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第八章 解放派リナ
第八章 解放派リナ
リナは白い膜の服を着ていた。笑うとえくぼができる。
手は冷たかった。体温が低い人の冷たさ。
「苦しい顔をしてる」
リナは真白の手を取った。
「鈴を鳴らせば楽になる。あなたの残響も消える」
麻酔みたいに甘い言葉。
真白の胸の痛みが、一瞬だけ緩んだ。
「代わりに何が起きるの?」
真白が問うと、リナは笑顔のまま言う。
「なにも。ほんとうになにも」
その“ほんとう”が、真白の皮膚を冷やした。
嘘の匂いがする。
救急で嗅ぎ慣れた匂い。
夜、マリクは短く言った。
「解放派だ。息を全部解く」
「返すのは、悪いこと?」
真白が言いかけると、マリクの瞳が揺れた。
蜂蜜色の奥に沈殿。
「返した結果、世界が暴れた」
「……あなたが?」
真白が問いかける前に、マリクは目を逸らした。
その逸らし方が、答えだった。




