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白の嘘と黒の事実  作者: 瀬戸内産蜂蜜レモン
チュートリアル
6/8

ココロを読む少女

今回は飛鳥ちゃんメインです。


第5話 ココロを読む少女

この話は立華歩夢と同じ時間枠にいるもう1人の主人公の話。

彼女の名前は鹿目 飛鳥、翡翠高等学校2年生。 家族は父親は彼女が幼い頃に事故死、母親は物心ついた頃には病で亡くなった。 現在は鈴村凛歌に引き取られ、鈴村の営むカフェ『ほのぼの』を手伝いながら住んでいる。

そんな彼女の話。


【カフェほのぼの 二階】

ここは従業員部屋。鈴村さんとボク

と鈴村さん、ボクのパートナーが住んでいる部屋。2階は大きなテレビとゲーム機のあるリビングとボクの部屋、鈴村さんの魔物達の部屋、その他物置部屋がある。

今日はお店の定休日、そのせいなのか普段6時頃にはみんな起きている筈だけど起きているのはボクと鈴ぐらい…それと24時間待機しているAIアンドロイドのリンネだけ。

イザナミは温かいお茶を飲みながらテレビの斜め右にある椅子に座っていた。

はボクを見かけて話しかけた。

「ほぅ…お前だけか。 今、9時過ぎじゃというのにまだ眠っておるのか。全く近頃の若者というものは……」

まだ起きていないのは鈴村さんのベリアルとボクの土蜘蛛。 鈴村さんはさっき部屋覗いた時に居なかったからどこかに出かけたのかな……ミカエルは五月蝿いからアプリの方に閉まっている。

休日のいつも通りならミカエルが10時半頃には出てくる。

「若いって……あなたが国作った神だから凄い歳上なだけで…。」

「何か言ったか?人間よ。」

ボクは目を逸らし、言う。

「いえ、なんでもございません。」

鈴は問う。

「人間よ、今日は学校に行かなくて良いのか? 平日の水曜日じゃ」

「今日は祝日…だから大丈夫」

「そうか、なら安心じゃ。」

「いい天気だからどこか出かけようかな」すると、ボクのスマホからミカエルが出てきた。

「私も行きたいです!!!マスター!!!!!」

ミカエルは興奮していた。

「五月蝿いし行かせないしそもそも憑依型だから尚更ムリ!」

「なら鈴村に擬似薬を頼んで…」

「それでも連れて行かせない!」

「そんなぁ〜」

寝癖のついたベリアルが欠伸しながら来た。

「ザマみやがれデス。おはよう、カナ」

「おはよう、ベルにしては早いような」

「それはミカの野郎がオコシやがったからです。アサからメイワクです!!」

ベルがミカに対して口が悪いのは昔からの因縁らしい…と鈴村さんが言ってた。

「それはすまない…だが、このまま起こさねば昼まで堕落して寝ていただろ。寧ろ、起こしてあげたことを有り難く思うんだな」

「ナゼ、ウエからなのですか?

ハラタチますね、これがシメキリ前でしたら今頃、墓場に送ってマス」

ベルと鈴村さんは同人作家で主に夏と冬とオンリーイベに参加している。

「送れるものなら送ってみろ。

貴様らには不可能だからな」

「もう、話になりません!!!

