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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
緋銀
159/187

剣術大会

 気を取り直して広場の方へ戻る。思いっきり泣いたおかげですっきりした。偶には泣くこともいいかもしれない。次は今回みたいにティオ、他人に迷惑をかけないようにしたいところだ。


「もう大道芸終わっちゃったな。最後まで見せられなくてごめん」

「もう謝らないでよ。あの一芸見れただけで充分だから。それで次は何するの?」

「ん。次はあれだ」


 広場の一角にあるドーム型の建物。コロッセオみたいなやつ。

 血気盛んなグレン王国にもあるだろうなと思ってたが、マテリアのものとは規模が違う。

 剣術大会。昔ティオと参加して優勝争いをしたものだ。

 どうやら今回の大会は一般人向け、軍人の参加禁止らしい。

 俺は正式にはグレン王国軍の人間じゃないから大丈夫、なはず。竜魔法も使わないし。


「ああん!? んだこのしょんべんくせえガキどもは! あと一歩で軍に入れそうだったこのオレ様が参加すると知ってて来たのかぁ!?」


 ひげ面の巨漢に会場内で絡まれる。俺とティオへガンをつけてきたのでとりあえずすみませんねぇと頭を下げておいた。

 まあマテリア王国の一般人向け剣術大会のときと同じように俺とティオで決勝戦やっちゃうんですけどね。最初の巨漢は目ん玉ひん剥いて泡吹いて気絶してました。よっぽどショックだったらしい。ごめん。俺とティオは実戦を何回も経てるせいで戦い慣れてるもので。

 会場も大盛り上がり。そりゃ非力そうな俺たちが勝ち上がってるんだから注目されるか。

 

「すごいね。身体が剣の振り方を覚えてる。これがマテリア式剣術なんだよね?」

「そうだよ。俺にマテリア式剣術を教えてくれたのはティオなんだ。俺の複合剣術の中にそれが活きてる」

「そうなんだ。私、剣術も頑張ってたんだね。剣振るうの楽しいもん」

「そりゃ良かった。まあでも記憶を失ってる分弱ってるから俺には勝てないだろうけど」

「言っとくけど私、負けず嫌いだから」


 知ってるよ。だからわざと挑発的なことを言ったんだ。

 本当に身体が覚えてるようで、構えは記憶を失うティオそのもの。

 これはティオの記憶を取り戻すための戦い。だから俺はこの手合わせだけはマテリア式剣術でいく。

 大きなドームの真ん中、歓声の中でティオと剣を打ち合わせる。

 出会ったばかりの頃、稽古をつけてもらったことを思い出した。

 あの頃は体力がなくてすぐへばってたっけ。ティオの訓練用の薄着にドキドキして集中できなかった気がする。

 数分の打ち合いの末、俺の剣が宙に飛んだところで試合終了。


「負けたか」

「いつもの戦い方と違ったね」

「マテリア式だけだとやっぱり勝てないや」


 きっとグレン式だけでユキトやアルと戦ったら負ける。俺の強みは三つ四つの剣術を複合させて戦うから一つの剣術を極めた者にその土俵で戦えば負ける。


「何かね、すっごく懐かしい気持ちになったよ。剣を合わせれば合わせるほど。こうやってカエデと訓練してたのかな?」

「そうさ。木剣で容赦なく叩きのめされてたよ」


 ティオと握手。

 記憶は戻らなかったけど、懐かしさを感じたってことは僅かに効果アリ、かな。

 大会運営者が近づいてきたところで、俺とティオは全力ダッシュで逃げた。素性がバレるわけにはいかないからな。完全な大会荒らしになっちまった。

 逃げ続け、町のはずれで強化魔法を使って王城に戻る。


「楽しかった~! 今日はありがとね」


 応接間で紅茶を飲みながら一服。


「記憶が戻る兆しが見れて良かったよ」

「また連れてってね」

「ああ」


 上機嫌に笑うティオ。守りたいこの笑顔。

 あと五日間。思いつく限りのことをしよう。


 その日の夜。使われなくなった高台にて。


「音波、いるか?」

「昼間のティオのデートの時からいた」


 隠密魔法を解いた音波が闇夜から現れた。

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