ちょっと変わった高校生の話〜アイ・ラブ・ミー〜
イケメン。
それは顔の整った人間や、心優しい人間に用いられる言葉である。
ここに、人々からイケメンと呼ばれる高校生がいる。
名前を蒲原イクト。育ち盛りな高校2年生である。
彼がイケメンと呼ばれる所以は、ルックスにある。
フランス人の祖父を持つクォーターで、日本人離れしたルックスを持つ。
180センチと高身長で、手足もすらりと伸びてモデル顔負けのスタイルのよさである。
健康的に日焼けした肌が活発な印象を与えるが、青い瞳とブロンドヘアがどこか儚げな印象も与える。
街を歩けば誰もが振り返る。
とにかく華がある男であった。
そんな彼がモテないわけがないが意外にも彼に告白する人は少なかった。
理由は彼の性格を知れば自ずと見えてくるだろう。
―――――――――――――
とある日の放課後。
下校中のイクトは他校の女子に呼び止められていた。
「あの、私、前に街であなたを見かけてからずっと……ずっと……」
彼女は顔を真っ赤にしながら必死に言葉を探す。
「ずっと好きでした!!」
彼女の言葉に、イクトは一瞬目を丸くした。
しかしすぐに口元に笑みを浮かべて言った。
「ありがとう。僕も好きなんだ」
彼女は弾かれたように顔を上げた。
「それって、私と同じ気持ちってこと……?」
「うん」
イクトは優しく頷いた。
彼女の表情がみるみるうちに花が咲いたように明るくなる。安心したのか、ポロポロと涙がこぼれた。
イクトはハンカチを取り出してその涙を拭った。
「そんなに泣かないで。君の気持ちは痛いほどわかるよ。だって……」
「僕も好きだから。僕のこと」
「…………え?」
彼女の頬を伝っていた感動の涙が、困惑のあまりピタリと止まった。
「僕は僕が大好きなんだ! 世界で、いや、銀河で一番!!」
イクトは夕日に向かって両手を広げ、抱きしめるように自分自身の肩を掴んだ。
「見てごらん、この収穫期の小麦のように輝く髪。サファイアを溶かし込んだような瞳。頭脳明晰、文武両道……神はこの世界に、僕という名の最高傑作を誕生させてしまった。ああ、鏡の中の僕に触れられないことが、人生唯一の絶望だよ」
鮮やかな手付きでポケットから取り出した手鏡に、彼は熱烈な視線を注ぐ。
その瞳には、告白した彼女など最初から映っていなかった。
「神は僕を創る際、美しさのレシピを書き間違えて全て投入してしまったらしい……。罪なほどに、ヴィーナスも嫉妬する美しさだ!
ああ、僕はなんて美しいんだろう!!」
イクトは鏡に映る自分に向かって、甘い吐息を漏らした。
「……結婚したいくらいだ」
その言葉を聞く者は、もう誰もいなかった。
遠くでカラスが鳴き、彼女の涙を拭ったはずのハンカチが、まるでゴミのように地面に落ちていた。
蒲原イクトの持つ人々を魅了するルックスは、本人も虜にしているらしい。




