音に、匂いに、なにを見た。
しょうもない
喧嘩の初売り
皺が寄る
黙々と
肉は消し炭
焦る父
うたた寝に
ヤギに噛まれる
夢を見た
たんぽぽの
綿毛のやうな
雨上がり
四六時中
鬱陶しいわ
ヒキガエル
闇色の
水晶激つ
葉月かな
奇跡色に
ひまわり踊る
午後の丘
雷撃に
勇む少女の
残像見ゆ
今日も今日も
奏でて尽きて
きりぎりす
雲流る
丘いち面の
秋の色
銀杏葉の
星より淡き
甃のうへ
闇に浮く
幾千の灯の
枯葉舞ふ
夕闇に
白波揺らす
秋の音
闇に灯す
甘い悪戯
収穫祭
焔やどる
かぼちゃは見たり
奇跡の夜
思ひ出に
口端上がる
秋月夜
冷え込みに
浅く消えゆく
猫の息
ひりひりと
ほをに張りつく
月時雨
見納めの
金朱に燃ゆる
氷風
いま果てし
空を掴んだ
祖父の指
蒼闇に
沈む真珠の
寒い月
追憶の
浜辺に似たり
冬の空
夕焼けに
ひたりと潜む
冬の嶺
ポケットの
ほのあたたかき
雪の朝
首竦め
寒いさむいと
空仰ぐ
天も地も
初雪色の
窓の奥
雪風に
踵弾ませ
刻む唄
朝焼けに
しんと潤う
雪の香
生ぬるく
弁当かをる
冬の朝
星に揺蕩う
細氷に似た
鱗雲
寒月よ
何を見たのか
幼子は
頬を刺す
夕焼け色の
向かい風
氷る穹
白銀纏う
嶺に吼え
大晦日
腹出し父ちゃん
風邪ひいた
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公式企画「俳人・歌人になろう!2023」参加作品です。
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