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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
2部 銀
123/187

日課

ご飯を食べ終わり、寝床の準備をした後、各々寝るまでの時間を思い思いに過ごす。

 ティオはユキトが持ってきていた小説を読み、ユキトは竜の生態についての学術書を読んでいる。


 俺はシルバとグランへマッサージしてから、剣術の稽古を行う予定だ。

 シルバはいつも通り俺のマッサージを喜んでくれた。次はグランだな。


「おっすグラン。久しぶり。元気にしてたか? こうやってゆっくり話すのは、邪竜グレイブ討伐後、グレン王国に遊びに行った時以来か。マッサージさせてもらっていいか?」

「ぐるる」


 軽いうなり声一つ。こっちを見ようともしない。が、尻尾をぱしんと地面に打ちつけた。これがグランなりの挨拶だというのは、村で過ごしていた時に知った。

 まずは翼の、筋肉が走っている部分から。


 ちなみに俺は今、自身に強化魔法『白銀のノグレー・アルミュール』を施している。メイル、シンのような、スピード特化型の竜種はそこまで鱗は固くないのだが、シルバやグランは鱗が金属かと思うくらい固いため、強化魔法を使わないと十分なマッサージが行えないのだ。


 グランは顔色一つ変えずそっぽを向いていたのだが、翼の付け根に近づいていくにつれ、ピクピクッと痙攣することが増えていく。

 竜は翼の付け根が一番凝りやすい。ここを凝りほぐすのがメインディッシュ。


「ここだっ!」

「ぎゅ、ぎゅいぃ!」


 おらおらおらおらぁ! ここやろ? ここがええのんやろぉ!


 数分後。仰向けに寝転がるグランと、そのお腹の上でこれまた仰向けに寝転がる俺の姿が、そこにあった。


「ふむ。いつ見ても感心するな。ソーマの手腕は。竜マッサージ師として生きていけるだろう。しかし、グランがここまで骨抜きにされるのは、なんだか、複雑な気分だ。プライドの高いグランが、そんな体勢になることなどソーマの前以外ではあり得ない。私でさえ腹に乗せてもらえるかどうかは五分五分だ」


 学術書から顔を上げたユキトがこちらを見上げながら声をかけてきた。


「はぁはぁ。シルバ、グランの連戦めちゃくちゃ疲れる。良い筋力トレーニングになりますわ」


 竜たちの中で最大クラスの大きさを誇る二頭との連戦。体中の筋肉が悲鳴をあげている。しばらくグランの腹の上で休ませてもらおう。暖かいんだよなここ。

 数分後、シルバからの視線を感じたとおぼしきグランによる高速体躯捻りによって俺は空中に投げ出された。女の子だもんね。男子の前で腹出しながら寝るのは恥ずかしいよね。そういう話なのか。


 さて、毎日の日課の素振りに移ろう。

 手になじんだドラグサモンはもうない。だが、ドラグサモンより握り慣れた刀が、今の俺にはある。

 祖父たちから買ってもらった刀は、自分で選んだだけあって握りやすく、振りやすい。


 ヒュンヒュンという風切り音が耳に心地良い。

 一通り型をこなした後、仮想敵相手に実戦に近い動きを取り入れた稽古を行う。


 マテリアの剣術と、日本の剣術を混ぜた独自の剣術。俺が死闘の中で編み出した、というより身体に染み込んでいる剣術。祖父たちの前で披露した際は、なんだその奇妙な動きは! 基本型を崩すな! 基本型を崩していいのは高段者だけだと怒られたため、大っぴらには稽古できなかった。


「ソーマ。私と手合わせしてくれないか」


 いつの間にか軽鎧を着込んだユキトが、剣の柄に手を置きながら近づいてきた。

 さっきまでドレス+メガネという、素晴らしい組み合わせの格好だったのに。あ、別にメガネっ娘好きというわけじゃないんですよ。ほら、ギャップがね。また違った魅力があるというか。


 でも、見慣れているのは、やはりこの戦装束のユキトだ。


「いいぞ。訓練用の木剣はあるか?」

「もちろん。君は、自身が置いていった木刀を使うがいい」


 そう言ってユキトは、元の世界ではお馴染みの木刀を放った。


「あぶねっ」


 さっきまで抜いていた刀『時雨』を素早く納刀し、片手で木刀を受け取る。


「私は使い慣れた木剣だ。鎧を着ているから寸止めは必要はない。全力で頼む」

「そっちも全力でいい。俺は昔っから散々木刀くらってきたし、何より、怪我をするほど不覚をとるつもりはないからな」

「言うじゃないか。思えば君とはほとんど手合わせしたことがない。楽しみだ」


 ユキトは木剣の柄を肩より高く上げ、切っ先を地面側に向けるという、グレン式剣術独特の構えをとる。

 ギルと対峙した時を思い出す。彼も全く同じ型をとっていた。

 俺は、正眼の構え。


「準備は良さそうだな。じゃあ、はじめるか」


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