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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
緋銀
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音波推参

「流石ソーマ。私に気づくなんて。きっと愛のおかげ。海よりも深いソーマからの愛。ぐふふ」

「うん、違うからな。あの鎖付きクナイの魔法は音波のだって分かってたからだよな」


 音波はお得意の隠密魔法、陰影ハイド・スキアで身を隠している。声もどこから聞こえているか分からないように反響している。

 だが、竜人化によって感覚器が強化されているため、ある程度どこにいるかは分かる。


「嘘。絶対、私への劣情からすぐ気づいた」

「んなわけあるか! そんなことより今、大変なことになってんだよ。お前が姿を現すのを待ってたんだ」

「もっと早く来たかったんだけど、マテリア王国関連の調査に駆り出されてて、遅くなった」

「そう。まさにそれを聞きたい。俺、今からちょいと王様と話し合いがあるから、また今日の夜あたりに会えないか?」

「そ、そんな堂々と夜這い宣言なんて。ソーマ。やっと私という据え膳を食べる気に」

「アホ。場所は、そうだな、あの旧・物見のてっぺんに〇時な」

「夜景が見えるロマンチックな場所がいい、と」

「もうそれでいいや。じゃ、頼んだぞ。来てくれて助かった。あんがとな」

「べ、別にソーマのために来たわけじゃないんだからねっ。お仕事だから仕方なくなんだからねっ。どう? かわいい? ちなみにもちろん嘘で、私の行動には多分に私情が混じってる」

「はいはいかわいいかわいい」


 適当にあしらって、俺はその場を後にする。

 竜人化はまだ継続しているため、ジャンプで移動し、数歩で城まで戻る。

 早く竜人化を解かないと身体の細胞を人間のものに戻すのに時間がかかるのだが、まだ解けない。


「ティオ、起きてるか?」


 ティオの安否を確認しなければならない。今やティオはこの国にとって超重要人物。様々な危険がつきまとうだろう。


「なぁに?」


 寝ぼけてふにゃふにゃした声のティオから返事がくる。

 安心した。これからは警備を強化しないとな。ここは王城だから警備は国の中でも最高峰なのだろうか、ギルみたいに警備を軽々破って侵入してくるやつがいる。音波とかもそうだな。まあこの二人は尋常じゃない竜契約者だから突破できたんだろうけど。


「何でもない。また夜飯の時でも起こしにくるから、それまでゆっくりしててくれ」

「ふぁい」


 ユキトは、ティオを連れてこいとは言わなかった。参加させるつもりはないのだろう。

 だって、話し合いは、ティオを引き渡すか否か決定する場だろうから、当の本人を出席させるわけにはいかないはず。

 ティオの安否を確認できたところで、ドッと疲れがきた。

 俺の身体じゃ、まだ、長時間竜人化を維持できない、か。


 自分の部屋のベッドで寝転がったところで、竜人化を解除する。

 竜人化は、解く時が一番キツい。ヒトならざる者からヒトに戻る時が。

 このまま寝てしまいが、そうはいかない。これから大切な話し合いが控えている。


「シルバ。今どこだ?」

『城門近くの森だ』

「おそらく明日からちゃんとした竜舎で寝れるだろうから、今夜は我慢してくれ」

『それは一向にかまわない。それよりも主、先ほどの襲撃についてだ。あの黒い霧。竜魔法だと思われるが、あれだけ広範囲に撒ける上、この我でさえ数秒自由を奪われるほどだ。相当強力なものだ』

「襲撃者、俺が、かつて殺したやつだった。信じられないだろうけど」

『……ふむ。それで色々得心がいった。襲撃者、ならびにその竜から感じた不穏なもの。魔力の質。主は覚えているか? 邪竜・グレイヴの使用した、死んだ竜を生き返らせて使役する魔法を』

「虚竜の咆哮ホロウドラゴン・ロアだな。覚えてるも何もシルバにそういう魔法があったって伝えたのは俺だから当然、ってまさか!?」

『分からぬ。やつが生きているとは思えない。だが、似すぎているのだ。やつの魔法に』


 死竜を生き返らせるなんて芸当、グレイヴくらいしかできないだろう。だが、あり得ない。やつは確かに、俺、ティオ、ユキト、グレン軍で倒したはずなんだ。死体だって残さず焼却した。

 それにやつは、人間までは蘇生させていなかった。

 謎は深まるばかりだ。

 ティオの記憶喪失。マテリア王国の急変。ギルの復活。邪竜をにおわせる魔法。それらが絡まり合っている。

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