ルシ×ミカのブチ犯され本R18本でも描いてやるデス!!!」

「そんな卑猥本を描くとはなんと外道な輩だ。 重ねて私で描くなど…なんて愚か者だ!」

ボクと鈴はそんな2人を放置してテレビを見ていた。

すると、リンネが2人の口論に割り込む。

「御二方、口論するのは勝手ですがマスターから伝言をたった今、受け取ったので言わせて頂きます」

「鈴村からか」

「メールですかねぇ〜」

「『ベルは百合専門でしょ!!! そのカプとシチュは私が描くから』だそうです、以上」

「だから描くな!!!」

「たしかにぃ、私は俗に言う萌え絵しか描きませんからネェ」

そんなこんなで時刻は12時丁度。

未だに土蜘蛛は起きてこない。

そろそろ起こさないと……

「そろそろ、起こしてやらんとな」

「うん、起こして来る」

とボクは言い残して地下室は行く。

土蜘蛛の部屋は一階の階段付近の隠し通路から下へ降ったところにある。

声も届かないから騒音で起きないのかもしれない。

起こしに部屋に入ると布団に包まってる土蜘蛛が居た。

イビキをかいているけどこれはウソだ。 なぜなら土蜘蛛から"狸寝入りでもして誤魔化そう"という声が聞こえたからだ。

そう、ボクは昔から人のココロ、思ってることが聞こえる……普通の人から見れば能力者とか超能力とか思われるけど割と普通だしこの能力のせいで色々とトラウマを抱えて生きて行くはめになるとは当然普通の人にも他人にも知らないしわからないだろう。

「ツッチー、起きてるのはわかってるからそろそろ起きてこないとおやつ抜きだからね」

と言うと土蜘蛛は慌てて起き上がってきた。

「おっは〜、休日ぐらいイイじゃん」

「ツッチーが早く起きてこないから鈴怒ってたよ」

「あの天下り老人は6時起きだからしょうがないじゃん」

「いつも言ってるけど年齢的には労わらないといけない偉い人なんだから」

「わかってるって♪ アスカ、今日は用事ないだろ? 」

「ないけど………何?」

嫌な予感がする……いや、予感じゃなくて土蜘蛛の立てている計画も思っていることと一緒に筒抜けなわけで下手すると土蜘蛛に散々な目に遭わされるのは目に見えている。

「んじゃ、30分後ぐらいに行くよ」

「…………ヤダ」

毎度ながら拒否権はボクにはなかった。


30分後、身支度を整えたボクと土蜘蛛はミカエルにバレぬようにコッソリと出かけた。 もし、バレたら後々厄介なことになると土蜘蛛は言う。

行き先は土蜘蛛のおまかせ…というよりボクは毎度どこへ行かされるかは告知されない。 されなくとも読めばわかる。今日は何も思っていないのか読もうとしてもわからなかった。

道中、土蜘蛛がボソッと言う。

「なぁ、俺っちと出会い覚えてる?」

「出会い…? あー、ちょうど一年目ぐらいになるね」

土蜘蛛と出会ったのは遡る、一年前の話。


まだ鈴村さんの家に寝泊まりをし始めたばかりの頃。

ボクは上級者向けクエストを受けていた。クエスト内容は野生の魔物を退治する。至って簡単の内容にも見える。

魔物には数種類あってガチャからやガチャのみから出て来る種もあればマスター(主人)がいない野生の魔物や例外のカード類も居る。

何人かのプレイヤー達が挑んでいるけど……歯が立たない。

その魔物の姿は人型ではなく、禍々しい陽気に包まれた巨大な蜘蛛で糸や妖術を巧みに使っている。

挑んで倒せず、そのまま帰るプレイヤーやまだ挑んでいるプレイヤーもいる。ボクも諦めずにミカエルと戦っている最中にまんまとその蜘蛛に裏道へ誘導された。背後には壁、前には蜘蛛の魔物。 ミカエルは問う。

「あの蜘蛛は案外ズル賢いのですね。

まさか、騙されるとは思いませんでしたよ。 マスター、どうしますか?」

ボクは戸惑っていた。

リタイアすれば報酬は得られないがミカエルを守れる。もし、このまま継続してミカエルが消滅してしまったら元も子もない。なら…一番安全な手段を選ぶしか他はない…………と思った瞬間壁の上からやや長い黒髪に赤いメッシュの入った青年が飛び降りて蜘蛛の魔物の動きを封じた。

