第十二章 マリクの告白(そして別れ)
第十二章 マリクの告白(そして別れ)
夜明け前、マリクは真白を保管層の奥へ連れていった。
そこにあったのは、黒い石の山——真白のペンダントと同じ素材。
「鈴は、この石で作られる」
マリクは言った。
「そして……俺は昔、鈴を強く鳴らした」
言葉が落ちた瞬間、空気が冷える。
真白の喉が固まる。
「止めたかった」
マリクの声が震えた。
「世界を。痛みを。だけど俺は、止血じゃなくて出血を増やした。何千人も……」
真白は息ができなくなる。
胸が痛い。
恋の痛みじゃない。
信頼が裂ける音。
「じゃあ……今の“封じる”は、あなたの罪を隠すため?」
真白の声が、自分でも驚くほど冷たかった。
マリクの瞳が揺れた。
蜂蜜色の奥の沈殿が、濃くなる。
「違う」
「同じだよ」
真白は一歩下がった。
「私は救えなかった。あなたは壊した。……私たち、同じ側に立てない」
言ってしまった瞬間、真白は自分の胸を殴りたくなる。
でも言葉は戻らない。
マリクは真白に触れなかった。
触れたら、引き止めてしまうからだ。
「帰れ」
彼は低く言った。
「この先は、俺がやる」
その“俺がやる”が、真白を一番傷つけた。
救急で何度も聞いた言葉だ。
「俺がやる」
その裏で、誰かがひとりで壊れる。
真白のペンダントが冷たく鳴った。
チリン。
そして真白は、光に飲まれた。




