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第十五章 縫う手順
第十五章 縫う手順
真白は保管者の長に言った。
「順番を作る。トリアージと同じ。いちばん危ない“暴走の記憶”からじゃない。いちばん“受け止められる痛み”から返す」
長は静かに頷いた。
石板を三つ、選ぶ。
幼い別れの記憶。
小さな赦しの記憶。
名前を呼ばれた最期の息。
真白は鈴を握る。骨まで冷たい。
でも手は震えない。震えるなら、呼吸で止める。
「半音」
真白は指で鈴を揺らした。
チリン。
世界に、ほんの少しだけ痛みが戻る。
泣き声が増える。
でも拳は増えない。
「次も、半音」
チリン。
波形が尖りそうになったら、止める。
止血するみたいに。
縫合するみたいに。
戻す。
戻しすぎない。
遅いけれど、死なせない。