急かすように青年が言う。

「嬢ちゃん、そこの金髪、今だ! 今のうちに攻撃しろ!!!」

ボクはコクリコクリと頷くとミカエルはこう言いながら蜘蛛の魔物にクリティカルヒットを打ち込む。

「何者か知らないが好機を有り難く頂戴いただく」

見事、蜘蛛の魔物を倒した。

これはミッションクリアだ。

「ああああああありがとうございます」

「何者か知らないが礼を言う、助かった」

「いいって事よ。寧ろ、俺っちの怨念に付き合わせてごめんね」

「怨念?」

青年の身体が徐々に薄まっていく。

「そう、怨念♪ 未だに心のどこかでこの世の事を怨んでるだろうなぁ」

「どう…いうこと?」

「さっきの魔物は俺っちの生前の記憶と怨みが固まってできたものでそれが発生した時だけ俺っちは現れる」

ミカエルは理解したのかこう問う。

「つまりは貴様の払えなかった怨念が定期的に現れ、その期間だけ貴様が貴様として生きていける魔物…ということか?」

「ピン・ポン!! 大っ正解♪

また機会があったら無限ループに付き合ってよ」

と青年は笑いながら言った。

身体が薄くなっていく…ボクはこの瞬間彼…青年の心が聞こえた"呪いを終わらして欲しい"と腕を握って言う。

「の、呪いから……助ける方法はないん、ですか?」

「っ! あったらもう試してる♪

リスキーだけどたった一つだけあるよ? 嬢ちゃんには危険だからススメやしないけど」

「わかってる、でもっ! 終わらないものもいつかは必ずしも終わりがくる!!! ボクが終わりへ導いて終わらす!!!!!」

青年はしばらく間をとってから言う。

「そう、俺っちの望みを一緒に果たしてくれるの? 覚悟はあるの??」

ミカエルは一言添える。

「あんな輩を信じてその為に尽くすのは馬鹿げてると思いますが」

ボクは一呼吸、間を置いてから言う。

「信じるよ…キミの純粋な思いに、呪いを終わらして欲しい願に」

「……わかった、じゃあ契約をしよっか。 しちゃったら最後後戻りできなくなるけどそれでも…」

「大丈夫!」

「わかった! んじゃ…」

そこからボクは土蜘蛛と契約を交わした。






現在、【とある公園】

ここはこの間クエストできた公園。

話しながら歩いていると噴水とステージが見えてきた。

"この時間なら居るかもな"と土蜘蛛の声が飛鳥に聞こえた。

「…誰が居るの?」

「また聞かれちゃったか……。旧友がたまにこの公園で路上ライブしてるから…」

土蜘蛛の言おうとしていた事を重ねて言う。

「「居ると思って」」

土蜘蛛は驚いた表情で言う。

「そこまでも読んでたのか⁉︎ これは一本取られたな」

二人のやりとりを近くのベンチから観ていた青年は言う。

「ええ光景ですなぁ〜、お天道さんが晴れた日には男女出かけるにはええ日ですな」

「その声は!」

土蜘蛛は青年に見覚えがあった。

生前と変わらない黒髪の短髪。黄金色の瞳に紫の煩くない程度の柄の入った着物。飛鳥は不思議そうに言う。

「…………誰?知り合い?」

警戒しながら土蜘蛛の背後に隠れた。

「どうやら、警戒されてしもうた」

と青年はめんどくさそうに言った。

「警戒しなくとも、アイツはオレの探してた旧友だ。久しいな」

「久しゅうございます。 隣におる女子おなごは彼女はんですの?」

一瞬、シーンと静まり返ってから少し経ってから土蜘蛛は慌てて言う。

「バカっ!んな訳ないだろ!! 確かに彼女は欲しいが…アスカはそれ以上というか何というか」

青年は察したかのようにい言う。

「あー、彼女やなくて婚約者やな」

「「違う!!!」」

二人同時に慌てて否定した。

「冗談や、八割型察しがついてます。

ワシは酒呑童子、よろしゅう頼みますわ。」

と酒呑童子はクスッと笑いながら言った。

「再開早々にからかうな。アスカが益々警戒しちまったじゃねぇか」

すると、コンビニ袋を片手に持った茶髪の青年がこちらへ向かってきた。

「買ってきたぞ! 彼は…?それとその後ろに隠れている子は誰だ?」

と質問した。

「歩夢はん、お帰りなさい。 ワシの頼んだアイスは買うてきはりました?」酒呑は答える。

「チョコのだろ?買ってきたぜ!

