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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
緋銀
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力を持つ者の責任

「無茶。駄目。絶対に行かせない。夜霧の幹部としても一個人としても」

「音波って夜霧の幹部だったの!?」

「前話したことあるような気がするんだけど」

「幹部感無くて忘れてたんだろうな」


 ちっこくて俺に対して変態的行動、言動をとるせいか夜霧で幹部をやってるなんて想像できない。


「失敬な。私、ソーマの前以外だときちんと幹部してる」

「信じられん」

「こうなったらソーマを夜霧に入れて一緒に活動するしか」

「それは面白そうだけど、こっちの世界にいるときはマテリア王国兼グレン王国の人間として行動したいからパス」

「むぅ。銀竜の契約者が夜霧入って私と結婚すれば夜霧は一生安泰なのに」

「しれっと結婚さすな。話逸れたが、俺は夜霧に止められようが行くつもりだ。このままじゃ拉致があかない。俺はもうマテリア王国とグレン王国に戦争してほしくないんだ。一ヶ月後、確実に戦争に入る。それを変えられるのは俺しかいない」


 これまでのティオとの旅では俺は無力だった。降りかかる問題に対処していっただけ。必死にくらいついていただけだった。この世界のことを何も知らず、力も上手く扱えず、ただティオについていっただけ。

 でも今は違う。力を手にした責任。マテリアを、グレンを知ってしまった責任。

 自分から問題を対処しに行くんだ。


「ソーマが頑固なのは昔から知ってる。言っても聞かない。力づくで止めたいところだけど、私じゃ敵わない。この件は上に報告させてもらうから、もしかしたら夜霧からソーマを止めに人員が派遣されることがあるかもしれない」

「そっか。なら伝えておいてくれ。その場合、死なない程度に痛めつけてしまう可能性があるから、むしろ俺に協力した方がいいぞって」

「ソーマにそんなことできるの?」


 心情的な意味でそう聞いてきたんだろう。確かに他人を傷つけることは今でも抵抗がある。カイルやギル、人を殺したことがあるっていうのにおかしな話だが。


「もちろん嫌だけど、戦争を止めるためなら、やる」

「……そこまで覚悟を決めているなら、もう私からは何も言わない」

「そもそも何で駄目なんだよ」

「どう転ぶか分からないから。下手なことをすると更なる厄災につながりかねない。例えば、ソーマの侵入に気付いたマテリア王が、襲撃されるのを恐れて黒霧を一気に放出、大陸全土にそれが広がる、とか。過去に様々な事例がある。特にソーマみたいな一人で一国を相手にできるような化け物が現れたら相手側が暴走しかねない」


 その可能性まは考慮していなかった。万が一下手を打った場合、問題がマテリアグレン間に留まらないかもしれない、と。


「そうしたら竜神化して黒霧を無効化する再生の銀光レナトゥス・リュミエールを広域に使って事態を収める、って、そういう話じゃないよな」

「確かにソーマはほとんどの問題に対処できる力を持ってるかもしれない。でも、全ての問題を解決できるわけじゃない」

「なら余計に夜霧のサポートが必要だな。夜霧の他の幹部やおじさんおばさんに言っておいてくれ。俺が一人でマテリア王国に乗り込もうとしてるから危険だ誰か補佐に付けるべきだって」

「前々から思ってたけどソーマは夜霧を便利屋か何かと勘違いしてる。ソーマが世界を動かしかねない人物だから従う他ないのが遺憾」


 音波は大きなタメ息を吐いた。困らせているのは感じているが、譲れないものもある。夜霧は世界のバランスを保つとかそんなようなことを掲げている組織らしいが、俺は、俺が大切に思っている人たちを、小さな世界を救いたい。


「俺と夜霧のパイプ役、頼んだぞ」

「頼まれた。じゃあ早速伝えてくる。今夜はこれで解散」

「おう。お疲れ」

「最後に。私は妹じゃなくて幼なじみだから」

「なぜ急に」

「ミーアのくだりで言えなかったから。それじゃ」


 音波は『陰影ハイド・スキア』を使って闇夜と一体化する。

 と、その時、何かが腹に抱きついてきた。


「おま、音波だな!」

 

 姿は見えないがタイミング的にどう考えても音波だ。


「ソーマ成分充電完了」


 そう言い残し離れていく。

 頼みを聞いてもらったし、これくらい許してやるか。

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