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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
蒼緋
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交渉の結果は

 同時に互いの名を呼ぶ。


 どうしてここにユキトがいるんだ!?


 謁見の間にいたということは、王と話をしていた……?


「この国に来ればいつかは会えると思っていたが、まさかこんなに早く会えるなんて!」


 瞳を潤ませたユキトが飛びついてくる。


「うお!?」


 近い近い近い! なんか良い匂いするし、豊かな胸が押しつけられてっ!

 テンパっている俺をよそに抱きしめる力を強くしていくユキト。

 くっ、このままだとなんか色々ヤバい……!


 何かと戦っている俺の目に、ユキトのつけていた髪飾りが映る。

 その瞬間、ユキトとの思い出、村での思い出がよみがえってきた。

 楽しかった、悲しかった思いが波のようにやってくる。

 そしてそれが過ぎ去った後には懐かしさだけが残った。


 しばらく無言で抱き合い、どちらともなく離れる。


「と、とりあえず、こっちで話さないか?」

「そ、そうだな」


 ほどよく沈み込むソファに、向かい合う形で座る。

 ユキトもさっき自分のしたことに照れているのか、やや顔が赤い。

 だが、壁際にかけてある俺の外套を見た途端、どこか遠くを見るかのような目になる。きっと俺もさっきあんな目をしてたんだろうな。


「久しぶり、というほどでもないか。1週間ちょいぶりくらいだもんな。元気にしてたか?」

「そうだな。私もまさかこんなに早く再会できるとは思ってもみなかった。体調の方は問題ない。自己コントロールはできている」


 相変わらずすぎてなんか安心したぞ。


「そりゃよかった。あの後、仲間と合流することはできたのか?」

「ああ。仲間たちもあそこから近い位置に散らばっていてな。数日とたたず合流できたよ」

「それで、なんでまたこんな場所に」


 まさかとは思うが、ユキトも俺と同じ考えで王に謁見したのかもしれない。


「交渉に来たんだ。仲間たちと話し合った結果、マテリア王国と協力してあの皇帝を倒すしかない、という結論に落ち着いた。国王とは幼い頃に面識があってな。謁見を許されたのは私だけだった」


 やはり、そうだったのか。利害が一致してるからそういう結論になるのは必然といえば必然だが、マテリア国王はどんな答えをだしたのだろう。


「それで、交渉の結果は?」

「協力関係を結ぶことに成功したよ。ただ、勝利の暁にはグレン王国の領土を一部譲渡する、戦争時にはマテリア王国軍の傘下に入り、前線で戦うという条件付きで、だ」


 それは良い条件、なのだろうか。


「予想外の結果だった。もっと厳しい条件、最悪の場合捕らえられていたかもしれなかったというのに。マテリア国王も余裕がなかったのだろう。まさか、あの皇帝の契約竜が、伝説の邪竜だったとは」

「邪竜……」


 何だろう、記憶の隅っこに引っかかる。邪竜。夢、シルバ……?


「ソーマは邪竜のことを知らないか。では手短に説明しよう。その昔、どの種族にも属さない竜がいた。その体はどの竜よりも巨大で禍々しく、多くの竜や竜契約者を従えて大陸中を蹂躙したという。人々はその竜を邪竜と呼んだ」


 そんなとんでもない竜が存在していたというのか。


「そんな時、邪竜を封印した者が現れた。それが英雄マテリアと、豪傑グレン。名前からわかるように、初代マテリア国王とグレン国王だ。当時、2国は強い友好関係で結ばれていた。2人はまるで本当の兄弟のようだったと伝承にも残っている」


 昔は2国の仲は良かったのか。協力して邪竜を倒すほどに。


「2人とも当時は大陸最強の竜契約者だったが、それでも封印するのが精一杯だったらしい。そんな邪竜の封印を解き、あまつさえ契約までしてみせるとは……一体どうやってそんなことができたのか」


 現グレン皇帝が、1日で革命を成し遂げたのは、邪竜のおかげだったのか。


「だからこそこんな好条件で関係を結べたのだけど。伝説の邪竜相手にどこまで戦えるか……いや、私は必ずグレン王国を皇帝の手から取り戻さなければならない。亡き父のためにも。そのためなら喜んで前線で戦うし、領土の一部も差しだそう」

「俺もおそらく、戦争に参加することになる。ユキトと一緒に戦えるんだ。敵同士にならなくてよかった」

「君がいてくれるのなら、戦力的にも、精神的にも非常に心強い。……話は変わるが、謁見の間からでた時すれ違った、金髪の女性が、ソーマの相棒のティオという人物なのか?」

「そうだけど」

「ふ~ん。男っぽい私とは違って、とても可愛らしい女性だったな~」


 あれ、気のせいだろうか。ジト目で見られているような。


「俺から見たらティオもユキトもとんでもなく可愛い女の子だけどな。こうやって話てるのが信じられないくらい」

「! き、君ってやつは……この女たらしがあああぁぁぁあああ!」

「なぜに!?」


 あ、あぶねえ。なんてスピードの掌打なんだ。当たってたらひとたまりもないぞ。


「あぶねえだろうが!」

「わざと外したのだからいいだろう。それじゃあ私はこのあたりで失礼するよ。話たいことはもっとあるんだが、いかんせん報告を待ちわびている仲間がいるものでな。一刻も早く知らせてやりたい」

「そうだよな。引き留めて悪かった」

「いや、再会できて嬉しかったよ。それだけじゃなくて一緒に戦えるなんて。私たちは国王から貸し切りの宿を与えられているから、また会いに来てくれ。場所は中央広場にある3階建ての宿だ。では、後日」

「俺もこうやって再会できて、一緒に戦えるようになって、心の底から良かったと思ってる。絶対、会いに行くからな!」


 そう言って、ユキトは部屋からでていった。


 これで懸案事項の1つは解決した。きっと今頃ティオも国王と話して、すでにユキトたちと協力関係を結んでいると判明し驚いているだろう。


 あとは、クリスのことだけだ。

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