俺は立華 歩夢だ。紹介が遅くなってすまない。良ければ食うか?」

と歩夢は棒突きアイスのソーダ味六本入りの箱を開けて土蜘蛛に向ける。

「立華か…よろしくな! 俺っちは土門 八雲だ。

好きな呼び方で呼んでいいぜ!

ちなみにそこにいる京都弁胡散臭い野郎と旧友だ」

と土蜘蛛は酒呑の背中をバシバシ叩きながら言った。

「あっ、アイス☆ 有り難く頂戴するぜ」土蜘蛛は差し出されたアイスを二本取り、その内の一本は開けて食べた。

「蜘蛛のお兄はん、慣れ親しむのはええんけど、元気ありまってませんか?」

歩夢は酒呑に頼まれたアイスを渡した。

「それ、皮肉だろ。それぐらい俺っちでもわかるぞ。」

「ほんまに?」

酒呑はアイスの袋を開け、チョコレートでコーティングされたアイスを一口食べてから尋ねた。

「それが嫌でここまで来たんだ。」

やっぱり、飛鳥は土蜘蛛の後ろに隠れたまま。

「あっ、蜘蛛のお兄はん。

隣りの女子おなごはんの紹介聞いてまへんが。」

飛鳥はさらに警戒し、土蜘蛛の背後に隠れたままだ。

「急に酒呑に変な事言われたら警戒するのは当たり前だ。

不愉快にさせてしまったようですまない。名前はまたの機会に教えて欲しい。」

飛鳥はコクっと頷いた。

歩夢はニッコリと笑いながら

「そうか!楽しみにしてるぞ!」

飛鳥たちはその場を離れた。

振り返ると歩夢が手を振っていた。



道中、飛鳥は貰ったアイスを食べていた。

「なぁ?どうだった?」

「…ツッチーの旧友?それともそのマスターのこと?」

土蜘蛛は通りがかったトイレ付近の燃えるゴミ箱にアイスの棒を捨てた。

「うーん、両方!」

「はぁ〜、そうだね…。」

飛鳥はため息をつきながら答える。

「……ツッチーの旧友は建前上は白中身は真っ黒。」

「で?奴の主人の方は?」

「同様に裏があるかと思ったけど…。」

土蜘蛛は興味津々に聞く。

「けど?」

「全く無かった! それにツッチーの正体気付いてなかったし!」

飛鳥と土蜘蛛は驚いた。

「意外だなぁ!おい⁈」

「うん、逆にびっくりした。」



【とあるショッピングモール】

佐々木はユイと一緒に買い物していた。今、ウィンドウショッピングの途中だ。

「エルさんが一緒に来るの珍しくあらへん? 何か隠してるやろ?」

そう、彼は何かを誤魔化しているときのみ買い物や趣味に付き合ってくれるからだ。

「さぁな? どうかな。」

「早よ話や! 今なら怒らへんから」

佐々木は深呼吸をしてから静かに小さく、言う。

「仕方ない。 実はな、昨日…。」


[遡る、昨日の出来事]

【赤峰高校、生徒会室】

佐々木は生徒会長の平野湊代ひらのみなよに呼び出された。

それは単に彼が書記だからと言う訳ではなさそうだ。

「御機嫌よう、佐々木さん。」

補佐の理恵は空いたカップに紅茶を注いでいた。

「で…何の用事ですか? オレに用事なんて…。」

理恵はカップに紅茶を注いだ後静かにポットを置きながら言う。

「そろそろ、化けるの良したら?

