 なら、発動から相手に届くのが最も速いこの魔法だ。先手必勝!


「ーー銀光のプラータ・ウェイブ!」


 地面を光輝く衝撃波が走る。


 ティオはそれを見るまもなく地面を蹴っていた。ほぼ、垂直に。


 俺の魔法は命中する寸前にあっけなく避けられてしまった。


 今の行動を見ると、俺が何をしようが関係なく跳躍するつもりだったようだ。

 じゃあ、ティオは何の魔法を発動させたんだ? 魔法陣は出現していたし、展開しているはずなのだが……。


 俺の疑問はすぐに解決された。


 跳躍した後、重力に引っ張られて落ちるはずのティオは、空中を蹴り右斜め上へと進む。


「ーー飛翔跳躍エアロ・リープ


 よく見ると足場に小さな竜巻のようなものが一時的に出現していることがわかった。

 ティオのやつ、こんな魔法まで使えるのかよ……!

 驚きで数瞬かたまってしまった俺など気にせず、ティオは次の魔法の詠唱に入っている。


 まずい! このままじゃ負ける!


 空中を右、左、上、下と縦横無尽に駆けるティオを捕捉するのは難しい。ここは様子見とあの魔法が終わるまでの時間稼ぎで防御&反撃魔法を発動させよう。


「ーー銀鏡のイージス・ミラー


 俺の目の前に銀色の光で構築された大きな盾が現れる。


 これで一安心だ。ティオは強力な攻撃魔法を数多く使えるが、この魔法はかつてギルのアポロン・レイさせしのいでみせた。そう簡単には破られはしないはずだ。


「ーー風刃ラファーガ!」


 魔法が発動した。何が飛んでくる!?


 しかし、何も飛んではこなかった。俺の予想はまたしても砕かれてしまった。


 ティオは手刀から緑色の光で構成されたカタールのようなものを出現させたのだ。


 近距離攻撃魔法。てっきり遠距離系の魔法ばかりかと思っていたが、まさかこんな魔法も使えるなんて。


 ティオは上空から一直線に突きを放ってくる。


 盾を真上に移動させてこれを防いだが、もちろん跳ね返すことはできない。これではただの盾と同じだ。


 空中に浮遊しているこの盾を移動させることはできるが、このスピードでは追いつけない可能性が高い。

 攻めに転じるしかない。攻撃こそ最大の防御だ。


「顕現せよーー」

「そうは、させないわよ!」


 再び空中を蹴り、左から回り込まれる。


 強化魔法、特殊魔法、攻撃魔法の3つ同時展開。あのエアロ・リープとかいう扱いの難しそうな特殊魔法、まだ持続しているというのか。


 即座にイージス・ミラーを消し、強化魔法にのみ集中する。

 おかげで1撃目は辛うじて回避することができた。2撃目の前に1番使い慣れている、近・中距離用攻撃魔法、銀竜剣シルベリオ・ソードを発動させなければ。


「ーー銀竜」

「ジ・エンド、ね」


 銀色の剣が形成されかけていたところで、ティオの手刀が俺の喉元に突きつけられる。


 間に合わなかった、か。


 互いに魔法を解き、木陰に移動し一息つく。


「くっそ、あとちょっとで勝てたんだけどなぁ」

「その少しの差は大きいわよ~。私だってそう簡単に追いつかれちゃたまんないし。……でも、素直に感心したし、驚いた。きっと以前のソーマならもっと早くやられてたはずだから」

「確かに。1週間前だったら瞬殺だっただろうなぁ」

「それだけ成長したってことよ。しかも、おそろしいほど短期間で。契約竜の供給魔力が多いっていうのもあるけど、きっと死線をくぐってきたせいね……あと、もしかして私に隠れて自己鍛錬とかしてる?」


 うっ、鋭いな。


「べ、別にそんなことしてないよ。いやー、やっぱり我が契約竜はすごいなあははー」


 隠してるわけじゃなかったんだけど、ティオの睡眠時間を減らすのはマズいし、日中はこうやって訓練につき合ってもらってるしで、申し訳なくなってしまうから何となく言ってないだけで。


「ふーん。ま、それはいいわ。さっき、私の攻撃が数秒遅れてたら、多分負けてた。認めるのは癪だけど。考えてみれば、1対1であのカイルに勝ったのよね。供給魔力量だけ見ると私より上だし、あとは使い方しだいかな」

「そこは実戦経験を積むしかないってことか」

「そうね。あとなるべく多く魔法を使うことが重要かしら。グレン帝国に着くまでの間、魔法訓練を増やしましょう。それと、他人に見つかりにくい場所、安全が確保された場所を見つけたら、竜人化しての訓練もするわよ。反動で1日動けない間はメイルに見張ってもらえばいいし」


 その言葉に俺は度肝を抜かれてしまった。竜人化の訓練なんて考えもしなかったな。


「りゅ、竜人化しての訓練? 危なくないか?」

「確かに1歩間違えればどちらかが深手を負うでしょう。でも、ソーマにとって必要なことなの。カイルとの力量差を埋めたのは、きっと竜人化の際の尋常じゃない魔力供給のおかげだから」

「思い出してみると、俺もあいつも竜人化して戦ったとき、両手の【竜の爪痕】から常時大量の魔力が送られてきて、攻撃を見切ることができたし、魔法の威力も半端じゃなかったな」

「やっぱりね。竜契約者になろうとする人間は、より魔力が大きな竜と契約したがる。供給される魔力量が多ければそれだけ強力な魔法を使えたり、少ない者より多くの魔法を使えるからなんだけど、魔力量で最も差がつくのは竜人化した時、っていう理由もあるわ」


 まっ、竜人化できるのは竜契約者の中でも限られてるんだけど、と最後につぶやきつつカイルに勝てた理由を説明してくれた。

 いくら魔力量が多くても人間が使える範囲は限られているし、技術でカバーできる。でも、その人間が使える範囲をぶち壊す竜人化の場合は魔力量の差が如実にでる、ってことか。


「わかった。その時はよろしく頼む」

「私の方こそ。本来は竜人化の訓練は1人でひっそりとするものだから、私も慣れてないの」


 さっき、メイルに見張ってもらいながらって言ってたな。おそらく竜人化の訓練は、こういう大きな都の特別な訓練場か、旅の途中なら見つかりにくい安全な場所で、反動で動けない間は契約竜に守ってもらいながらするものなのだろう。


 俺は契約竜が近くにいないから、1人ではできない。


 あの村で話して以来、シルバとは交信できていないのだ。


 今日の夜にもまた【竜の爪痕】を辿って話そうと試みるつもりだが、望みは薄いだろう。


「じゃああとちょっとだけ竜魔法訓練してから帰りましょうか。明日の朝にはここを発つから早めに切り上げるわよ」

「了解でありんす」

「何その変な言葉」

「変とは何だ! 江戸時代の人に謝れ!」

「江戸時代? あーまたソーマの世界の話ね。もうそれはいいから。時間ないから」

「はい、ごめんなさい」


 こうやって突発的にふざけたくなるのは俺の悪い癖だ。治したいけど治せそうにない。


 さってと、今度こそ魔法でティオに勝つぞ!


 そう意気込んだせいか、さっきより早く決着がつきました。テへ。


 ってこんなことじゃダメだ。もっと集中して訓練しないと。時間だって限られてるし、これから人間とは思えないほど強いアレク、グレン皇帝と戦う可能性だってある。


 なにより、皇帝に会う前にはきっとギルと戦うことになるだろうから。

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