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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
2部 銀
111/187

踏みにじられし過去

 翌日。

 俺たちは最低限のお金を引き出してから町を出た。

 昨日のこと? まあ色々あったよね。最高に気まずい雰囲気になったもののティオさんはベッドで寝ること許可してくれて。

 今までの経験上ラッキースケベ的事故が起こることは予見していたため、自ら両腕をベッドの端にくくりつけることで万が一の可能性すらゼロに。記憶を失ってほぼ初対面状態のティオにこれ以上心証を悪くされたら今後の行動に支障が出るからな。


「今日はこれからどこへ行くの?」

「ティオの記憶を刺激できるような場所さ」


 まず徒歩で町の外へ出る。んで目立たない場所でシルバと合流だ。

 俺の顔はまだ一般市民には割れていない。

 だが、シルバは別だ。邪竜を倒した伝説の竜として認知されてしまっている。

 まあそんな噂が流れてなかったとしても竜族最高ランクの身体のデカさとてらてら光ってる銀色の鱗で目立ちまくること必至だけどな。

 町を出てから森を進むこと30分あまり。


『主よ。待ちわびたぞ』

「苦労かけるな。いつかお前が自由に生活できるよう頑張るから、当面は隠密行動で頼む」

『いや、隠れ住むことには慣れている。単に主が心配だっただけだ』

「お前は本当に主想いの竜だな」

『当然だ、なにせ我に残された唯一の家族なのだから』


 そうだった。こいつは伝説の竜の最後の生き残りだったんだ。

 嫁さん見つけてやらないとなぁ。同種族は難しそうだし、異種交配になってしまうけれど。

 俺は今のところ、この世界にとどまり続けることは考えていない。理想は長期休みの時だけこちらに来るライフスタイル。

 しかし、ティオの記憶喪失という異常事態。おまけにメイルも行方不明ときた。そんなことは言ってられない。確実に冬休み期間を超える。

 話が逸れた。

 問題が解決したら、俺は自分の世界に戻る。そうしたらまたシルバは1人きりだ。

 邪竜討伐後、俺が元いた世界に戻っていた間、シルバはどうしていたのだろう。後で聞いてみるか。

 そんなわけで、シルバには俺以外の家族を得た方がいいという結論にたどり着く。


「シルバ、お前、嫁さん見つける気はあるか?」

『つがい? ふむ。今のところ興味はないな。我は1人でも平気故』


 なんだこいつソロ充か。モテ竜のくせに雌に興味はないと。草食系、絶食系雄竜なのかそうなのか。

 シルバの恋愛事情は置いておくとして。


「変なこと聞いて悪かったな。早速出発しよう。場所は俺が指示するから指示通り飛んでくれ」

『心得た』


 俺はシルバの背に飛び乗る。ティオも俺の後ろへ飛び乗ってきた。


「この子がカエデの契約竜? まるで伝説の銀竜ね。でもそんなはずないから聖竜の上級種ってとこかしら」

「あー、うん。それについてはまた話すよ。まず目的地を目指そう。ーー顕現せよ。契約に従い古より君臨する其の偉大なる力を我が元にーー光曲の銀鱗粉リフレクティア・スケイル


 以前、メイルに使ったことのある竜魔法。その時の効果時間は10秒ほどだったが……。


「マジか。30分以上も保つのかよ」

『我とこれだけ近い上、我自身も同じ魔法を使って上乗せしている故』

「チート級だな本当」

『ちーと?』

「特別ってことだよ」


 これだけ効果時間があれば安心だ。

 ステルス機と化したシルバを誘導し、あの場所へ。

 10分程度で着いてしまった。

 広い森の中に、ぽっかりと開いた穴。

 忘れもしないあの日。

 ギルとの戦闘。魔法剣、リーサとの出会い。

 そして、故アレクが眠る場所。

 シルバが着地する前に、我慢できず飛び降りた。

 アレクとリーサの墓参り。ティオが記憶を失ってなかったとしても、こっちの世界に来て最初にやろうと思っていたこと。

 ボロボロになった魔法剣・ドラグサモンが、かつての愛剣が、俺を出迎えてくれるーーはず、だった。

 絶句。ショックで言葉が出ない。呼吸が、浅くなる。


「どうしたのカエデ? 苦しそうだけど」


 心配そうにそう聞いてくるティオ。

 立っているのが精一杯だ。それほど目の前の事態に困惑している。


「墓が、暴かれている」 

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