【3日目】花より団子?まあ、だんごか
「これでも最安なんだよね...プライパン。」
昨日の夜と今日の朝飯、それからどうしても欲しいと思ったこれ。
・チョコチップパン 110円(税込)×2
・フライパン 660円(税込)
・枯れ木 0円
・松ぼっくり 0円
所持金20円
ちょっと深めのフライパン。
これがあれば魔光茸に火を通すのも楽だし、なんならスライムをつぶすときの武器になる。
いまはまだ接敵したことがある魔物という魔物はスライムだけ、だが...
新たにほかの魔物に遭遇した場合武器のありなしで生き残れる可能性が上がるはずだ。
「そもそも武器もなく素手でダンジョンに潜っている方がおかしいよねえ。雑誌に載ってる探索者はかっこいい剣や杖を持ってるもんなあ。」
スライムを倒すのも最初は拾った石で潰し。慣れてきたら持ち上げて叩きつけることで倒してた。
今はまだ相手の攻撃性がほぼないとはいえ、無謀も無謀...生きてることに感謝だ。
「食べる物がなきゃ死ぬ、つまり金がなきゃ死ぬ。今のとこ食うものなんて買い物以外はダンジョンのスライムか拾ったきのこしかない。とりあえずダンジョンだな、うん。」
それでもなおダンジョンに潜り生きていく、少しでも生還する可能性を上げていく。
そうして今日も僕は生きる。
(塩くらいは買いたかったなぁ...流石にフライパンは100円じゃ無かったし。今回はより強い火が使えるように火おこしセットも拾ってきた!)
いつものように受付で申請して配信機材を装着。
今日はもうちょっと奥まで行く。
フライパンという武器(?)も買ったことだし、少しは欲張った探索ができるはずだ。
ダンジョンの一層一層はかなり広い。
その階層のモンスターは奥に進めば進むほど強くなる。
「あのぉ、今日からちょっと奥に進もうと思うんですけど...スライムしか出ないんですよね?」
「そうですね、私も受付のみなのでそこまで詳しくありませんが、第一層はスライム。奥に進めば進むほど色が増えていくとのこと。詳しくは日本ダンジョン協会公式ホームページに情報はありますよ。
「あ、はい。ありがとうございます!」
そのホームページを見るためのネット環境も端末もないんだよなあと思いつつ礼を言う。
スマホすら持ってませんなんてゆったら受付の人をただ困らせてしまうだろうし、早々とダンジョンへ向かう。
「色が違う、かぁ。もちろん色が違うから強さも違うんだろうなぁ...。速い?もっとジャンプする?魔法使うやつとかいるのかなあ?」
流れ作業のように見つけてはフライパンを振り下ろしスライムを潰し続ける。
持ち上げて叩き落とすより体が楽だ。
「スライムしかいないって言ってたけど...これは...?」
いつもの倍近く洞窟の奥に進むとちらちらと視界の隅でうぞうぞ動く黒い影。
足で突くと丸まってコロコロと転がる。
もっと小さい頃、岩をひっくり返すと出てくる大量の虫。
“ダンゴムシ”
ただ通常のダンゴムシに比べてだいぶでかい。
人の拳くらいはある。
拾い上げてみるとずっしりとした重みがある。
「これは魔物じゃないから魔石とかは出ないんだよね?しっかし、投げやすそうな大きさだよね。丸まってる分にはいいんだけど...お?思ったより力はないのかな?簡単に開け...うぇぇ、きもいー...。The多足類だよねえ、うん。虫嫌いじゃなくてもこれはきもい、マジきもい。」
思ったより簡単に開いた内側の蠢く足。
噛みついてくるようなこともないし、脅威ではない。
「これ、食べれないかな?」
スライムよりはまだ見知った生物だし、想像はなんとなくつく。
虫を食べるという嫌悪感はもちろんあるが、いまや昆虫食はマイナーではあるがジャンルとして確立されている。
貴重なタンパク源として研究もされてるとか。
「捌いてから火を通す?いや、一旦そのまま茹でて割ってみるか。なんとなく聞き齧った知識でなんとかなるかな...石を組んで一方向だけ間を開けてー...拾った枝をいい感じにたててー...。」
火おこしなんてもちろんやったことはない。
ましてや簡易かまどのような物を作ったこともない。
失敗したら失敗したでいいだろう。
「松ぼっくりは火がつきやすいらしいけど...お?火がつく!すげぇー...火遊びしてるみたいで罪悪感。この火種を大きくするために木の枝をもうちょい細かくしたので覆ってみるか。あ、あ、消えそう消えそうっ!ふーっふーっ!!な、なんとかなってる?これ?」
火が消えそうになるも風を吹き込みパチパチと内側から弾ける音がする。
もう少しすれば火種が安定しそうだ。
そのまま蓋をするように上にフライパンを置いて水筒の水を並々注ぐ。
「おぉー、水が沸騰した!サバイバルって感じでちょっと感動!石器時代くらいにはなった?じゃ、こいつをドボンっ!うわっ!暴れる暴れるっ!殻が赤くなってきてる...。エビとかカニと一緒?出汁の香りもいい。味に期待できそうじゃない?!」
この大きさならだいぶ食べ応えもありそう。
「あっ!!これどうやって取り出そう...。絶対熱いじゃんっ!熱々だ!!とりあえずお湯捨てて冷めるまで待つしかないかあ。食べて平気そうなら出汁使って味噌汁作っても良さそう!」
見た目と匂いの良さに期待値も高い。
ワクワクしながらフライパンをのぞいて冷めるのを待つ。
「外側はだいぶ冷めたな...中は熱そうだけど、殻は流石に剥くよねえー、あちちっ!ぷりっぷりじゃん!海老っぽいね!見た目もあれだから足も全部剥いちゃってと。内臓っぽいとこは避けよ、きもいし。さて...実食!」
中の身は白くほかほかぷりっぷりのエビのよう。
ぷちぷちと殻と一緒に足も取れば見た目的嫌悪感、虫感もほぼない。
立ちこめる湯気と匂いに涎が出る。
「んっ!んんっ!これは...う、うめぇぇっ!!身が引き締まってる!大きさの割の雑味もない!虫だし土臭いかと思ったけど全然そんなことない!うへぇ、こりゃぁいい...。極上だぁ...。なんだこいつら何食ってるんだ?茹でただけでこれなら調味料で味付けしたらもっといいんじゃね!ダンゴムシ...恐るべしっ!!」
1人で大興奮しつつ茹でた分を食べきる。
チョコチップパン食べて幸せだったが、この旨味のおかげで同じお腹いっぱいでも充足感が半端ない。
「誰も食べたことなかったのかなあ?まあ食べようと思わないか...。ふふっ、いまは僕しか知らないけど、腐った物でも食べ物にする執着が日本。知られちゃったら僕の食べる分なくなっちゃうかも!なーんてっ!」
ここ1番に元気よくご機嫌にスライムを潰していく。
今日のリザルトはスライム40匹。
オレンジ色のスライムもいたが何が変わったかよくわからなかった。
というよりダンゴムシの衝撃でよく観察もせず潰していた。
所持金1220円
調味料買っとこ。
人生で買ったもの値段ランキング1位
“フライパン”660円(税込)




