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ひまわり  作者: 仲村 歩
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ネネ

「ん、ん?」

目を覚ますと誰かが僕の体に抱き付いている様な違和感を覚える。

気のせいではなく確かに誰かの体温を感じ暖かい。

恐る恐る掛布団をめくると女の子が体を丸めて寝ていた。

「だ、誰なの君は」

「ん~ にゃ~ 主様、起きたですか?」

猫の様に伸びをした女の子の髪の毛の中から耳が飛び出してスカートの中から尻尾が。

「もしかして、ネネなの?」

「そうです。主様は何を驚いてるですか?」

「だ、だってその恰好って」

ショートボブから黒い猫耳が飛び出していて白いワンピースに黒いサスペンダースカートに黒いニーソックスで。

多少の事なら驚かないけれど流石に動揺してしまう。

「あり? 主様が願ったからですか」

「僕が願った?」

確かに寝る前にネネが人間だったらと言ったけれど。あまりに非現実的だけど妙にリアリティーがあって……

眞子婆ちゃんに呼ばれて3番座に向かうと人の姿になったネネもついてきた。


「あのさ、眞子婆ちゃん」

「早く食べなさい。遅れるよ」

「そうじゃなくてネネって」

「可愛いだろう」

霊感が強いとかそんな言葉じゃ説明できない事が起きたのに眞子婆ちゃんは平然としている。

朝から疲労感満載で脱力してしまう。

「ほら、早くしなさい。ネネは付喪神だからね」

「付喪神って長い年月が経って古くなったり生きたりした道具や生き物に霊魂や神が宿ったっていうやつなの。それじゃネネは」

「主夜神尊の使いの黒猫を模した日本最古の黒招き猫だよ」

「でも僕の事を主様って」

眞子婆ちゃんが僕の方を見て直ぐに朝ごはんを食べ始めてしまい、これ以上は何も話す気はないようだ。

仕方なく自転車で学校に向かう。


八重高の生徒はお昼になると近くのマックスバリュー石垣店や正門前の商店でお弁当を買ったりすることが多い。

僕も黒屋君とマックスバリューに行っておにぎりとお茶を買って教室で食べている。

すると必ず……

「クラゲ、一緒に食べようぜ」

「蒼佑君は私と食べるんです」

「委員長特権で私も混ぜなさい」

毎日同じ繰り返しで溜息しか出てこない。

3人がそれぞれ多めにお弁当を作って来てお裾分けをしてくれるのでおにぎりとお茶だけを買えばお腹一杯になるのだけど。

どれが一番か問い詰められるけれどどれも美味しいから困ってしまう。

そして今日も……

「クラゲ、私のが一番だよな」

「赤嶺さんには負けません」

「今日こそはっきり勝負を」

赤嶺先輩と青波さんに白間さんの顔が僕の目の前にあり冷や汗しか出てこない。

すると聞き覚えがある声がして3人の顔色が変わった。


「赤白青は相変わらずですか。主様を困らせるとは不届き千万。仕置きは何がいいですか?」

「ネネ、何で学校に……」

「主様、何を言うですか。ネネは主様の眷属ですから主様の側に常に控えているのが至極当然」

「へぇ、クラゲの眷属ね。クラゲはそんな趣味を……すいませんでした」

茶々を入れようとした黒屋君までネネを見た瞬間に頭を深々と下げてしまった。

この状況で判る事は恐らくネネは常に眞子婆ちゃんの家にいたという事だけで、眞子婆ちゃんは石垣島では有名な存在からだろう。

「なんで気にしないの? 気にしてよ」

「占いオバァの所に居たんだろう」

「猫耳なんて可愛いし別に気にしないよね」

クラスメイトも誰一人気にせずにネネの事を触ったり撫でたりしている。

南の島の人は大らかで緩いと聞いた事があるけれど可笑しいでしょ。

昔からユタやノロがいて御嶽も沢山あるからなのかな。

「おーい。赤嶺は自分のクラスに帰れよ」

「はーい」

「おっ、随分素直だな。ああ、その子の所為か。まぁ良いや」

担任の比嘉先生まで見事にネネの存在をスルーしている。

「先生はネネの事が気にならないんですか」

「俺としては誰かさんの所為で赤嶺と青波に白間が顔を合わす度にいがみ合っている方が気になるし。その子は浅黄さんの所のだろ」

「でも、部外者ですよ」

「おいおい、海月。邪険にしたら可哀想だろ。今にも泣きそうだぞ」

比嘉先生に言われネネを見ると涙を浮かべて歯を食いしばっていて宥めすかすのに一苦労した。

授業中も騒ぐわけではないし何より3人の抑止力になるのなら仕方が無いかもしれない。


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