対談②
「何のつもりかと俺に問うがな、少年こそ何のつもりだ。俺は今こんなにも無防備なんだぞ。首を落とせばいいだろう」
「……なるべく殺したくない。特にギルは二回目になっちまう。俺、ずっと残ってるんだぞ。お前を刺したときの感触」
「そんなものは忘れろ。でなければ生き残れんぞ。強大な力を持った貴様はこの世界で生きる限り、戦火から逃れられないのだから」
「やっぱりそうなるかなぁ。戦いたくないんだけどなぁ」
「甘ったれたことを抜かすな阿呆。現に今、貴様は自ら戦いの火ぶたを切って落とそうとしているではないか」
「いや、潜入だけのつもりだった。何か情報が得たかった」
「情報を得るのも戦争で勝つためだろう」
「ううん。俺一人で終わらせようと。そもそも戦争を起こしたくなかった」
ギルはしばし黙った後、く、っくっくと喉の奥で笑い始めた。
その笑い方、たまにユキトがするんだよな。血のつながりを感じざるを得ない。
「本物のバカだな。いくら伝説の竜と契約しているといっても貴様はたった一人。一人で国家を相手どろうなど無理がある。ましてや謎の魔法を使う相手だぞ」
「うん。今それ実感してるわ。一人で戦争を止める、もう誰も死なせたくない、ってイキがってたのがめっちゃ恥ずかしくなってきた」
「それが若さだ。気にするな」
「なあ、俺に戦争止めさせてくれない? そのために協力してくれない?」
「虫が良いぞ少年。何度も言わなければ分からんのか。俺は敵だ」
「じゃあギルの目的を教えてくれよ。何のために動いてるんだ?」
「新たな主に仕え、任務を全うする。それだけだ。なんだ、俺を追いやったグレンに復讐するため、と答えて欲しかったのか?」
そういう言い方をするってことは、少なくともグレン王国の復讐のため動いているわけじゃなさそうだ。それが分かっただけでも個人的には収穫だ。
「うん。ギルがどうしたいのか聞きたかった。気持ちの問題だ」
「恵まれたやつだ。個々の気持ちなど関係ない。国のため動く。それだけだ」
「すまんな。俺、別の世界から来てるから価値観が違うんだよ」
「ほう。通りで。少年には言葉にしがたいズレを感じていたが、そういうことか」
「信じるのか?」
「まあそういうこともあるだろう」
「達観してるなぁ」
「一度死んでいるしな。お前に殺された。俺の全身全霊を持ってしても勝てなかった」
恨み言をぶつけるようなトーンではなく、ただ事実を述べているだけの単調さ。