今日の月
「あ、あの…、月が…、月が綺麗ですね。」
「そうですね、新月ですけど。今日も月が綺麗だなぁって、私も思ってました。」
「…!今日も、ですか?」
「今日も、です。」
「いつか、フルムーンもあなたと一緒に眺めたいなと思ってますが、いかがでしょうか。」
「その頃の満月も綺麗だと言い切れるのでしたら、喜んで。」
――
「綺麗な満月ね。あの日に思ってた通りかしら?」
「こんなにも綺麗な満月が見られる日がくるとは、さすがに思ってなかったね。愛してる。」
「何十年も一緒にいると、照れ屋も治るのね。」
「君にだけね。」
「言われ慣れてないから、心臓に悪いのよ。」
「早く慣れて、長生きしてね。」
「あなたこそ。出来れば言い慣れ過ぎないでね。」
「…この先も君にしか言えないし、頻繁には言わないから、ご心配なく。」
直接的でない表現だからこそ、誤解を招かないタイミングで伝えねば。