城下町へ
「この黒霧には竜魔法を無効化する効果以外にも何かあるのか?」
「この様子を見るに人の精気を奪っているのかもしれない。私たち竜契約者は魔力が精気の代償に奪われてるのかも」
「その仮説正しそうだな」
精気を奪われた人間たちを例えるならゾンビだ。まさに生ける屍。
そんな体で普通に生活を送っているのだから気味が悪い。
「まだここは王都の端だから兵士も少なそう。定期的に探知魔法使って罠がないか調べてるけど一切引っ掛からない」
「黒霧があるから罠なんて必要ないってことかもな」
「そうかも。王都は三つにエリア分けされている。外層、中層、そして中央の王城。一日ずつエリア移動していこう」
「おう。まずは外層からだな」
音波と慎重に進んでいく。片方の手で音波の手をつかみ、片方は時雨に手をかける。
なるだけ目立たない路地を使って移動していく。
「限界。魔法維持できない。休憩させて」
「分かった。ここで休憩しよう。ちょうど目立たない場所だし」
教会っぽい建物の裏。そこでうずくまる。身を隠す用のシートにくるまって。
今のところ危険も無ければ得られる情報もない。何せ国民誰一人しゃべってないんだから。正確にはしゃべってはいるけれど中身が無い。雑談が無いんだ。買い物のときの最低限交わす会話のようなものばかり。
休憩した後、再び各種魔法を発動して進む。
一日じっくりかけて中層まで到着。
交互に寝て体を休めてから出発。
中層も途中までは外層と同じで何も問題なく進めた。
だが城下町、すなわち王城近くは違った。
「城下町前にあんな外壁あったか?」
「なかった。短期間で急造したらしい。夜霧のメンバーの消息もこの中に入って絶たれてる」
「だろうな。明らかに警備体制が違う」
音波と時間をかけて外壁をぐるっと回る。
東西南北に設けられた城下町へと続く門。そこには竜と竜契約者がそれぞれ一〇ずつ配置されていた。
「門の時点でこれだけの戦力投入。よっぽど城下町や王城に侵入させたくないと見える」
「それに霧の濃さよな。漏れ出てる霧の濃度がヤバい」
「多分、私がついていけるのはここまでだと思う。夜霧がマテリア王国へ潜入させた人材は選りすぐりのメンバーたちばかり。私に引けを取らないほど優秀な。それでもここから先はダメだった。魔法が維持できなくなって殺されたと推測」
「ここまで、だな」
「時間も時間だし、明日出発するのがいいと思う」
「俺もそう思ってたところだ。門から離れたところで見つかりにくそうな場所見つけて今日はもう休もう」