痛々しいわ。 ウリエル。」

佐々木はため息を吐く。

「はぁ〜、ガブリエルさんも潜伏してたんッスか。言っちゃ悪いがアンタの方がよっぽど猿芝居っすよ。」

ガブリエルはプルプル震えていた。

それは単に怒っているのだろう。

「言わしていれば、あなたね!」

「そこまでよ、ガブリエル。

私はあくまで交渉の為に呼んだのよ。」

佐々木は首を傾げる。

「交渉…だと? 」

「そうよ、一種の賭けに応じるか応じないか聞く為の。」

佐々木は何かを察した。

「そうか…生徒会長。お前はコレクターか。なら、答えは一つだけ。」

佐々木は間を置いてから言う。

「オレはその賭けには乗らない。」

「なんだとっ! ウリエル、貴方!」

「ガブリエルさん…。オレもしゅと主人に忠実でありたいんだ。 」

湊代は紅茶を一口飲んでから答える。

「なら、答えは『NO』と受け取っても?」

「あぁ、すまないがオレはその賭けに応じない。その代わり…ミカさんやラフには声を掛けとくが…。期待しない方がいいだろう。」

佐々木は生徒会室をあとにした。

佐々木が出て行ったのと同時に小野陽人おのはるとが中へ入った。

「何を話されていたのですか?」

「あら、他人の話の内容を知りたがるなんて下世話ね。」

湊代はからかうように言う。

「い、いえ。そんなことは滅相も…。」

陽人は慌てて謝罪する。

湊代はクスッと笑いながら

「いいえ、冗談よ。

私だって人のこと言えませんもの。

ところで…貴方のお兄様について話して貰えるかしら?」

湊代はイタズラぽく微笑んでいた。



[そして、現在]

「なぁなぁ、『これくたぁ』ってなに?」

ユイは純粋に気になっていた。

佐々木はまたため息をつきながら答える。

「はぁ、主人が参加していたのはARのスマホゲームの方ではなく、クロス カードの方に参加していた。

クロス カードのルールは対象のカードを種類毎に集める、もしくは全種集める『コレクター』とカードを全種類狩る『ブレイカー』の二種居て…」

佐々木は長々と説明するがユイはちんぷんかんぷんだったのか首を傾げていた。

「はへぇ…。」

「うーん、つまりはだな。

オレはクロス カード対象で主人も参加していたわけだ。」

「そんで? 会長さんが何の取引をしようとしたん?」

佐々木は今よりもわかりやすく説明する。

「その会長もどうやら参加者らしい。」

「なんで、エルさんが必要なん?」

「コレクターは対象の魔物が揃った時点でぬしと会える…らしい。」

「主ってエルさんのど偉いさん?」

「それとはまた別だ。

一回しか会った事がないからオレたちを呼んだ張本人だ。」

「なら尚更…。」

「そうだな…。」

佐々木は暫く考え込んだ。

「後日、メモ渡すでいいか?」

「めんどーになったんか」



【同時刻、 とある喫茶店】

飛鳥の勧めで来た知る人が知る穴場な古本と珈琲が楽しめる喫茶店、隣には本屋もある。

亭主は本屋と喫茶を営んでおり、若い女性で軽く二つにリボンで結んだ薄茶色の髪、深緑の瞳。

「いらっしゃいませっ! あっ鹿目ちゃん、

こんにちは。 あの件、舞園さんが…」

土蜘蛛は首を傾げて言う。

「あの件? 誰?」

女亭主は察したのか説明をする。

「初めまして、栞です。 喫茶カタハレドキの店長で隣のお店も店長…と言いたいところだけど。今は伯父の代わりに店長代理してます。」

土蜘蛛は少々疑問に思った。

「初めまして、土門 八雲です。

いくつか尋ねたいだが、よろしいですか?」

栞はにこやかに答える。

「えぇ、良いですよ。土門さん。

立ち話もなんですから、こちらの席でゆっくり話しますよ。」

飛鳥と土蜘蛛は栞に案内され、二人用席に座った。

「飛鳥とどのような関係で?」

「…それはボクが話すよ。

栞さんは恩師なんだ。」

栞は水を飛鳥達の席に置いた。

「恩師?」

「うん、栞さんが賞の応募とか先生にアポとか応援してくれて…」

土蜘蛛は更に疑問が湧いた。

「賞…?なんのだ?」

「あら、教えてなかったですか?

