音波と特訓
「またそうやってラブコメして。この節操無し」
「だーかーら、ユキトと俺はそういうんじゃないんだって!」
「今はそうかもしれないけど今後は分からない」
「いやいやないない」
「怪しい。ミーアとかいう女にもデレデレしてたし、アルバートとかいう男とも怪しいし、グレンの血族、危険」
どういう目で見てるんだこの恋愛脳が! ミーアはともかくアルまで巻き込むな。
「危険じゃねぇから! でもあれだな、ユキトもミーアもアルも好きだな。恋愛的な意味じゃなくて。マジで俺グレン姓の人間と相性良いかもしれん」
ギルバートのこともなんだかんだ憎めないしな。復活したから本当はじっくり話したいところだけど、それはきっと許されないだろう。
「やっぱり」
「いややっぱりじゃなくてね。ってこのやりとり永遠に終わらないから真面目な話に戻ろうぜ」
「むしろ私は永遠にソーマとのやりとり続けたいところだけど。あ、夜霧からの返答なんだけど。予想通り私、音波が補佐に付くことになりました」
「予想通り過ぎて驚きも何もないな。夜霧の幹部が俺に付きっきりになってくれるなんてビップ待遇だな」
「本当に破格の待遇。それだけ夜霧もソーマをサポートする気があるということ。夜霧は私が思っている以上にソーマに協力的」
「ありがたいこって。じゃあよろしくな。奇襲作戦の一週間前にマテリア王国に侵入する予定だから」
「一週間で問題解決しようだなんて豪胆」
「やるしかないんだよ」
最悪、マテリア王国とグレン王国が戦争をはじめた直後くらいに混乱に乗じて大元を叩く。できればやりたくないけどそれは最終手段だ。
「ソーマは本当にやり遂げちゃいそうで怖い」
「音波の力も加わればさらに成功率が高まるな。助かるよ。よろしく頼む」
「ソーマ急にそうやって真面目になるのズルい。そんなところが好き。全力で協力する。ソーマの足を引っ張らないように」
音波が真剣な表情を浮かべる。
俺も気を引き締めないと。現在のマテリア王国への侵入は危険極まりない。口ではよろしく、助かると言っても、内心は不安で一杯だ。妹同然の存在を戦場に連れていくんだぞ。まだ赤の他人の方が気が楽だ。もちろん関わりが薄いからないがしろにしていいってわけじゃないけど。家族同然の相手は別格だ。
「妹じゃない。幼なじみ」
「このやりとりくっそ久しぶりだな」
それは置いておいて。
俺の身勝手な行動で音波が死ぬ。それだけは俺の命に代えても避けなければ。
「命の危険に陥ったら俺を置いて逃げろよ。俺は一人でも助かるから」
「分かってる。身の振り方くらい。その点は安心して欲しい。私は絶対に死なない」
まるで俺の不安を見透かしたように、胸を張って断言する。
音波との長年の付き合いによる連携。それによって生存率が高まるのだけが救いだ。
「二人で生き残る。そして成功させる」
「そのためにこれから私とステルス竜魔法の練習。呼吸法とか魔力循環とかちょっと気を付けるだけでも向上する」
「OH」
それから森の奥で音波とのマンツーマン訓練を四時間ぶっ続けで行った。こういう部分で音波は容赦がない。ありがたいけどね! しごきを受けた感想。俺、隠れる系の魔法に対してそこまで才能ないわ。シルバの力あってこそだったわ。俺のリソース戦闘系魔法全振りかよ。