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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
翠銀
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旅に出たい

 王城と城下町を囲う壁から離れてるとはいえ、黒霧はそこそこに濃い。


「寝づらい」

「だな。動かずただこの黒霧に当てられてると不快感が湧いてくるんだよなぁ」


 何だろうなこれ。ヒルとかに知らない内に血を吸われてた時の一〇倍くらいの不快感だ。

 そびえる壁を見つめる。なんだか背中がぞわぞわする。

 あの中には一体何があるのか。明日、判明する。

 

「気を紛らわせるためにおしゃべりしたい」

「いいぞ。何話す?」

「元の世界の話で。色々解決して戻ったらもう新学期はじまってるね」

「冬休みって夏休みに比べて短すぎるんだよ。あ、ていうか、両親への連絡どうしよ」

「私の両親が何とかソーマ不在の理由を考えて伝えてくれている」 

「ありがとうおじさんおばさん。そういえばあの二人に久しく会ってないな」

「ソーマが関わってきた邪竜復活事件や今回のマテリア王国鎖国事件、その他別大陸での問題対処とかで休んでる暇がないらしい」

「あー、他の大陸とかもあんのか。もっと色んな国を旅してみてもいいかもしれないな」

「私はまだこの大陸から出たことないから分からないけど、他の大陸では水竜の存在が確認されているらしい」

「へぇ。もっと色んな空想上の生物がいそうだな。俄然興味が湧いてきた」


 この世界でゆっくりできる時間が中々なくて、この世界に関する知識ほとんど吸収できてないんだよな。何度も夢見たファンタジー世界そのものなのに。

 早く平穏を手に入れたい。ティオとゆっくり過ごしたい。

 そうだ。ティオが記憶を取り戻して、マテリア王国の問題も解決したら他の大陸へ旅しようと誘おう。ティオが即位するまで何年の猶予があるか分からないけど、公務の引継ぎとか教わらなきゃいけないことが沢山あるだろうから、そんなに時間があるわけじゃないはず。

 はじめてこの世界に来て、ティオに出会って、気ままに旅した時間。途中から事件に巻き込まれたり色々あって、最初の方だけだったけど。あの時間が忘れられない。もう一度味わいたい。


「明日、頑張るぞ!」

「どうしたの急に」

「いやぁ、早くティオと気ままに旅したいなぁと思って」

「私がいるのに他の女の話とか最低。首ちょん切る」

「やめろください」


 それからもだらだら話し、片方が寝たら片方は起きてて、目覚めたら交代、というのを繰り返し。

 夜が明ける。

 黒霧が濃いせいで、陽の光が地上に届ききっていない。常にどんより曇り空。これも人々の体調不良に拍車をかけているのかもしれない。


「私の助けが必要な時はすぐに発煙筒を使うこと。竜魔法に頼らずとも戦える装備をある程度揃えてきた。脱出の助けくらいはできる」

「ほんっと潜入任務のときのお前は頼もしいな。分かった。行ってくる」

「ソーマに限って無いとは思うけど、絶対に死なないで。生きて戻ってきて。ソーマが死んだら私も死ぬ」


 いつもの無表情でとんでもないこと言いやがる。


「バカなこと言うな。じゃあな」


 別れ際にちょうどいい位置にある音波の頭を無造作に撫でる。


「えへ。えへへ。ソーマに触られた」

「その表現はいかがなものか。願掛けみたいなもんだ」


 願掛けするほど不安だって悟られたかも。まあ音波ならいいや。

 ワイヤーの音を消す魔法を音波にかけてもらう。

 行くぞ。一連の事件の元凶があるであろう場所へ。

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