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スラヴ神話一周物語  作者: ダリア
第一部  メルヘンの島の守り手
10/39

幕間 異世界で誕生日パーティー

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は長閑話です。


「そういえば明後日、私の生まれた日だね」

「え、そうなの!?」


 リュバーヴァと優奈は町を歩いていた時に、リュバーヴァがポロリと言った。

 夕方は迫っていて、太陽はまだ沈んではいなかったが、もう明々と道を照らしていなかった。午前中に振られた時雨のせいで、空気中に雨と土の匂いが漂っていた。ぶらぶらしている少女たちの隣にパカパカという音を立てながら馬が通った。


「どうしてそんなことをもっと早く言わなかったの?」

「え?どうして言わなきゃいけないの?」


 リュバーヴァは首をかしげて、可笑しな子だと言わんばかりの顔で優奈を凝視した。

 優奈は混乱したが、やがて、脳裏に憶測が閃いた。


 ──きっとこの世界の人は誕生日を祝わないよね!


「そんなのダメだよ!誕生日は年に一度しかない大切な日なんだよ!」


 リュバーヴァは眼を見張った。

 その時、優奈はどうしても、リュバーヴァのためにサプライズ的な誕生日パーティーを企てたくなった。



 翌朝、リュバーヴァは餌やりしに行った時、優奈はべセリーナ、イワンとクリムをペチカの部屋に呼び出し、誕生日パーティーのことを説明した。


「じゃ、具体的に何をするのか?」

「そうですね。まず、リュバーヴァは甘いものが好きなので、ケーキを作ろうと思います。それから少し部屋を飾って、ちょっとしたプレゼントを用意して……」

「ケーキって何なの?」


 べセリーナは馴染みのない言葉を聞き、興味を持った。

 優奈は苺ショートケーキを思い浮かべ、なるべくわかりやすく説明してみた。


「ケーキとはパンみたいに柔らかくて甘い生地に甘いホイップや、フルーツ、ジャムなど乗せた、とても美味しいお菓子ですよ」

「……パイみたいなものじゃないかい?」


 イワンが声をかけた。


「えーと、ちょっと違います。でも兎に角美味しい物です!」


 優奈は(かぶり)を振って、熱の籠った声で説明してから一拍置いて、ケーキ型鍛造するように頼まなくてならない、とボソッと言い添えた。


「じゃ、飾りは?」

「プレゼントとして何を贈るのか?」


 べセリーナとクリムは同時に質問した。

 優奈は少し考え込んだ。


「飾りは……」


 彼女は部屋を見回してから、窓から外をチラッと一瞥した。


「……今は花が沢山咲いているので、花で飾りましょう。そして、プレゼントに関しては好きなものでいいですよ。自分が贈りたいなあと思う品を贈るだけですから」


 家族は最初誕生日を祝う理由やパーティーを開催する意味になかなか納得がいかなかったようだが、異世界のお菓子に興味を持ったし、たまに日常から離れるのも悪くないと思ったみたいで、優奈の企てに参加した。


「イワンさんは型を鍛えられますか?」

「型?」

「鍋みたいに丸くて、底を取れるものです。そして大きさは……まあ、この鍋より一回り小さいのがいいです。鍛えられるのですか?


 少女は鍋を指しながら、説明した。


「ああ、それなら明日までできそう」

「助かります!」


 ***


 あくる朝。


「リュバーヴァ、起きて!」


 べセリーナの声を聞き、優奈も目覚めた。片目だけ開けて、部屋を見渡した。隣の櫃に寝ているリュバーヴァにべセリーナは伸し掛かっていた。彼女はもう普段着に着替えていて、元気そうな顔をしていた。


