対談③
「俺のこと、恨んでないのか?」
「殺し合いに善悪などない。俺が弱かったから死んだ。それだけだ」
「やっぱ達観してるんだよなぁ」
「もうそろそろ主が怪しむ頃だ。早く去れ。こんな与太話など切り上げて」
「そうするわ。話に付き合ってくれてありがとな」
「次に会うときは容赦はしない。肝に銘じておけ」
「分かってるっちゅーの。でもな、俺、諦めてないからな。お前と分かり合える日が来ることを。お前とアル、ミーアの三人が笑い合うところ、心の底から見たいって思ってる」
それが難しく、ほぼ実現不可能なことは分かっている。ギルはグレン王国の人間を殺し過ぎた。アルやミーアはグレン王国陣営で、仲間をギルに殺されている。いくら血の繋がったきょうだいとは言え許せるものではないだろう。
俺自身も、ギルにどんな感情を抱いているのかいまいち把握できていない。ギルを殺す直前のやりとりや、つい今しがたの会話で更に分からなくなる。
やっぱり俺、遺伝子レベルでグレンの血族に弱いのかもしれん。
「お前自身もそれは叶わぬことだと分かっておろうに。何より俺自身が望んでいない以上、可能性はゼロだ。早く行け」
「なあ、本当に俺一人で戦争止められないかな?」
「無理だ。素直に仲間に頼れ。そして何もかも救うのは諦めろ。一つのものを救うためには一〇を捨てると知れ」
「……噛みしめてるよ、今、その言葉を。じゃあ時間ヤバそうだからそろそろ行くわ」
「疾く去れ。俺の視界に入らぬ場所まで」
「うん。色々ありがと。助かった」
ギルには見えてないだろうけど、きちんと一礼してからその場を去る。
あー、俺何してるんだろ。結局王城内に潜入できないまま帰ってしまった。竜神化でゴリ押しもできなくもなかったが、ギルの忠告には従っておいた方がいいと本能が告げた。
目を開け活動を再開したギルに捕捉されないよう、来たときより早く戻る。ここまで来たときに罠の有無を確認してきたから同じ道を戻るだけだ。
壁を登って、中層に到着。
すぐさま腕に何かが触れてくる。どうやって察知したのか。音波だ。