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夜明け
洗練された光の届く、綺麗な春の朝のことだった。
あまりに世界が美しく見えたものだから、穢れた僕は途端に消えてしまいたくなった。
ぼろぼろの下着一枚に、身体中痛めつけられ怪我のある、僕。
声が聞こえた。聞いてはいけない気がして、さっと耳を塞ぐ。だがその手は、視界に映るふわふわの髪の毛と、甘い可憐な香りに、力が抜けてしまった。
「どうしてないてるの?」
人間が怖かった。蹲ることしかできなかった。
「おにいちゃん、まいご?」
宝石の砕けるような煌めく声に魅了されているうちに、僕は思わぬ強い力で彼女に手を引かれた。
その一瞬、僕の世界に光は差した。