「ん-、何?」


 リュバーヴァは寝ぼけ声で聞いた。


「お父さんは一緒に町の中心に来て欲しいって」

「何で急に?」

「知らないわよ。起きて、自分で聞けば?」


 べセリーナは娘を揺すりながら、イラつく声で答えた。


「わかった、わかった、起きるから揺らさないで!こんな目覚め方は久々だよ!」

「そうね。リュバーヴァったら子供の時はすぐに目覚めなかったから、私はいつも立ち上がるまで揺すってたっけ?」


 べセリーナは微笑みながら後ろに下がった。するとリュバーヴァは嫌々ながら起き上がり、櫃の中から適当にワンピースを取り出した。


「せっかくだから、綺麗な服にすれば?」

「うーん、そうだね。ちなみに優奈は一緒に行かないの?」

「たまにお父さんと二人で行ってもいいじゃない。優奈ちゃんは中っ腹にならないと思うわ」


 リュバーヴァは頷いて、母に勧められた通りお洒落な服に着替えては、部屋を出た。暫くするとペチカの部屋からイワンの声が聞き、それから二人の足音とドアを軋みは届いた。

 べセリーナは胸を撫で下ろした。


「目を開けていいのよ」


 優奈は笑みを浮かべて、がばっと起き上がった。


「おはようございます」

「おはよう。時間がないから料理に着手しよう」

「はい」


 数分後二人はペチカの部屋に移動した。


「どうすればいいの?」

「苺を集めて、ジャムを作って、ホイップクリーム用のクリームを用意することです」


 べセリーナは顎に指を当てて考え込んだ。


「じゃ、私はクリームを用意するから、優奈ちゃんは苺を採って。しかし、こんなものからお菓子が作れるとはね」


 優奈は言ったようなものはこの世界にもあったが、製菓には使用されていなかったようだ。


 優奈は庭に出て、蔓籠にジャム用の苺を摘んで、別の小さな容器に一番大きく傷んでいないのを入れた。それは飾り用だ。

 家に帰る途中についでに鶏舎に寄って、卵を採った。

 ペチカの部屋に戻った時、テーブルにバター、牛乳、クリームと蜂蜜を用意してあった。

 べセリーナは小麦粉をふるいながら忍びやかに口ずさんでいた。

 優奈は数秒ドア付近に佇み、声をかけた方がいいかどうか戸惑った。結局小声で咳払いして、話かけた。


「それではべセリーナさんはジャムを作っている間に、私は生地を作ります」

「びっくりした!もっとうるさく歩いてよ」


 べセリーナはビクッとして、目を見上げた。


「すみません」

「いいのよ。ほら、小麦粉をふるい終わったから、生地を作り始めて」


 二人は忙しく動き始めた。

 べセリーナは苺をバケツで洗い、ヘタを取っては、半分に切っていた。

 優奈は卵を卵白と卵黄に分けて泡立て、蜂蜜を加えては、混ぜ合わせた。それからふるっておいた小麦粉を加え、サックリ混ぜ込んだ。


「これで溶かしバターを加えて、型に流してから、予熱しておいてオーブン──じゃなくて窯で焼くだけだね」


 優奈は満足したように生地を見て頷いた。後は焼くとき焦がさないことだ。そこでは優奈はしばしば失敗していたから、正直に不安だった。

 優奈はお菓子作りが然程上手なわけではないが、両親の誕生日に良く作っていたため、苺ショートケーキのレシピだけははっきりと覚えていたのだ。


 ──最初の頃は下手くそだったな。


 優奈は初めて作ったケーキを思い出した。胸は少し傷んだ。


 ──今は悲しむ場合じゃない。お菓子作りに気落ちは大事だから。くよくよしながら作ると、ケーキはまずくなるよね。


 母にいつもそう言われていた。母はパティシエだったのだ。


 べセリーナは温度調整してくれた上、取り出すタイミンも教えたから、生地は無事に焼き上がった。

 それを覚ましたら、立たせたホイップクリームに蜂蜜を混ぜて、スポンジに塗った。次にその時までにジャムを塗って、二枚目のスポンジを乗せた。


「それからどうするのかしら?」

「ホイップクリーム──これを上に塗って、かわいい模様を描いてから、この大きい苺で飾ります」

「私もやってみたい。いいかしら?」

「それは一番面白いところですよ!」


 優奈は笑いながらどうぞと言い足した。

 べセリーナは重要な任務が任されたと悟り、険しい顔で恐る恐るホイップを塗った。


