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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
緋銀
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発表

 アルとミーア、そして俺に関する辞令が出るまでの数日間はあっという間に過ぎ去った。

 その間、ティオの記憶を取り戻すために奔走したがグレン王国内でできることがあまりにも限られていたため、下町に繰り出したとき以上の成果は得られなかった。

 マテリア王国に侵入する際、ティオを連れていけば一気に記憶を取り戻す可能性がある、と一瞬考えて、すぐに、何をバカなことをと考え直した。今ティオはまさにそのマテリア王国に狙われているんだぞ。リスクが大き過ぎる。

 とまあそんな感じで俺は現在、再建が進んでいて元の形の五〇パーセントくらいを取り戻した王城の最上階にいる。

 傍らにはユキト、アル、ミーアがいる。各自緊張した面持ちだ。俺だけが呑気に城下を見下ろして騒いでいる。

 騒ぎたくもなるって。城下町を一望できる高さもそうだけど、何より城下に集まった人の数。こんなに沢山の人、見たことない。


「ソーマ。そろそろ気を引き締めろ。いつまでそんな緩い表情をしているんだ」


 王冠をかぶり、真っ赤なマントをたなびかせているユキトはどこからどう見ても王。纏っている雰囲気も厳かなものだ。


「カエデ。貴様は今回の発表で重大な役割を担っているのだ。腑抜けてもらっては困る」


 俺は腑抜けてるかもだけどアルは震えてるな。緊張のせいで。こういうのに弱いんだなぁ。解釈通り。


「いいじゃないですか。師匠は自然体が一番魅力的なんですから」


 だから君そういうこと不用意に言うのやめなさいって。アルの殺気、加えてなぜかユキトからの殺気も飛んできて本能的に逃げ出したくなっちゃうから。

 

「時間だ。はじめるぞ」


 ユキトが颯爽と王城の頂点へ続く階段を登っていく。アル、ミーア、俺の順でついていく。

 ユキトが群集の前に躍り出た瞬間、地球がひっくり返ったかと思うほどの大歓声が巻き起こった。

 人望あるねぇ。実は今、強化魔法を使っていて強化された目で各所をフォーカスすると泣いている人ばっかり見える。もちろん嬉し泣き。

 パーパラパッパーと盛大なラッパの音が響く。それを合図に静まり返った。まだ耳がジンジンしてら。

 俺の出番は一番最後。だから後ろの方にいて、ユキトが何をしゃべっているのかよく聞こえない。あれだな。文化祭とかの劇で、体育館の袖の奥にいるせいでくぐもった劇の音が聞こえてくる感じ。

 断片的に聞き取れる。円滑な国家運営のため軍の統括を降りること。後任を決めたこと。

 ユキトの合図でガチガチに緊張したアルがロボットみたいな動きで外に面した、今ユキトが立っている檀上みたいなところに歩いていく。


「おい、アル」

「なんだ、って貴様、その顔っ」


 変顔で笑わせたった。


「おらユキトが呼んでんぞ行け」

「覚えておけよ」


 そう言いながらもアルは笑っていた。作戦成功。

 アルが登壇し、群集にどよめきが走るも、すぐに割れんばかりの拍手が巻き起こった。

 場が落ち着いてきたころ、アルが堅苦しいことを話し出す。国家のために誠心誠意尽くしますうんたらかんたら。あれが本心からの言葉ってのがイイよな。

 続いてミーア。


「じゃあ行ってきますね師匠」

「いってら~」


 兄とは対照的に、ほのかな緊張感をたたえつつ、脱力するところはしているミーア。兄妹で対照的だなぁ。

 アルのときと同じような反応が起こる。ミーアのコメントは兄を全力で支えますみたいな内容。アルのすすり泣きがここまで聞こえてきた。シスコンを殺すセリフ吐いたなミーア。ちょっと身を乗り出して群集覗いてみたけどアルの妹バカぶりに笑ってるやつが多い。ギャップ萌え狙う作戦成功してるぞアル。

 次は俺か。


『準備はいいか? シルバ』

『うむ。主のために背中、温めておいたぞ』

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