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気候危機から考える世界最終戦争

作者: 大宰権帥

 地球温暖化にはティッピングポイントというものが存在する。これは超過した場合に人間の力では気候変動に対処できなくなる基準点のことだ。具体的には南極の氷床やシベリアの永久凍土が氷解して地中のメタンが大量に大気中に放出される危惧がある。また、海洋酸性化(大気中の二酸化炭素が海洋に溶け出して電離し、炭酸イオンと水素イオンが発生)によりサンゴ礁や植物プランクトンの二酸化炭素吸収能力が低下することが考えられる。

 仮に気候変動が人間に制御できない範囲に到ったとき、社会にどのようなリスクがあるのか検討してみた。その際、現状の世界人口が拡大の一途を辿っていることも加味した。

①「大型台風やゲリラ豪雨の頻発」

②「山火事の多発(→治山能力の低下)」

③「異常高温、異常低温」

④「水産資源の減少(我々の秋刀魚がいなくなる)」

⑤「海面上昇(真偽不確かなところもあるが、一応挙げておく)」

人口拡大によって 

⑥「食料不足」

が深刻化する。さらに⑥を改善しようと後進国や発展途上国を中心に過剰開発がおこなわれると

⑦「砂漠化(これには②も大きく影響すると考えられる)」

が進展する。また、③や気候の変化にともなってウイルスの変異が活発化する恐れがあり、 

⑧「新しい感染症の流行の危険性が高まる(かもしれない 新型コロナはその一例と筆者は考えている)」

③・⑤・⑦により

⑨「居住可能領域の減少」

さらに⑦は耕作面積の減少を招き、加えて①・②・③は農業生産の効率低下を招くから更なる⑥(食糧不足)を招く。この⑥に加えて⑨は

⑩「難民の大量発生」

を招き、これは難民を受け入れる

⑪「先進国や地域大国の治安悪化」

を招く。さらに⑥・⑨は民族紛争や宗教問題などに起因する

⑫「後進地域での紛争激化」

を助長する。さらに当たり前だが⑥は

⑬「世界的な食料価格高騰」

を招く。

 さらにここで、世界の覇権国家であるアメリカが抱える特有の構造を勘案したい。それはアメリカの社会保障制度が非常に貧弱で、かつ経済格差も世界最高水準に大きいということだ。これはアメリカ社会に教育格差をももたらしており、低所得層を中心に陰謀論や過激思想が広まる温床になっている。さらにアメリカは銃社会であるから個人の銃器保有に制限がほとんどない(州による)ことも付け加えなければならない。そしてアメリカは市場経済に対する規制が緩く、私企業の活動が制限を受けにくいという要素もある。これらの要素の上に先に挙げた⑩・⑪・⑬が加わると食料を獲得できない都市の下層民が暴徒化し、富裕層を目的としたテロリズムや商店への略奪が横行する公算が高い。その萌芽は既にトランプ元大統領の支持者による連邦議会襲撃事件に現れている。そうなると逆に今度は富裕層は自身と財産を保守するために銃器を用いて武装し、私兵を雇い、軍隊に相当する組織を築くと考えられる。

 荒唐無稽に思えるかもしれないが、よく似た状況は歴史上に存在する。その一例が安政の五カ国条約(日米修好通商条約など)を結んだ直後の幕末日本だ。諸外国との貿易による商品流出と万延小判の鋳造による物価高騰に対して江戸やその近郊の日雇い労働者や無宿人が暴徒化した。これに対して幕府は文久年間に関東の豪農(地主)に洋式銃による武装を許可した。(むしろ奨励した)これは豪農の自衛がなされないと年貢納入が滞るためだ。結果、関東各地で武装した富裕層と暴徒の衝突が起こった。

 同じようなことが現代に起こらない確証はない。さらに現代は巨大な資本を抱える私企業が市場獲得に血道を上げている状況だ。⑨や⑪の影響で縮小する市場を目の前にして、企業経営者や大株主が自衛のための戦力を他企業との競争や国家の規制を撤廃させる方向に動かさないとは言い切れない。私企業には国家に比べて自制を促す仕組みが弱いからだ。最悪のシナリオは核を含む大型兵器が国家の管理から流出し、民間の競争に使われてしまうことだ。(旧ソ連崩壊時の状況が規模を大きくして起こると考えれば理解できる)そうなったときには世界は企業と個人と国家が入り乱れて生き残りをかけた世界最終戦争を戦うことになるだろう。そしてこの世界最終戦争には⑧にあるとおり新型コロナ以上のパンデミックも参戦するかもしれない。そうなったときに人類文明が取れる手段というのは決して多くはない。

 最後のほうは仮定に仮定を重ねてしまったが、現実的に起こりうる最悪のルートを示したつもりだ。このルートを回避して人間の存続をはかるには如何なる道があるのか、考えていきたい。 

 読んでいただきありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  玉稿、拝読させていただきました。  プロフィールを拝見する限りですと、筆者様はまだ高校生であるとのこと。  そのような方がここまで世界の問題について考察されているのを見て、ただただ感心…
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