ちょっと待ってね」

そう言い残して、栞は隣の書店から今日発売のとある新刊とその本の一巻を持ってきた。

「このマンガ……確か、飛鳥が読みながらブツブツ言ってた流行ってるマンガじゃん」

飛鳥は顔を真っ赤に染めた。

「西川さんの人気作…をマンガにした本。交渉の殆どは舞園さんの努力です。」

栞は喫茶店の本棚から一冊の本を取り出そうとしている。

「ですが、栞さんも交渉に立ち会ってくれたじゃないですか」

本を取り終わった栞は土蜘蛛に一冊の本を渡した。

「ううん、私はただここで鹿目さんの良さを西川さんに語っただけですよ。」

土蜘蛛は徐に本をペラペラと読む。

「はい! この話はこの辺でお仕舞いにしましょう。 」

栞はパンと叩いて場の空気を入れ替えた。

「飛鳥…まさか、これ?」

「うん、その本はボクのデビュー作。」

その本は先ほどのマンガとは違うライトノベルと分類される本だ。

挿絵も小説も飛鳥一人でと言うと少し語弊あるが書いたのだ。

「編集者さんや偉い人たちに文より絵の方に目が行ったらしいです。元ある文章に絵を描く方を勧められ…。でも!私は文章も優れてると思います! 不思議な世界観や主人公の…」

飛鳥はまた顔を真っ赤に染めて慌てて言う。

「そそそそそんな事ないです!!!!!!!!!!文章もイラストも粗末なものしか出来なくて……」

読み終わった土蜘蛛は静かに本を置いた。

「絵も内容も良く出来た。けど…難しくて頭に中々入らん。」

ギクっと言われたくない事を言われてしまった。

栞は静かに

益々、飛鳥は落ち込んでいった。

「………前の担当さんにも言われた。」

土蜘蛛は流石に察して

「すまん、つい…。」

「いや、いいんだよ。わかってたから」



同時刻

【とあるショッピングモール】

ここには一階にカフェが固まっているスペースがあり、全て仕切りで区切られているが外からカフェの風景を素通りで軽く眺められる簡単な作りになっている。

歩夢は茨木と一緒にパンケーキで有名な

お店でお茶をしていた。

席は窓際、窓から人通りを眺めることができる。

「美味しいか?」

茨木はふわふわの生地とクリームたっぷり乗ったパンケーキを一口、パクリと

「ふぁい、ほひぃです!」

茨木は口いっぱいに頬張って嬉しそうに食べていた。

「そうか! 前から食べたがっていたからな。」

茨木は目線を少し下に逸らし、歩夢の注文したものに目を向ける。

「おや、主人さまは珈琲のみなんですか?

何かお召し上がりにならないのですか?」

「あー、茨木が美味しそうに食べるから俺もお腹空いてきたな!」

「はい! 主人さまも何かお召し上がりに…。」

茨木はふと、目線を人通りに向けると

一瞬、佐々木とユイが通り過ぎた。

「何かあったか?」

歩夢は不思議そうに尋ねる。

「いいえ、何もないですよ」


歩夢たちのいるカフェを通り過ぎたユイが一瞬、歩夢を見かけた。

「なーなー、あれ!華ちゃん先輩やん!!

