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「おじさんは高校のマラソン大会で一番を取ったことがあるんだよ」

 おじさんは自慢げに話した。それもそうだろう。高校には小学校や中学校とは比べ物にならない数の生徒がいる。その中で一番を取るということは並大抵のことではないのだ。たとえ、それが、勉強だろうがスポーツだろうが。

「すごいですね!」

 だから、本当に素直に俺の口から、そのような言葉が漏れた。そこには称賛の意しか含まれていない。

 俺は文化部のため、筋肉量や体力は運動部に人と比べると大幅に劣る。それに、精神力もないから、だんだん辛くなってくるとこらえきれずにペースが落ちるタイプだ、つまり、持久走には向いていないタイプの人間だ。というよりも、そもそも身長が百七十センチに迫ろうとしているに、体重が五十キロしかない虚弱体質の時点で無理だ。

「と言っても、昔は勉強も真面目にしなかったからな……。これくらいしか自慢できることがないよ」

 先ほどとはうって変わって、おじさんの口調は自嘲気味だった。

「いや、そんなことないですよ」

 そう言った俺の言葉にも説得力は欠片もなく、完全に無力であった。

 再び時計を見やったおじさん。今度は神妙な面持ちになって、

「じゃあ、僕はもう帰ることにするね」

 と突然告別した。いや、おじさんがあの世に行くという意味ではない。ただ単に別れを告げただけだ。

 そう言えば、俺とおじさんはお互いに名乗っていない。つまり、二度と会うことはない。

 俺は帰り支度をするおじさんの姿をしっかり目にきつけ、

「さようなら」

 と笑顔で見送った。


設問9:おじさんの最後の言葉は?

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