「あははは、緊張しなくていいですよ。直せますから」

「ほ、本当?」

「はい」


 女性はぽちゃんとクリームを落とし、優奈に教わった通り綺麗に塗り伸ばした。残ったクリームで端っこを飾り、苺を乗せた。


「完成!どう?綺麗でしょう?」


 べセリーナはドヤ顔で聞いた。優奈は彼女を見つめながら、娘と母は足売りだと気づいて、うふふと含み笑いをしまった。


 ──流石親子だね。


 ケーキが完成したら、べセリーナは晩ご飯の準備に入った。


「この間近所さんからキジをもらったのよ。ずっと冷蔵室に保存してたけれど、せっかくだから作っちゃおうっと」

「じゃあ、私は飾り用の花を摘みに行きます」


 優奈は花を摘みに外へ出た。もうかなり時間が経過していたから、そろそろリュバーヴァも帰るだろうと思いながら、速足で歩き、咲き乱れる鮮やかな野花を採っては、花束にまとめては、綺麗な容器に入れて、ペチカの部屋のテーブルに置いた。苺ショートケーキの隣に。ほどなく花に生地の丸焼きとお粥が加わった。

「完成!」


 べセリーナはあらゆる食べ物でいっぱいだったテーブルをパッと見やって、満足そうに頷いた。

 その時、イワンとリュバーヴァが帰ってきた。

「ただいま」

「ただいま~」


 低い男性の声と澄んだ少女の声が廊下から告げた。


「タイミング、バッチリ」


 べセリーナは優奈を引っ張り、テーブルを隠すように前に立った。

 やがてイワンは部屋のドアを開け、娘を通した。リュバーヴァは部屋に入っては、ビクッとした。


「お母さん?優奈?ここで何してるの?」

「サプラ~イズ!」


 優奈は言って、べセリーナと隠していたテーブルを露わにした。


「な、何これ!?」

「お誕生日おめでとう、リュバーヴァ」


 突然イワンが述べて、娘に木彫りされている木製の箱を渡した。


「ありがとう……でもどうして?」

「年に一度の日だから」


 優奈は微笑んだ。

 リュバーヴァは頬を赤らめて、友達を抱きしめた。


「私からもプレゼントがあるのよ」


 べセリーナは首飾りを渡した。


「綺麗!丁度お父さんくれた手箱に入れられるね」

「そうね」


 その時ドアが軋み、部屋にクリムが入った。


「誕生日おめでとう」


 そう言って、彼はリュバーヴァに深紅色の革靴を上げた。

「それ、私に……?」

「俺は履けないぞ。お前に決まってるだろう」

 リュバーヴァは皆を見渡した。

「何だかよくわからないけど、すごく嬉しい」

 リュバーヴァは涙お零しながら囁いて、目を隠そうとテーブルを凝視した。


「あれ?苺が乗ってるやつは何?」

「これね、優奈ちゃんが作ったの。食べてみて!」


 べセリーナはあくせくとナイフを取ってケーキを八等分に切った。


「でもお菓子は食後じゃないの?」

「今日は例外なのよ。さぁ食べよう食べよう」


 皆は席に着くと、母は五つのお皿にケーキの一切れを乗せた。もちろん、リュバーヴァには一番大きいのを上げた。


「これ、凄く甘くて美味しい!もしかしたら優奈の世界のお菓子?」

「そうだよ」


 優奈は頷きながら一口を食べた。砂糖を蜂蜜で代用したため、生地もホイップも少し黄色がかっているが、香ばしくほんのり甘い。


「あら、本当。美味しいわ。手間がかかるけれど、作る価値があるね」


 べセリーナは感想を述べた。

 クリムの意見は違った。


「美味しいけど、やっぱ、肉は最高」

「えー、肉よりおかしだよ!」


 リュバーヴァも声を上げた。


「ケーキもキジも美味しい」


 イワンは反対した。


「あら、キジだとわかった?」

「ああ、味は独特だからな」


 優奈は黙然と一家の会話を見守りながら、優奈のプランは思った以上に成功した、とにっこりしながら思った。

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よかったら、覗いて見てください。


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(sukimanirussian_daria)

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