近くに居ったんのはまさか、彼女っ⁉︎」

佐々木はため息をつきながら言う。

「居てもおかしくないだろ。 実際、立華は本人が気づいてないだけでモテている。」

ユイはコクコクとうなづきながら

「せやな。そりゃー、文武両道で面倒見と気配りがええもん。モテへんわけあらへん」

「だろ。 だが、モテたいと嘆いていたな」

ユイは驚いた顔で言う

「それ以上モテてどないすんねん」

「オレも常々、そう思うが」

「だったらあの彼女は正真正銘のっ⁈」

佐々木は顔を横に振った。

「恐らく、違うだろうな。」


【とある都内のマンション】

そこそこた高そうな家具と高そうな年代物のワイン、酒類が貯蔵棚に入っている。

ルシファーはソファーに座り、家主が来るのを待っていた。

少し経ってから家主は珈琲を持って漸く来た。 珈琲を静かにガラスのテーブルに置き、ルシファーの隣に座る。

「珍しいじゃないか、ルシさん。

私に用なんて……まぁ、想像はつくけどね」

家主は自分用に入れたココアを啜った。

「なら、話が早い。即急に奴関連の資料が欲しい。」

家主はニタァと

「…いいよ! ミカさんの?それとも歩夢君の…はたまたトウマくんの?」

「違う、わかってて焦らしているのか?」

家主は笑いながら

「だよね、冗談だよ。ちょっと待って」

そう言い残して奥の方にある書斎からとある茶封筒に入った資料を持ってきた。

「はい、これ!」

ルシファーは差し出した封筒を取ろうとしたが、家主はひょいと持ち上げ

「もちろん♡ タダでは情報はあげないヨ。

等価交換さ。」

ルシファーは呆れた表情で

「だろうとは思っていた。

…で、何日だ?」

「う〜ん、ざっと一週間かな。」

少し経ってから

「いいだろう。 止む終えん。」

家主は嬉しそうに

「やったぁ♡ でも、歩夢君にはどう説明するつもりで?」

ルシファーは鼻で笑うかのように

「フッ、あの脳筋は単純だ。

交換システムを利用すればいい。」

家主は同意しながら

「あー、教えるには良い機会だし。

交渉成立という解釈でOK?」

「好きに捉えろ。」


【夕方ごろ、喫茶 カタハレドキ】

飛鳥と土蜘蛛が去ってから暫く経った後。

店の奥からガタイが良い大男がひょっこりと覗きにきた。

「しおり! さっきのひとたち、かえった?」

栞は喫茶店の片付けをしながら言う。

「むっくん、出てきても大丈夫ですよ。」

栞は手でおいでとサインを出すとむっくんと呼ばれている人物はウキウキで出てきた。むっくんは純粋無垢から取った名前で元は名も無き怪物、フランケンシュタインだ。

「かたづけ? てつだうよ!」

すると、地味な色の着慣れた着物にボサボサの頭、おまけにハスキーボイスな人がドアを開けた。

「栞ちゃん、片付けしとったん?」

「とおる!」

どうやら、無垢と面識があるらしい。

「川瀬さん、こんばんは。ギリギリ大丈夫ですよ。」

栞は思い出したかのように

「ちょっと前まで鹿目ちゃん来てたんですよ。あの件お伝えさせて頂きました。」

「あー、あの新人ちゃんね。ワシの作品を貸すには適した人物か見極める必要があるからのう。」

栞はフフっと笑いながら。

「お手柔らかにお願いしますよ。」



夕方、田村の自宅。

翔はソファーにだらけるような形で隅っこに座っていた。

肘掛に顎を乗せながらベルゼブブに質問をする。

「ねぇ、いつになったら掃除終わるの?」

ベルゼブブは振り向きもせず、ひたすら便器掃除をしながら、

「後数分で終わる! 嫌なら自分でやれ!」

と愛想なく一言で済ました。

少し経ってからトイレの水を流す音が聞こえた。

「終わった?」

翔は何気なく尋ねた。


一方、ベルゼブブは掃除をしていた。

やっと便器の隅々まで掃除が終わり、トイレ周りの微細なゴミ掃除も終わったが…。

「何故、汚水がここに?」

隅っこに濁った2リットルのペットボトルが2本置いてあった。

ベルゼブブは理解はできた。

その水は数年前に大きな地震があり、万が一水が止まった時用に置かれた水だとわかってはいたが、…。

「数年前とはいえこれはなんでも不衛生すぎますね。」

ベルゼブブは溜息を吐きながら片手の白手袋を外し、ペットボトルの上に手をかざした。

「久しぶりに使いますか。

……使えると良いのですが。」

ベルゼブブは力を込めた。

すると、汚水は一瞬だけ光り瞬きをする間に綺麗な水へ変化していた。

「槍さえあれば……完全体に。」


付箋だらけにした結果文字数と書く日数が大幅に遅れました。

お詫びとして次回は番外編の短編を

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