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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
蒼緋
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音波とティオ

「なあ、」


 話を切り出そうとした時、それにかぶせるようにしてティオが、


「今日はここまでにしましょう。昼過ぎにここに来たのにもう夕方だもの。特にソーマ、あんた、ヒドい顔してる。相当疲れてるのね。今日は早めに休みましょう」

 と言った。


 確かにここまでトばして来たし、3日間野宿していてよく眠れなかった。そのせいかもしれない。


 上手く働いてない頭で話すのはよくないか。良い意見もだせなくなるしお言葉に甘えて今日は休ませてもらうとしよう。俺からの話は明日だな。


 そのまま夜ご飯も店で食べ、宿に向かう。


 道中でも音波はがいきなり俺の背中に飛びかかってきて、それを見たティオがぎゃーぎゃー言ったりして騒がしかった。


 そんな中、背中にはりついていた音波が急に降りて、【竜の爪痕】に向かって何事か話し始めた。

 自分の契約竜と話しているのだろう。深刻そうな雰囲気から察するに、重要な話なのかもしれない。


「……うん。わかった。すぐ行く」

「音波、何かあったのか?」

「ごめん、急用ができた」

「いつ戻ってくるんだ?」

「ちょっと、長くなりそう、かも。私もソーマとティオに付いていこうと思ってたけど、無理になった。申し訳ない」


 音波の助力が望めなくなったってことか。残念だが、組織、両親からの任務なら仕方ない。


「その用とやらは、危険なのか?」

「……私もティオほどではないにしろ強いから大丈夫。それに、ソーマのお嫁さんになるまで死ねない」

「妙に説得感あるな…無事に、帰ってくるんだぞ」

「もちろん」


 また音波と会えなくなる。しかも危険な任務に赴くというのだ。

 心配でないはずがない。けど、俺が付いていっても足手まといになるだけだろうし、さっきティオに付いていくって決めたから、手伝うこともできない。


「お互い生き残って、一緒に元の世界に帰ろう」

「うん」


 そうだ。やるべきことをやって、笑って日本に帰るんだ。

 俺からはもう何も言えない。

 音波は俺から視線を外し、今度はティオへ向ける。


「……ティオ、一緒に行けなくてごめん。任務が片づいたら必ず駆けつける。あと、私を助けてくれて、ありがとう」

「気にする必要はないわ。元々2人、あるいは1人だとしてもクリスを救いに行ってたから。それと、協力した件についても…そうね、お礼に今度お茶でもおごってもらおうかしらね。だから、生きてまた会いましょう」

「…ありがとう」


 2人は固く握手を交わす。

 俺がユキトと過ごしていた間、音波とティオもまた、同じ時間を共有していたのだろう。短い期間とはいえ背中を預け合った戦友同士。ただの友達とは違う何かを感じ合っているはずだ。


「じゃあ、そろそろ行く。最後にソーマ、無事に戻ったらご褒美くれる?」

「俺ができる範囲なら」

「じゃあ、ちゅーで」

「はあ!?」

「ご褒美がないと無事に帰れないかもしれない。そうなったらソーマのせい」


 なんて卑怯な…! そんなこと言われたら断れないじゃないか! なんとか妥協案を見つけなければ。


「ぐっ…ほっぺかおでこなら、なんとか」

「少々不満だけどそれで我慢する。おでこで」


 ティオも「まあそれくらいならいいでしょう」とか言ってる。なぜにそんな上からなのか。


『ソーマ、音波ちゃんに、「交差するクロス・エッジ」の名前の由来を聞いてみてくれないかしら』

「!? ど、どうしたいきなり」

『おねがい』


 声音が普段のおちゃらけたものではなく真剣なものだったので、今は理由を問わず聞いてみることにした。


「そ、そうだ音波。あのさ、そのクロス・エッジとかいうやつ、まさかそれが本名なわけないよな? そう呼ばれてるのはなぜなんだ?」

「暗殺対象者の首に必ず交差した切り傷をつけるからそう呼ばれている」

「なるほどね。サンキュ」

「? じゃ、今度こそ行くね。……2人とも、健闘を祈る。顕現せよ。ーー契約に従い其の力を我が身にーー隠影ハイド・スキア


 音波は、以前も見たことのある、光学迷彩のように自身を透明化させる魔法を使って姿を消した。


『……聞いてくれてありがとう。詳しいことはまた今度話すわ……』


 そう言ったきり黙り込んでしまった。気になるが、理由を話してくれるらしいしいつものように気長に待つとしよう。


 結局、また俺とティオの2人になってしまった。なんだか懐かしい感じだ。


 音波と別れた後、ティオと時折軽い雑談をしながら歩き、ほどなくして宿に到着した。 

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