王都へ
「そうなんですよねー。今王都、大変なことになってて」
「うえっ!? あんたたち、王都から来たのか!? よく抜け出してこれたなぁ。今はかなり出入りを規制されててほぼ軟禁状態って聞くぜ。そっかあ、新婚旅行なら移動お認められるのかぁ」
「は、はい。何とか出られました」
なるほど。マテリア王国は鎖国状態と聞くが、マテリア王国内でも王都はほぼ出入り禁止になっているのか。
「ったくよぉ、王様はどうしちまったんだか。急に外敵に備えて国交を一切断つとか言い始めてよぉ。黒霧だかも敵国のせいらしいけど、どう見ても王都だけから溢れ出てるように見えるんだよなぁ」
おっさんがそう言ったところで、すぐ近くにいた別の酔っぱらいおっさんがおっさんに肘鉄を喰らわせた。
「おい! 危ねえぞそういうのは! 憲兵がどこに潜んでるか分かんねぇ!」
「おっと、そうだったそうだった。今ので酔いが冷めちまった。飲みなおさねぇと。じゃあそういうことで~。新婚旅行楽しめよ!」
危ない橋を渡っていたはずのおっさんはへらへらしながら酒提供ゾーンへ千鳥足で向かっていった。大丈夫かあのおっさん。憲兵に殺されかねないぞ。
「憲兵によるガサ入れがあるとは。マテリア王国、本気」
音波が小声で耳打ちしてくる。やめて俺耳弱いんだから。
「あのマテリア王国が恐怖政治、か。しかし王都からの出入りを制限してるとなると内部の情報はほぼ漏れてないんだろうな」
「このまま聞き込をしても有益な情報は得られなさそう。予定を早めて王都に潜入するしかない」
「だな」
見切りをつけ、音波と店を出る。
今日は万が一を考えて宿はとっていない。指名手配されている可能性がなくもないから。また野宿だ。
町から出て野宿が出来そうな森へ。そこで寝床を作り、俺と音波で二重に探知魔法をかける。
「いよいよ明日、王都潜入か」
「王都に潜入した夜霧メンバーが全員帰ってきていないことを考慮すると相当危険な場所だということが推察される」
「常に警戒マックスでいかないとな」
「ひと時たりとも気が抜けない」
ちなみに今、俺と音波は背中合わせで座りながら眠りにつこうとしている。いつもいる見張りの竜がいないこと、探知魔法を潜り抜け来るかもしれない存在を考慮して、常に動ける体勢を作っている。寝るのも交代交代だ。
話題が途絶えたところでまず俺から眠りにつく。
不安だ、不安だけど。
ティオの笑顔を思い出す。
やらなきゃな。結果出さなきゃ。
と、そんな感じに昂っていたため、中々眠れず。
それを察していたらしい音波がどうやら先に寝ていたらしく、俺が限界を迎え意識が落ちる寸前に、私が起きてるから大丈夫と囁いてくれた。流石幼なじみ。俺を熟知している。
その優しさと、小さいながらも頼もしさを感じさせる背中に身を預け、半ば気絶するような形で眠りに落ちた。