プロローグ(前半)
―――――ここは、ソウラテ大陸の中心マクドニア領。天と魔が最も争いが激しかった最前線の領域、ここでは無数の天と魔のがいて、争い、そして共にやられて消えるの繰り返しの日々だった。ここ数百年に北、天の領域ハミスチニア領と魔の領域バドラミア領の領土関係は共に最悪の状態に陥ったままの日々だった。元々争いはあったのだが、どうやら双方の領主が人間を依代にして神を降臨させたのが原因で更に戦争が続いているが、しかし、今日でこの世の全てが終わりそうである。
「うおあああ!!!」
俺の名はダルロダス、魔の領主の召喚によって人間の俺が無理矢理紙を降臨させられたのだが、今は平然として人間のままの姿を半分残して残り半分は神の姿にする。所謂片翼の魔の神の力がある訳だ。そして、俺が愛用している槍、漆黒炎燐槍は威力がとてつもなく、一度突き刺しただけで10人ほどの天の兵士を倒すと言う。神のみが許された槍。効果は名前の通り漆黒な炎に焼かれながら黒い霧になって滅していくタイプだ。今、俺は目の前にいる天の兵士達をまとめて突き刺していきながらどんどん進んでいっている最中である。
「うらあああ!!!」
くっ、最前線のせいか天の兵士達が多過ぎてこれじゃあ俺の魔力が尽きてしまうな。
「ちっ……!」
とまあ今すぐに尽きる訳ではないのだが、下手に消耗させる訳にはいかないので仕方無しに片翼で飛行する事にしたのだが、飛行して目立ったせいか天の兵士が主に弓や槍、大砲なのが飛んできたが、俺の槍で跳ね返しながら進んでいった。
「……!?」
最前線を通り越して行った先に兵士が全然いなく、そして向こうの光景に驚いた。いや、正直に言うと、相手は何と、少女だったのだ。
「……は?」
俺は言葉が出なく、戸惑うばかりだった。そしてその少女は明らかに兵器らしき武装を出現させた。そしてこの少女にはどことなく見覚えがある。
「おい、お前はあの時の……」
「……あ、ダルロダス……」
まさか街で知り合った少女が兵器だったとは思わなかった。俺も既に兵器の状態で元に戻れない状態なのだが俺も少女も驚いている。そう、この可憐な少女の名前はローレイラだ。俺が街に出掛けている時にたまにローレイラと会う時があり一緒におつかいを手伝ったりしていたものだ。だが、あの少女がこんな結果になるとは思いもしなかった。
「天の神兵器、ローレイラ!俺は貴様を潰す!」
本当であればこんな事は言いたくもなかったのだが、仕方が無い事だ。こうなってしまった以上、後戻りなど出来る筈も無い。
「……!……魔の、神兵器、ダルロダス……、覚悟して下さい……」
俺の言葉の威圧でローレイラは少し怖がっていたが、静かな声で俺に宣言をした。全く戦う気が無い訳では無さそうなのだが……。だが、油断は禁物だ。あんな雰囲気でも相手は兵器だ。本気でやってきたら恐らくは互角になるだろう。そう思いつつ構えを取った。がしかし……。
「……ん?何もしてこないな?どうしたのだろうか」
ローレイラの耳に聞こえない程度で独り言を述べたが、一向に向こうからの攻撃が来ない。となればこっちから攻撃して来ない限り攻撃を仕掛けないようだ。ならもう決まっている。
「うおあああああ!!!」
俺自身もまだ本気ではないのだが、最初の突進の一撃を貫いてみるが。
「…!」
ローレイラは無言で兵器から出るクナイらしきもので俺の槍を全て受け止めた挙句、その槍に弾いたクナイのいくつかが俺の体にちくちく刺さった。
「くっ!」
少し痛かったがどうやらローレイラも本気じゃないようだ。だが、先程から少々様子がおかしいと思った俺は改めて尋ねた。俺も本気じゃないのは分かるのだが、相手も本気じゃない。これじゃあ決着が付かないからだと判断出来たからだ。だから聞くのだ。
「おい、ローレイラ。何の真似のつもりかは知らないが、一体どうする気でいるんだ?本気で戦う気はあるのか?」
「……それは……」
暫く俺とローレイラの間に沈黙が続いた。
「それは……、ダルロダスさんと一緒にここの領土から……、逃げたいからです」
「……え?」
また戸惑ってしまった俺である。ローレイラの口から懇願な感じで俺に話し掛けてきたのだ。ちょっと待て、ここの領土から俺と一緒に逃げるだと?どう言う事だろうか。
「……ローレイラ、それは正気で言っているのか?」
「はい、勿論の事。ここから逃げ出せば双方の領主が私達に追い掛けて来ると思います。……ですがその時は双方の領主も倒しておきたいです」
俺はローレイラの話を聞いてあげた。その後の聞いたが簡単に言えばこうだ。要するにここの領土から脱出して以前のような生活を過ごしたい。だが、俺達は既に兵器と言う神の物が降臨されているが為にそれは不可能。だから世間の悪い者のみを倒しながら俺と一緒に旅をしたいとの事だと言う。
「……そうか。ローレイラの言い分は分かった。だがまだ少し俺にとってはいまいち納得がいかない部分が少々あるのだが、取り敢えずはローレイラの言う事に従うとしよう」
「ダルロダスさん……、その、有難う御座います……」
ローレイラは少々顔を赤くして俺にお礼を述べてくれた。少女の照れた姿、悪くないな。
「ああそうだ。ローレイラ、お前は空飛べるのか?」
ローレイラの足元見るが、数十センチ程浮いているが当然飛行は可能だろうか気になっている。
「はい……、飛行自体は問題ないです」
「そうか。南北の方向は間違いなく危険だな。となれば東西のどっちに行くんだ?」
そう、言うまでもなく危険なのである。北に行けば俺が狙われるし、かと言って南に行けばローレイラが狙われる。となれば考えられる方向は東か西かの二択になる訳だ。俺は正直言ってどっちでも良いのだが、ここはローレイラに任せるとしよう。
「はい。では東に行きましょう」
「そうか。何故東を選んだんだ?」
「えっと……、それは……何となくです……」
まあ、確かに俺とローレイラは当然南北と中央の領土しか知らなく、東西の領域なんて知る術も無いのだからな、無理も無いのだろう。実際俺も正直方角で拘る意味など無いからな。ローレイラが東と言えばそれに従うのみだ。
「……そうか」
そして俺とローレイラは飛行しながら東の方角へと行った。