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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
蒼緋
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今後の方針

『天使の微笑み』に到着した俺たちは、あのバカでかい店主に歓迎されて席に着く。

 この店は幸いにも被害に遭っていなかった。町のはずれにあったおかげだ。

 町の中心部はギルとカイルによって半壊状態になっている。修復作業は毎日行われているようで、徐々にだが元の景観に戻りつつあるようだ。


「ティオ、聞かせてくれないか。あの後、何があったのかを」


 ティオはテーブルに肘をつき手を組んで、顎をのせたポーズでぽつぽつと話し始める。


「ソーマが落下したとき、助けに行こうとしたんだけどあいつらに邪魔されてね。さすがに竜人化した2人を相手取るのは無理があった。ギルもカイルもグレン帝国ではトップクラスの実力者だから逃げ切れたこと自体、運が良かったんだけど」


 運が良かった、というよりティオもまたマテリア王国のトップクラスの実力者だったからだろう。


「そう、私は逃げたの。…妹を、救えなかったの」


 目を伏せ、声を震わせる。

 そうか、やっぱり、妹さんを取り戻せなかったのか。


「ティオは悪くない。自分の命を犠牲にして助けられたとしても、妹さんは喜ばないよ。あいつらにとってはティオも捕獲対象なんだし、2人とも捕まったらそれこそ皇帝の思うつぼだ。それに人質を殺すとは限らない。グレン帝国まで妹さんを取り戻しにいこう。俺も協力するよ」


 するすると、そんな言葉が出てくる。


 後から、無謀なことを言っているのに気付いた。大国の本拠地に乗り込んで人質を奪還するなんて…しかも、1日でその大国を乗っ取ったバケモノみたいな皇帝の元から。


 でも、不思議とできるような気がしてくる。ティオと一緒だから、かな。


「そう言ってもらえると救われるけど、それでも妹を助けられなかったのは事実だわ。…ふふふ、ソーマにそう言われると本当にできそうな気がする。さすがに2人じゃ無理だけど」


 ちょっとだけ笑ってくれた。それだけで嬉しくなる。 


 …音波。真面目な話をしてるんだから小突いてくるんじゃない。


「だからね…お父様に、会いに行くことにしたわ。妹の命がかかってるんですもの。嫌だとか言ってられない。だから、ソーマも付いてきて、くれないかしら?」


 ああもうだから、そんな不安そうな顔するなって。そんなに信用されてないのかよ。いつもなら自信満々に、つべこべ言わず付いてきなさい! くらい言うのに。


 それだけ精神的に参っちゃってるってことか。なら、相棒である俺がフォローしてやらないとな。


 安心させるように身を乗り出して、しっかりと目を見て宣言する。


「ティオ、俺はお前の相棒だ。地獄の底にだって付いていってやる。だからさ、そんな弱気になるなよ。らしくないぞ!」


 ティオは、突然そんなこと言われて驚いたような顔になるが、ゆっくりと、いつもの勝ち気そうな表情になっていく。


「らしくない、か…確かに、ちょっと弱気になっていたのかもしれないわね。こんなことじゃできることもできなくなる。よし! ソーマ!」

「おう!」

「私に付いてきて、妹を、クリスを助けるために協力しなさい!」

「もちろんだ!」


 自然に握手と笑みを交わす。


 これだよこれ。やっといつものティオに戻った。


 塞ぎ込んでいていても何もできない。時には家族や他人を頼ってでも元気をださなきゃな。


 それにしても、店内に人がいなくてよかった。こんなの恥ずかしくて人前じゃできないからな。店主には悪いけどこの店が不人気でよかった。沢山注文してあげよう。


 まあさっきから音波が白い目で見てくるんだけどね。口出ししてこないのはありがたいけど。


「そうだ。王女がさらわれたっていうのに国王は動いてないのか?」


 自分の娘がさらわれたのだ。何かしらのアクションは起こしているはずだ。


「動いてるでしょうね。でも私たちとは目的が違うはず。国を大きくすることしか考えてないような人だから、今頃戦争の準備をしているかもしれない。今回の事件を口実にしてね」


 そんな…。人を道具としか思ってないのか、国王は。


「だから私はお父様と、妹を助けるために少しでも援助を受けられないか話をしにいくの。絶対協力を取り付けてみせる」

「ティオのお父さんに会いに行くってことは、この国の王様に会いに行くってことか…そういえば、ティオって元お姫様だったんだよな。何で話してくれなかったんだよ」


 親と折り合いが付かなくて家を飛び出したって言ってたけど、マテリア国王のことだったんだな。


「隠すつもりは無かったんだけど…そもそもあんまり好きじゃないのよ、家も、王族も、貴族も。お兄様とクリスは好きだけど」 


 ティオと出会って間もない頃、冗談混じりにお姫様、なんて呼んだら怒ったのはそのせいか。


「じゃあもしかして、旅の資金も」

「ええ。家を出るとき、今まで貯めていたお小遣いを全部持ってきたの」


 だからお金のことは心配ない、なんて言えたんだな。かねてからの疑問が解消された。


 まだ肝心の、ティオと音波が知り合った経緯は聞けてないけど、今後の方針が決まってよかった。


 国王に協力してもらえるよう話をし、ティオの妹、クリスをグレン帝国から奪還する。

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